お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

41歳一人暮らし、貯金185万。老後資金に不安が(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後資金の準備に不安を抱える40代の女性会社員の方です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 現在の貯蓄ペースで老後の生活費はカバーできる

30代後半から貯蓄を始めて、よくここまで貯められたと思います。瑠璃子さんご本人が言われるように、平均的には決して高くない収入でありながら、毎月きっちり貯めている。本当に立派です。

では、このペースで老後資金は準備できるかどうか。不確定要素もありますが、まずは試算をしてみましょう。

現在の貯蓄ペースは、昨年はまとまった額の医療費が発生しましたが、例年ならばボーナスから10万円は貯蓄できるのでは。だとすれば年間46万円。定年が65歳ですから、定年時には1176万円(60歳から支払い保険料がなくなる分を貯蓄として加算)貯まっていますので、今ある貯蓄と合わせるとおよそ1360万円。

ただし、瑠璃子さんの場合、今後車の買い替えが発生します。回数にしてあと2、3回でしょうか。大目に見積もってトータルで500万円とすると、手持ちに残るのは860万円となります。ただ、個人年金保険の年金額がトータルで500万円。これも加えれば1360万円となり、これが老後資金となります。

次に65歳以降の生活費を考えます。普段の生活の水準を現在と同レベルとすると、今ある支出のうちなくなるのは保険料の1万2000円。増えるのは、ボーナスから捻出していた旅行費用等で、それを月割りにすれば1万円ほど。したがって、老後の生活費はおよそ11万円。公的年金の支給額がまだわかりませんが、65歳以降も働きたいと言われていますので、仮に70歳まで働けば、この間は貯蓄=老後資金を取り崩さず、逆に毎月貯められるはずです。

70歳以降は年金だけの収入になりますが、90歳まで生きるとすると20年間。用意した老後資金がそのまま残っていれば、月割りにして5万6660円程ですから、公的年金を加算しても(実際は、税金、社会保険料が年金から天引きされます)、毎月の生活費は確保できるでしょう。
 

アドバイス2 リスクに備えるために「繰り下げ受給」を

とは言え、リスクもあります。まずは長生きによるリスク。仮に公的年金だけでは月2万円生活費が不足するとすれば、95歳まで生きるとすれば120万円がさらに必要になります。3万円不足なら180万円となるわけです。

もうひとつ、医療や介護など、健康保険や介護保険でカバーできる部分もありますが、それでも予期せぬ大きな出費があるかもしれません。できれば、それにも備えておく必要があります。

したがって、瑠璃子さんの場合、公的年金のうち老齢基礎年金を「繰り下げ受給」してもいいと思います。

現行では原則65歳からの支給となる老齢基礎年金ですが、この受け取りを遅くするということです。1カ月繰り下げるごとに支給率は0.7%アップします。最長で5年、つまり受給開始を70歳に繰り下げることが可能で、その場合の受給率は142%。現在、老齢基礎年金の満額が月額6万4941円(平成29年度/65歳支給)ですから、その場合、70歳受給だと9万2216円となります。受給期間は5年間短くなりますが、それでも81歳のときに総受給額は65歳受給を上回ります。

もちろん、どちらが得かは断定できませんが、70歳まで元気に働くことができそうで、かつ貯蓄を大きく取り崩していないなら、70歳まで繰り下げてもいいと考えます。結果、年金額を増やすことで、先に述べたリスクに備えることができるからです。
 

アドバイス3 楽しむための支出は大事な必要経費

また、ご相談に「もう少し貯蓄を増やす方法があれば」とありますが、現状ではそこまで考える必要はないでしょう。

もちろん、娯楽費などを削れば、もっと貯蓄ペースは上がります。しかし、この収入で相当に頑張って家計管理をされています。怖いのは、気持ち的にそれが続かなくなったとき。旅行やライブに行くことは、いわば継続のための必要経費です。適度に楽しみ、節約を強いられる生活の中でいい意味でガス抜きをしていくことは、とても重要です。個人的には、ボーナスから捻出する旅行費は今の倍近くにアップしてもいいのでは、と思います。

また、確定拠出年金は結果的に節税になるため、貯蓄を増やす方法にはなります。勤務先に企業型の確定拠出年金がない会社員の方が、個人型の確定拠出年金(iDeCo)を行う場合、掛け金の上限は月額2万3000円。その全額が、所得控除となり、結果、所得税や住民税が減税されます。

ただし、積立時と受取時に手数料(他に初回の口座開設費用として3000円前後)が発生します。金融機関によってその額は異なりますが、毎月積立で年間2000~6000円ほど。受取時は振り込みの都度、多くの場合1回432円。これらのコストを考慮した上で検討されるといいでしょう。

また、確定拠出年金は老後資金づくりのための制度です。原則、積み立てた資金を引き出せるのは60歳以降となりますので、そこも注意が必要です。

ともあれ、健康面に十分留意しながら、今のペースを守っていけば、資金的に老後で大きく困るということはないと思います。頑張ってください。
 

相談者「瑠璃子」さんから寄せられた感想

この度は貴重な機会を頂き、本当にありがとうございました。一人暮らしであること、給与が低いことで先行きの不安がありましたが、このペースでも老後の資金を賄って行けるとのことで安心しました。正直なところ、ライブに行くことやちょっとした小旅行が今の自分の身の丈に合っていないような気がしており、贅沢をしているように感じていましたが、【楽しむための支出は大事な必要経費】という言葉をいただき、気持ちが楽になりました。これからは日々の節約生活のご褒美として純粋に楽しむことができます。確定拠出年金や老齢基礎年金の繰り下げ受給は考えたことがなかったので、良い勉強になりました。今後、年金に関しては様々な改革が行われていくと思いますので、その時の自分の状況と相談して検討してみたいと思います。


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
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マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ



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