デフレ経済からの脱却、労働環境の改善、賃金のベースアップなどが大きな課題となる一方で、家電量販店、ディスカウントショップ、安売りのドラッグストアなどは相変わらず大盛況です。都市部では定価で販売している商品をみかけるほうが珍しいかもしれません。

もっとも、近年は定価自体がない商品も多くなってきたようですが……。

不動産の売買でも同じです。抽選になるような新築物件ではさすがに値引きされませんが、新築売れ残り物件は内々に値下げをしたり、中古物件では指し値(価格交渉)が当たり前のようにされていたりします。

売却するほうでも、たとえば査定価格が3,700万円の物件なら、指し値されることを考えて、売出価格は3,800万円あるいは3,980万円などとすることも少なくありません。

3,700万円の物件を3,980万円で売り出して、買主が3,800万円の指し値をして契約がまとまるなら、売主も買主も丸く収まって大団円であり、それでよいのではないか、と考えることもできるでしょうが……。

あまり高く出し過ぎると買い手がつきませんから、どれだけ上乗せして売り出すのかが「営業担当者の技量」みたいなところもあります。中古マンションなど売買事例がいくつもある物件はあまり上乗せもできませんが、中古一戸建て住宅では駆け引きの余地も大きいでしょう。

買主は買主で、指し値に応じて値引きしてくれるのが「売主の誠意」みたいな印象をもつこともあるようです。でも、何だか少し変ではないでしょうか。

3,700万円の物件を3,980万円で売り出して3,800万円に値引きをすれば「誠意のある売主」、3,700万円の物件をそのまま3,700万円で売り出して値引きに応じなければ「誠意のない売主」のように受け取られることがあるのです。

3,700万円の物件は3,700万円で売り出すのが、本当の誠意のハズです。しかし、正直に3,700万円で売り出してしまうと、結局はそこから値下げして3,600万円とか3,500万円にしないと成約しないことになりかねません。

正直な売主が損をするような事態は改善しなければならないのですが、指し値の状況には地域による違い、あるいは時期による違いがあることにも注意が必要です。

売出価格と成約価格の乖離を調べてみると、値引き幅の大きな地域、小さな地域、さらにほとんど売出価格そのままで売れる地域があります。また、同じ地域でも不動産市場の動向によって値引き幅が大きくなったり小さくなったりを繰り返しているのです。

それを無視して、ほとんど値引きのない地域や時期に買主が大きな指し値をすれば、まったく相手にされないこともあるでしょう。

買主の立場として「どの物件でも指し値が通用するわけではないこと」「指し値に応じるのが必ずしも売主の誠意ではないこと」の2点は理解しておかなければなりません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年10月公開の「不動産百考 vol.4」をもとに再構成したものです)


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