40歳未満の平均貯蓄額は602万円
総務省が発表した2017年調査の「家計調査報告」では、二人以上世帯の平均貯蓄額は1812万円で、前年から0.4%の減少。4年連続で増加していましたが、5年ぶりに減少となりました。貯蓄保有世帯の中央値は1074万円ではあるものの、年代によっては、あまりにも生活実感とかけ離れた数字で、貯蓄意欲が沸くどころか、「もっている人はもっているんだね」という感想で終わってしまうでしょう。しかし、実態としては深刻で、60歳以上でも、純粋な貯蓄額(貯蓄-負債)は743万円であると知れば、今から、少しでも多く貯蓄をしなければならない、となるのではありませんか?
発表されたデータから、順番に見ていきましょう。
まずは、年代別の平均貯蓄額です。
過去10年の年代別の平均貯蓄額の推移ですが、傾向としては変わらず、年齢が高いほど貯蓄額は多くなります。50代の平均と全体の平均がほぼ同じように推移し、60代以上と40代以下で二分されているのがわかります。平均貯蓄額1812万円と聞くと驚いてしまいますが、40歳未満では500万~600万円というのが実情です。
60代以上の世帯は、長い時間をかけてお金を貯めてきた成果とも言えますし、退職金などの一時金によって貯蓄額が増えたということもあるでしょう。40歳未満(30代)の世帯は、収入が思うように伸びないばかりか、出産・育児などで世帯年収が減り、貯蓄に回せるお金がないというケースもあるでしょう。40代になって平均が1000万円を超えるので、若年層は、これを目標に貯蓄計画を立てるといった考え方をしてもいいのではないでしょうか。
住宅ローンなどの負債は40歳未満で増加
平均貯蓄額とともに発表されるのが「負債」。2017年の負債平均額は517万円で、そのほとんどが住宅購入のためのもので、約9割を占めます。負債額も年代別に見てみると、貯蓄額とは反対に、若年層が多く、40歳未満で1123万円と過去最大になっています。負債保有世帯は全体で37.5%。40代が64.8%と最も高い割合を示しています。負債保有世帯のみの負債平均額は、1379万円で40歳未満では1893万円、40歳代で1629万円、50歳代で、1159万円、60歳以上で885万円という結果です。
年代が上がるほど住宅ローンの返済が進み負債が減るのは、当たり前のことですが、やはり40歳未満の負債額が前年に比べて25万円増加となっています。この前の年は前年比156万円の増加、16.6%の増加だったことを考えると、若年層の住宅購入が若干鈍化傾向にあったのかもしれません。
本当の貯蓄額はいくら?60歳以上でも安泰ではない
家庭の資産というと金融資産、つまり貯蓄や投資の金額に目が奪われがちですが、住宅ローンなどの負債があれば、それもマイナスの資産として考えておくべきです。不動産を所有していれば、活用して資産に組み込むことができますが、負債が残っている間は、不動産の評価を資産としてとらえることはできないでしょう。つまり、家庭の本当の資産は「貯蓄-負債」が純粋な貯蓄額ということが言えます。これまでのデータをもとに、年代別の純粋な貯蓄はどうなっているのかをみてみましょう。
全体での平均貯蓄額は1812万円ですが、そこから負債を差し引くと、純粋な貯蓄額は1295万円です。これを年代別にみると、40歳未満では貯蓄額は602万円なのに対して、負債は1123万円。差し引き521万円のマイナスで債務超過の状態です。40代でわずかにプラス。住宅ローンがいかに重いものかと言わざるをえません。
しかし、これもまだ実態に即していません。負債がない世帯も含めた平均だからです。負債がある世帯だけの平均でまとめたが次の表です。
全体平均でも様相が変わり、貯蓄額は1142万円に対し、負債は1379万円(負債の中央値は1080万円)。平均でもマイナス237万円の債務超過なのです。40歳未満では、マイナス1360万円と大きな借金を抱えて貯蓄を増やせない状況にあると言えるでしょう。
そして、60歳以降が実は深刻で、貯蓄額は一見多いように見えますが、負債がある世帯の貯蓄額は1628万円と減り、負債も885万円残っているため、純粋な貯蓄額は743万円という結果に。会社員であれば、退職金で住宅ローンを完済し、残りは老後資金にと考える世帯が少なくありませんが、平均データでは、それも難しいと言わざるをえません。定年退職後も働いて収入を得ること、負債をできるだけ早く返すこと、そもそも身の丈以上の負債を抱えないことなど、このデータから考えておくべきことが見えてくるのではないでしょうか。
総務省の「家計調査報告」に限らず、「平均貯蓄額はいくら?」といったニュースをよく目にしますが、全体の数値は大きくなりがちです。しかしデータを深堀していくと、実態としては、それほど喜ばしいことでもなく、驚くべきことでもなく、どの年代にとっても、深刻な問題が見えてきます。
人と比べる必要はまったくありませんが、こうしたデータを紐解きながら、わが家の資産はどうなっているのか、一度洗い出しをしてもいいのではないでしょうか。
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