白眉は普茶料理です

仏像も境内散歩もいいですが、萬福寺と言ったら、なんといっても一番の特徴は料理です。精進料理というと、なぜか皆さん、とても質素なものを想像されるようです。確かにそういう面もありますが、それはお坊さんたちが、修行の一環として食べるもので、一般的な宿坊に普通に泊まる場合や、泊まらなくても食事だけする場合は、けっこう豪華な料理が出ることが多いものです。なぜなら、わたしたちは、修行のためにお寺に泊まるわけではないので、お寺の方も、お客さんとしてもてなしてくださるのです。
これで4人分。きれいでおいしいだけでなく、食べきれないほどの量です

これで4人分。きれいでおいしいだけでなく、食べきれないほどの量です


揚げ物各種。真ん中の丸いものは、梅干やサトイモ。左の赤いものは紅しょうがで、わたしの大好物

揚げ物各種。真ん中の丸いものは、梅干やサトイモ。左の赤いものは紅しょうがで、わたしの大好物

とりわけ、萬福寺で出していただく料理は、普茶料理(ふちゃりょうり)と言って、中国料理のエッセンスを取り入れた、たいへん華やかでおいしいものです。どんな点が中国風かというと、まず、基本的に4人で一卓を囲み(萬福寺では、現在は、3人そろえば予約できます)、楽しく食事をすること。料理は大皿に盛られていて、それをとりわけていただくこと。油を多用していること。さまざまな食材を用いて手間隙をかけて作られた、味だけでなく見た目も美しい料理が多いことなどです。

隠元さんが伝えてくれた蓮根も入った一皿。花のように見えるものは、細切りにした昆布にあられをさして揚げたもの

隠元さんが伝えてくれた蓮根も入った一皿。花のように見えるものは、細切りにした昆布にあられをさして揚げたもの

食材が多いのは、黄檗宗を日本に伝えた隠元禅師が、それまで日本になかった数々の食材も伝えてくれたことに由来します。隠元禅師が持ってきてくれた食材の代表は、インゲン豆です。そうか、インゲンというのは、お坊さんの名前だったのか。それ以外にもスイカ、蓮根、孟宗竹'たけのこを食べる)など、隠元さんが伝えてくれた食材は数々あります。

また、いわゆる「もどき料理」も多く、見た目だけでは、どんな食材で作られているのかわからないものもあります。お寺の方のお話では、もどき料理には、単なる肉や魚の代用品というだけでなく、「これは何だろう」と楽しく会話する目的もあるのだとか。禅宗のお寺では、修行の一環の食事の際は、一切口をきいてはいけないという決まりがありますが、普茶料理はおもてなし料理なので、「おいしいね」、「面白いね」と話ながらいただくのがよいようです。
うなぎの蒲焼もどき。つぶした豆腐と山芋を混ぜ、のりを片面に張って揚げ、再度照り焼きにして作ります。見た目だけでなく、食感もうなぎに似ている

うなぎの蒲焼もどき。つぶした豆腐と山芋を混ぜ、のりを片面に張って揚げ、再度照り焼きにして作ります。見た目だけでなく、食感もうなぎに似ている


禅の心を表す雲片

禅の心を表す雲片。残った野菜屑で作ったとは思えないほどおいしいです

しかし、そんな中にも、禅宗における精進料理の心はちゃんと生かされています。禅宗では、たとえ植物といえども命があるので、できる限り食材を無駄にしないという考え方があります。普茶料理のコースに含まれている雲片(うんぺん)という料理は、他の料理を作る際に出た野菜の切りくずを集めて葛でとじた料理です。これをいただくことで、わたしたちは、わたしたちを生かすために命を捧げてくれた植物たちに感謝の意を表すわけです。

■ 萬福寺
デザートは季節の果物とお菓子。みどり色の団子は、近く宇治の名物の茶団子

デザートは季節の果物とお菓子。みどり色の団子は、近く宇治の名物の茶団子

住所:京都府宇治市五ヶ庄三番割34
電話:0774-32-3900
拝観時間 : 9:00~17:00
拝観料:500円
普茶料理は、5000円コース、7000円コースがあり、3名より予約ができます
また、希望により、座禅、写経などの指導もしていただけ、宿泊して修行体験をすることもできます。(ただし、その場合の食事は、普茶料理ではありません)

● 『神社、寺ガイド』の吉田さらさは、現在、NHK教育テレビで毎週木曜日夜10時から放送されている「直伝和の極意、とっておきの宿坊を楽しむ」に出演中です。
萬福寺の回は、6月24日放送(翌週の7月1日、13時5分より再放送)です。
好評につき、総集編の放映も決定しました。7月3日(土)14:50~16:50、1回目から5回目(高野山蓮華定院、妙心寺東林院、萬福寺、大陽寺)が一挙放送されます。宿坊や精進料理にご興味のある方は、ぜひごらんください。

番組ホームページはこちらです


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