充実した人生を送っていても、不倫をしてしまう不思議

仕事は順調。家では愛妻家で妻とも仲が良く、良きお父さん。それでも……?

仕事は順調。家では愛妻家で妻とも仲が良く、良きお父さん。それでも……?


ある俳優の不倫が話題となった。ハリウッドでも大活躍し、妻は闘病中だが夫婦仲は円満、公私ともに非の打ち所のない生活、本人も人望があるとされている。

「それなのに、どうして不倫なんてすると思いますか?」と、ある女性にまじめに問われた。

個人的にはその俳優を擁護も批判もしないけれど、やはり彼は「恋に落ちてしまったのだろう」と想像するしかない。


「自分のことをいちばん理解してくれるのは妻」

お互いを尊重しあい、いまだにデートもしている、そんな理想の夫婦。

お互いを尊重しあい、いまだにデートもしている、そんな理想の夫婦。


結婚して20年以上経つが妻とは仲良し、家庭も円満。本人も順調に出世しているというまさに公私ともに充実した既婚男性がいる。トモヤスさん(50歳)だ。同期の中では出世頭、だが本人はいたってざっくばらんな性格で、別名「宴会部長」と呼ばれるほど明るい性格。

そんな彼が2年前、突然、恋に落ちた。

「どうしてって言われても答えられないんですよね。家庭に不満があったわけではない。妻とは大親友みたいな感じで、自分のことをいちばん理解してくれているのは妻だと思ってる。妻も仕事をしているし、うちは子どもも含めて、それぞれが尊重しあう関係を大事にしてきたんです」

時間が合えば妻と二人っきりのデートも欠かさなかった。本当に何の不満もなかったのだ。それなのに、恋に落ちた。

相手は仕事で知り合ったサトコさんで、8歳年下、バツイチだという。

「彼女は子どもはいないんだけど、お父さんが要介護でグループホームに入っているんです。仕事が休みのときはお父さんと一緒に過ごす、やさしい人でね。たまたま何人かで一緒に食事に行ったとき、そんな話を聞いて……。でもまったく暗いところはなくて、明るくて仕事のできる人なんです」

どこをどう好きになったのかはわからない。気づいたら、彼女と会いたいという気持ちだけが強くなっていたのだ。

「会いたい。会って話をしたい。それが満たされれば抱きしめたい、もっと深い関係になりたいと欲求は募っていきます。そのつど、葛藤しましたよ。このままじゃいけないと自分の気持ちを抑え込んだこともある。でも無理だった……」

恋する気持ちに逆らうことはできなかった。たとえ大手企業の出世頭であっても、愛妻家であっても。


「生きているのが楽しくてたまらない」

食事やデートだけでなく、海外旅行にも。

食事やデートだけでなく、海外旅行にも。


密かに彼女とつきあうようになって1年半。「密かに」と言っても、外でデートすることもあれば、ふたりで旅行をしたこともある。

東京のような場所では、外でふたりきりで食事をしようがバーにいようが、それだけで「不倫」とは断罪されない。友だち同士だって仕事仲間だって、男女がふたりでいるくらいはそれほど珍しくはないからだ。

ただ、旅行となるとそうはいかない。

「誰かに見つかる可能性だって、確かにありますよね。お忍びにぴったりな温泉に行ったので、人に見られたらかえって言い訳がつかないような旅行でした。彼女に要求されたわけじゃないんです。僕がどうしても彼女と旅行をしたかった。誰の目も気にせず、ふたりで一日中、いちゃいちゃしていたかった」

それほどに、トモヤスさんの恋のエネルギーは爆発していたのである。

「実は今度、ヨーロッパに出張があるんですが、少し滞在期間を延ばして彼女と一緒に過ごす予定なんです」

トモヤスさんは小声で言った。外国なら見つからないだろうと思いがちだが、今や日本人はどこにでもいる。数が少ない分、かえって目立つこともあるし、会社の人に見つかったらそれこそ命取りではないだろうか。

「だから見つからないようにするしかない。細心の注意を払うつもりです」

いつでもどこでも堂々としていられるわけではないのが不倫の恋のせつないところ。だからこそ、彼らはどんな些細な機会も逃さず、会うために工夫をしつづける。そうやって工夫をしてようやく会えるから、思いはより募っていく。不倫は不倫だからこそ燃え続けるのだろう。

「会えるだけでいい。いい年してこんな気持ちになっていることが自分でも不思議です。ただ、妻との関係が変わったわけではないし、妻への思いも変わらない。妻を傷つけることを考えると、体が震えるほど怖い。自分がこんなずる賢い人間だったのかとぞっとすることもあるんですが、妻への信頼感と、彼女への情熱、両方、僕自身の中にあるんですよね」

それはストレスにもなるかもしれないが、トモヤスさんの場合はエネルギー源にもなっているのだろう。仕事もますます順調なのだそうだ。

「生きているのがうれしくてたまらないんです。子どもみたいですが」

照れたように語るトモヤスさんは、確かに「恋する人」独特の輝きに満ちていた。

大人なのだから分別というものがあるだろうと非難するのは簡単だ。だが、恋する熱い思いを非難したところでどうにもならないのかもしれない。
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