スタートダッシュに成功した新型CX-5の課題は?
新型にスイッチした2代目マツダCX-5が好調な出だしを切った。発売から約1カ月で1万6639台を受注し、海外を含めた需要増に対応すべく本社工場に加えて、周防工場でも生産することも発表した。
今後の課題は、モデルライフを通してコンスタントに売れるかどうか。マツダは販売店を黒で統一するなど高級感を演出した店舗をはじめ、値引き販売を抑制するなどの戦略を掲げているが、モデル末期に近づいても売れ続けるには、商品力と販売力のさらなる強化が欠かせない。
CX-5を含めた新世代商品と呼ぶアテンザやアクセラ、デミオやCX-3といったモデル達は常に商品改良(マイナーチェンジや一部改良)を受けることで、新鮮さを保つというサイクルに入っているが、フルモデルチェンジほどのインパクトを与えるのは容易ではなく、(マツダに限らず)困難な仕事といえそうだ。
全高を15mm下げたCX-5の乗降性、居住性は?
さて、2代目の新型CX-5はどうだろうか。発表前からティザーサイトなどでその姿が披露されていたが、新旧見比べると新型はよりスタイリッシュに大人の雰囲気をまとっている。
全長と全幅はほとんど変わっていないが、全高を15mm下げ、Aピラーの位置を35mm下げることで、より低く、重心が後寄りのスタイリングに変更。さらに、天地に薄くなった感のあるヘッドライトやテールランプなど、ディテールも見直すことでスポーティさを演出しているようだ。
内装もセンターコンソールの天地高を高め、ナビのディスプレイをインパネ最上部に独立させるなど、質感と視認性向上が図られていて、ディテールまで素材にこだわるなど、外観同様に新旧を乗り比べるとクオリティアップが実感できる。
全高を下げたことで後席のヒップポイントも10mm下げられた。たった1cmだが乗り降りしやすくなったのは明らかで、乗降時および着座時の頭上まわりの余裕は若干減ったかも知れないが、身長171cmの筆者にとっては利点も感じられた。なお、新型はリクライニングも可能になり、座面が低くなったことでやや寝そべったような姿勢を取ることもできる。その是非は別にしても体型に応じて自由度が高まったのは確かだ。
また、後席の座り心地は、長身の方には旧型のように床面から座面までの高さ(10mm高い方が)が最適かもしれないが、新型はヒップポイントを下げてもシート形状を身体にフィットするように変更。さらに、座面のウレタンを見直すなど、座り心地をより重視した。何を捨てて、何を得るかは難しい判断だが、子どもやお年寄りは乗り降りしやすくなったはずだ。
素直で乗りやすくなった新型CX-5
さて、CX-5の魅力である走りはどうだろうか。静粛性や乗り心地の改善が入念にされているだけあって1クラス上に上がったような上質さを味わえる。ライバルよりも上と思わせるのも音、振動対策で、とくに乗り心地ではトヨタ・ハリアーや新型フォルクスワーゲン・ティグアンと比べてもこの点は上まわるほど。
また、看板である2.2Lのクリーンディーゼルエンジンは、相変わらずトルクフルで高速巡航も楽だが、先代のようにトルクやパワー感をハッキリと伝えるのではなく、アクセルを踏む量や速度に応じてスムーズに加速するようになった印象を受ける。「より乗りやすくなった」というのが新型CX-5の美点だ。
一方のガソリンエンジンは、2.0Lは街中なら必要十分というところ。加速時は頻繁にキックダウンし、必要な速度域まで音はかなり高まるが、巡航に戻れば静かさが戻ってくる。高速道路を使ったドライブが多いのなら2.5Lガソリンが欲しいところだが、シティユースが中心なら2.0Lでも普通に乗れてしまうから悩ましい選択になりそう。
ハンドリングも非常に素直で、クセがなく乗りやすさが印象的だ。操舵感はとくにクイックではなく、スポーティに振られているわけではないが、アクセルレスポンスと同様に、ドライバーの意思どおりに、切った分だけ素直に曲がっていく。長距離ドライブでも疲れを誘わないはずで、運転が苦手という方も苦にならないのではないだろうか。
新型CX-5のライバルは?
ライバルは価格的には、純ガソリンならトヨタ・ハリアーも射程圏内で、三菱アウトランダー(こちらも純ガソリン車が中心)、日産エクストレイルももちろん競合してくるはず。輸入車でも新型フォルクスワーゲン・ティグアンのエントリーグレード「TSI Comfortline」は360万円だから検討対象になるかもしれない。
トヨタ・ハリアーはブランドイメージと内装の仕立ての巧みさ、三菱アウトランダー(純ガソリン車)も素直な走りと、3列シートを有すること。また、日産エクストレイルは、アウトドアなどでも使いやすい荷室に加えて、とくに4WD仕様の「悪路走破性が高いという印象」などが強みだろう。
新型CX-5は、引き続きクリーンディーゼルの力強い走り、ランニングコストなどがまずは武器になるはずで、あとは上質になった内・外装や走りなど、少し分かりにくい点も訴求していく必要がある。今後は、こうしたライバルと迷う浮動票を掴むには、いかに試乗してもらえるかも課題になるかもしれない。