SUZUKI(スズキ)/スズキ

ライバルと比べて新型ワゴンRの完成度はどうか?

6代目にスイッチした新型ワゴンRは、挑戦的なデザインや進化したパッケージングなどにより初代に並ぶ意欲作に感じさせる。ダイハツ・ムーヴやホンダN-BOXをはじめとしたライバルと比べて、その完成度はどうだろうか。

塚田 勝弘

執筆者:塚田 勝弘

車ガイド

新型スズキ・ワゴンRは優等生

スズキ・ワゴンR

新型スズキ・ワゴンR。全長3395×全幅1475×全高1650mm。燃費は25.4km/Lから33.4km/L


1993年の初代登場から数えて6代目になった新型ワゴンR。先々代、先代の2代がやや保守的な内・外装を採用してきたこと、ハスラーのスマッシュヒットもあってスズキの軽自動車の中でも存在感が薄くなっていた感がある。

さらに、ライバルがバラエティに富んだモデルを投入してきたのもワゴンRのプレゼンスが低くなっていたように感じさせる要因かもしれない。

しかし、6代目の新型ワゴンRは、初代以来の「革命」といえるほどチャレンジングな内容となっている。結論から言うと、いままで他メーカーに目が行きがちだった人にも注目してほしい仕上がりになっている。

新型スズキ・ワゴンR

新型ワゴンRの価格帯は、ワゴンRが107万8920円~147万0960円。写真のスティングレーが129万3840円~177万9840円


ノーマル系(FA、ハイブリッドFX)、スポーティ系(ハイブリッドFZ)、強烈な顔つきに仕上げられたスティングレーという3つのフロントマスクを用意しているのをはじめ、マイルドハイブリッドも設定することで、スタイリングも走行性能も装備もじつに欲張り。まさに意欲作といえる充実の内容となっている。

ハイブリッド・ターボの仕上がりが印象的

新型スズキ・ワゴンR

パワートレーンは、NA、ハイブリッド(NA)、ハイブリッド(ターボ)の3種類。トランスミッションは全車CVT


エンジンは52ps/60NmのNA(自然吸気)、さらに2.3kW(3.1ps)/50Nmのモーターを加えたマイルドハイブリッドのNAエンジンを用意。スティングレーには、ターボとモーターとの組み合わせになるマイルドハイブリッドのターボ仕様も設定されている。

試乗したのは、マイルドハイブリッドのNAとターボ仕様。両パワートレーンともにスムーズな発進、加速が印象的で、減速時もハイブリッドにありがちな違和感をほとんど覚えずにすむ。

とくに、素晴らしい加速フィール。軽自動車とは思えない力強さを披露してくれたのがターボ仕様で、ターボによる過給とモーターアシストにより速度域を問わず、どこから踏んでも即座に加速してくれるのだ。

新型スズキ・ワゴンR

スティングレーのインパネ。センターメーターを採用し、さらに軽自動車初のヘッドアップディスプレイを設定した


余談だが、軽自動車には64psという自主規制値があるが、これはエンジンを想定したもの。モーターによるアシストが増えればこの規制(規制の代わり税金などの恩恵が受けられている)がどうなるか、また規制撤廃の議論も再燃しそう、と心配が頭に浮かぶほどだった。

スズキのパワー感やトルク感の出し方の巧さは、アルトワークスなどでも実感させられたが、ワゴンRというキャラにあった特性としながらも痛快な走りをターボ仕様で実現している。このマイルドハイブリッド+ターボで軽ピュアスポーツを作ったら新時代の軽自動車スポーツを提案できそうだ。

ハイブリッドはモーターによるクリープ走行が可能

新型スズキ・ワゴンR

こちらはNAエンジン搭載のマイルドハイブリッド。初代を彷彿とさせる横基調のテールランプはバンパー側に配置されている


一方のNA(ハイブリッド)の出来も良好。なお、NAもターボを問わず、新型ワゴンRのマイルドハイブリッドは、モーターによるクリープ走行(13km/h以下)に対応したのがトピックスで、最長30秒間のモーターアシストも可能になっている。

なお、マイルドハイブリッドと呼ぶ前の「S-エネチャージ」は、モーターアシストは6秒間だったが、2015年のマイナーチェンジで6秒間から30秒間に変更され、新型ワゴンも同様だ。なお、速度域は「発進後から約100km/h」。

今回、新型ワゴンRがモーターによるクリープ走行が可能になったことで、渋滞時や前方の信号が赤などに備えた停車前、早朝深夜の住宅街をゆっくり走る際などにモーター走行で重宝するのは間違いない。ハイブリッドらしさを増した印象を受ける大きな要因だ。なお、モーター走行時は車両接近通報装置の音が車内で響くくらいで、軽自動車としては非常に静かなのも印象的。

新型スズキ・ワゴンR

前席のヒップポイントを15mm下げることで乗り降りしやすくなったのも朗報


新型ワゴンRが獲得しているスムーズな加速フィールをライバルと比べるとどうだろうか。ダイハツ・ムーヴ(キャストを含む)系の美点は乗り心地の良さで、新型ワゴンRもかなり頑張っているが、少し角を感じさせる乗り味になっている。

同じ条件下で乗り比べたわけではないが、軽自動車ではトップクラスの乗り心地が味わえるダイハツ・キャスト アクティバには少し及ばないかもしれない。それでもワゴンRを回避するほどではもちろんなく、スタイリングや使い勝手、そしてマイルドハイブリッドの価値に惹かれたらワゴンRを指名すべきだろう。

ほかにも、ホンダN-BOXという人気モデルと新型ワゴンRで迷っている人もいるだろう。とくにターボ(マイルドハイブリッドのみ)は、N-BOXを含めたターボ仕様を明らかに超えるパワーフィールが得られるのが美点だ。軽自動車でも速さとスムーズさを求めるならワゴンRをオススメしたい。

新型ワゴンはほぼ隙のない高い完成度

新型スズキ・ワゴンR

後席の広さも文句なしで、前後席の乗員距離間は35mm拡大。後席はスライドとリクライニングが可能


そのほか、エンジンルームを小型化して前後席距離間を35mm延長し、キャビンを広くした最新のパッケージングをはじめ、ドアの傘立てや助手席までフラットに倒せるシートなど、使い勝手の面でもほぼ隙のない仕上がりになっている。後席のスライド&リクライニングにより、広い室内と荷室の使い分けも容易だ(スライド用レバーが後席座面下にしかないのは惜しいが)。

新型スズキ・ワゴンR

スズキのお家芸といえる助手席の前倒し機構を新型ワゴンRも搭載。長尺物にも対応するのが魅力だ


初代登場時よりも代を経ることにライバルが増えているワゴンR。まずデザインで目を惹きながら、走りや実用性でも高い完成度を提示している。ホンダN-BOX、ダイハツ・ムーヴ、日産デイズ&三菱eKワゴンなど、軽ハイトワゴンの中でもナンバー1に据えたい仕上がりといえる。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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