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朝ドラ『ひよっこ』視聴率が20%を超えられない原因は

『ひよっこ』視聴率は8作続いた初回20%超えできず、その後も一進一退。最初が悪かったのは前作『べっぴんさん』の責任もありますが、開始後の伸び悩みは『ひよっこ』自身の問題。その原因と今後の展望は?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

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一進一退の『ひよっこ』視聴率

『あまちゃん』以来連続テレビ小説では8作続いてきた”初回20%超え”でしたが、『ひよっこ』は19.8%。その後も4月は低下傾向でゴールデンウィーク中が最低。5月になってV字回復していますが、単回では20%越えている回もあるものの週間平均では足踏み状態でもう一歩です。

『ひよっこ』週別平均視聴率

                         『ひよっこ』週別平均視聴率



前作『べっぴんさん』の責任も

初回20%超えができなかったのは前作『べっぴんさん』に責任があります。最終回視聴率が19.8%と放送時間が8時に変わって初めて20%以下に。それに釣られて『ひよっこ』初回も19.8%になりました。前作の最終回と次作の初回の視聴率は連動する傾向にあり、その前の『とと姉ちゃん』の最終回が21.8%、『べっぴんさん』初回が21.6%とほぼおなじです。

ただ、はじまってから下がったのは『ひよっこ』自身の問題。原因としていわれているのは「有村架純では新鮮味に欠ける」「魅力度ランキング最下位の茨城が舞台」「イケメン不足」など。
写真:つのだよしお/アフロ

写真:つのだよしお/アフロ

人気女優の主演は『おひさま』の井上真央『梅ちゃん先生』の堀北真希『花子とアン』の吉高由里子という前例があり、有村架純だからダメということもなさそうです。

舞台は茨城から東京に変わり、イケメンは竜星涼、井之脇海と増えてきて、視聴率回復傾向なのでそういう要素もあるかもしれませんが、視聴率回復の要素としては弱そう。


賛否分かれる評価。『ひよっこ』は“いい人”ばかり

『ひよっこ』の多くの人の評価を見ると賛否が大きく分かれています。いいという代表的な意見は「登場人物の心情が丁寧に描かれている」。悪いという意見は「いい人ばかりでドラマの起伏に欠ける」。この評価の分かれが視聴率の伸び悩みを産んでいます。

たしかにストーリーはあまり動いていません。5月第4週目までのストーリーは「東京に仕事にいった父が失踪したため、谷田部みね子は茨城から集団就職で上京。トランジスタラジオ工場で働き家族を支えながら父を探す」と短くまとめることができます。朝ドラヒロインの定番、目標とする職業もありません。

これは岡田恵和脚本の作風によるもの。朝ドラを担当した最初の作品『ちゅらさん』もほとんどいい人ばかり。ストーリー的には前半は国仲涼子演じるヒロインの「運命の恋」で押し切りましたが、中盤で結婚。後半は舞台となる古波蔵家と一風館でのトーク、沖縄でいう「ゆんたく」中心。

朝ドラ担当二作目の『おひさま』は時代が太平洋戦争をはさむため、そこを中心にストーリーの起伏や人間関係の軋轢がありました。それでもヒロインと女学校の親友3人(井上真央、満島ひかり、マイコ)の女子トークに岡田脚本らしさが。

 

朝ドラのアクセントになる「悪」要素

朝ドラの世界はいい人ばかりの作品が多く、その中でも岡田脚本が代表的。朝ドラで悪い人を描く場合は、時代の問題を背負わせることが多いですね。『おひさま』の太平洋戦争だったり、『とと姉ちゃん』の高度経済成長のひずみのようなアカバネ電器の社長(古田新太)だったり。

『べっぴんさん』は悪い要素を入れるのに失敗した例。渡辺千穂脚本は『泣かないと決めた日』や『ファースト・クラス』など女の争いを描くのを得意としています。しかし『べっぴんさん』では劇中に登場する企業キアリスの主要メンバー三人は、女学校の親友のなかよしで「いーね」を連発。一人だけ違う明美(谷村美月)も初期は屈託がありましたが、だんだんみんなと同じに。その分、悪い部分を背負わせたのが闇市に主店するブランド『エイス』の社長、さらにエイスも裏切る社長の部下・玉井(土平ドンペイ)だったんでしょうが、存在する意味がよくわからないまま終わってしまいました。

朝ドラで史上もっとも悪い要素が多かったのは『純と愛』でしょう。登場人物のほとんどは人が悪いか変わっているかダメ人間か。例えばオオサキプラザホテルに純(夏菜)と同期入社した田辺千香(黒木華)。普通の朝ドラだとヒロインの親友ポジションのはず。しかし、普段はおとなしく気が弱い性格なのに、なにかあると豹変しキレまくる、感情移入のしにくいキャラでした。

悪い要素は劇薬みたいなもので、うまく使うといい人ばかりの中でいいアクセントになります。近年の成功例は『ごちそうさん』、和枝(キムラ緑子)のイケズでしょう。


 

みね子が進む道が見つかるか?に期待

はなしを『ひよっこ』に戻して、東京を舞台に移してからは、乙女寮の女子トークでおもしろくなりました。会話のおもしろさだけじゃなく、青天目澄子(松本穂香)の父親の再婚で故郷に居場所がなくなったり、兼平豊子(藤野涼子)は成績優秀だけど就職しなければいけなかったり、それぞれのキャラクターが持っている背景の上で展開されているため、トークの中で時代が浮き彫りになってくるところが『ひよっこ』のいいところだと思います。

さらに5月末から6月にかけては向島電機の経営危機で、また流れが変わりそう。4月末から5月にかけて、父の失踪からのみね子上京があったことを考えると一ヶ月ごとに大きな事件がおきる構成のようです。これにより「起伏に欠ける」という問題点はなくなりそう。

事件の原因は、経営危機については五輪景気の反動による不況。父の失踪の直接の原因はまだわかりませんが、間接的には農業では稼げず東京に働きにでなくてはいけない、という社会問題によるもの。悪い人はあまり出さずに時代の問題を背負わせるパターンですね。

今は状況に流されているように見えるみね子が自分の道を見つければさらにいいのですが、どうなるでしょうか。今後も見守っていきましょう。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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