日常生活・総合支援事業(総合事業)とは
介護を必要とする方は年々増えています
従来の要介護認定で「要支援1~2」だけでなく、「非該当(自立)」と認定された人や、要介護認定自体を受けていない人でも、65歳以上で生活機能の低下が見られると認められた場合に利用することができる、市区町村の独自色が強い事業です。
これに伴い、要支援1~2の人を対象に行われてきた「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」は、介護保険から切り離されて総合事業に移管されています。総合事業として行われる「訪問介護サービス」「通所介護サービス」の内容や料金については、市町村の裁量に任されています。詳しくは、下の図を併せてご覧ください。
介護に関する総合事業が始まった背景
それでは、なぜ総合事業が始まり、なぜ訪問介護と通所介護だけが介護保険から移管されることになったのでしょうか?
厚生労働省が発行した「介護保険最新情報VOL355 別紙2 介護保険制度の改正事項に関する考え方」には、次のように書かれています。
Q.要支援者の予防給付の見直しを行うのはなぜか。訪問介護と通所介護に限って地域支援事業に移行するのはなぜか。
- 要支援者については、配食、見守り等の多様な生活支援サービスが必要であり、生活支援の多様なニーズにこたえるためには、介護事業所以外にも、NPO、民間企業、ボランティアなど、多様な事業主体による多様なサービスを充実していくことが、効果的で効率的。
- また、高齢者の介護予防のためには、地域に多様な通いの場を作り、社会参加を促進していくことが重要。そのためには、介護事業所以外にも、地域の中で多様な主体による多様な場を確保していくことが効果的で効率的。高齢者の社会参加の促進を通じて、元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍すれば、生きがいや介護予防にもつながる。
- なお、予防給付のうち訪問看護等のサービスについては、多様な形態でのサービス提供の余地が少ないことから、市町村の事務負担も考慮して、引き続き予防給付によるサービスを継続。
<解説>
上記の説明のままでは専門的な言葉も多く、ピンと来にくい方が多いかも知れませんので、私なりに解説してみます。
年々、社会保障費が増え続けるなかで、現状の介護保険制度をそのまま維持し続けるのは困難です。それならば、一般の介護事業所だけではなく、民間企業やボランティアなどにもサービスを提供してもらうようにすれば、費用を抑えつつ、バラエティに富んだサービスが提供できて一石二鳥。これまで要介護認定を受けなかった高齢者や、要介護認定で「非該当(自立)」と判定された高齢者にもサービスを提供できるようになることで、それ以上の介護が必要となるのを予防できるのであれば、一石三鳥になる。しかし、訪問看護などの専門職が行うサービスは、看護師などの専門家でないと無理なので、介護保険のなかに残そう……といった感じになるかと思います。
総合事業のメリット:軽度の方でもサービスを利用できる
軽度の方でも総合事業を利用することで、介護予防に取り組めます
また、要介護認定で「非該当(自立)」と判定された人でも、「基本チェックリスト」で生活機能の低下が見られると判断された場合は、訪問型サービスや通所型サービスを利用することが可能となりました。
これらは総合事業が始まったことによるメリットと言えると思います。
総合事業のデメリット:自治体によるサービス格差が生まれる
では、総合事業のデメリットにはどういうものがあるでしょうか?全国均一のサービスが定められていた介護保険事業と異なり、総合事業については市区町村が裁量が任されている範囲が大きくなっています。サービス内容や料金は自治体ごとに異なったものとなるため、「自分が住んでいる町より、隣町のほうがサービスの種類が豊富で、内容も良く、しかも料金が安い」といったことが起きてしまうかも知れません。
また、ボランティアなどが訪問介護、通所介護を担う場合、どこまで質と安全が担保されるかという部分にも不安が残ります。介護の資格を取得していない人でもサービスが提供できるので、万一、事故などが起きた場合、誰がどのような形で責任を取ることになるのか、サービスを利用する側としては良く確認をしておきたいところです。
以上、日常生活・総合支援事業の概要について解説してきましたが、詳しい手続き方法については、「図で解説!日常生活・総合支援事業の手続き方法」をご参照ください。