お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

35歳、障害を持つ子どもを抱え将来が不安でいっぱい(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、障害をもつお子さんを育てる会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 もっとも重視すべきは自身の健康

お子さんに軽度の障害があるとのこと。障害そのものについては専門家の方にアドバイスを求めてほしいと思いますが、FPの観点から言えば、今もっとも重要視すべきは、母親であるりぅさんの健康です。

母親が倒れたら、もちろん、ご実家がある程度は助けてくれるしょうが、時間的に限界があるという点で、万全とは言えません。子どもさんにとっては経済的にも、そして生活面も母親が長期間支えていくことがもっとも望ましいと考えます。

したがって、りぅさんも大きな手術を過去にされている点が心配です。お子さんと同様に、ご自身の健康に気を配り、かつ無理はしない。それが結局はお子さんのためにもなるということを絶えず意識してほしいと思います。

さて家計ですが、これ以上、生活費を節約する必要はないと思います。毎月4万5000円の貯蓄は立派です。貯蓄しなくてはという思いから、無理な節約はしないようにしてください。年に一度のお子さんとの旅行も、絶対削ってはいけないコストです。贅沢でも無駄遣いでもありません。実に有意義なお金の使い方です。

したがって、一度と言わず、年2回行かれてもいいと思います(もちろん1回の経費は下げない)。そのくらい、気持ちをリフレッシュできる機会、時間を持つことは家族として必要なのです。
 

アドバイス2 必要な死亡保障を定期保険で確保する

心配されている保険については、多少見直す余地はあります。まず、現状でもっとも必要な保障はりぅさんに万が一のことがあった場合の死亡保障です。必要額としては1500万~2000万円。加入されている保険ではこれが確保されていません。保険料の割安な定期タイプ(保険期間20年)の保険で確保します。

ただ、気になるのはりぅさんの健康状態。保険加入が難しいか、加入できても保険料が割高な引受基準緩和型保険(持病等がある場合でも加入できる)に限られるでしょう。一般に35歳女性であれば、死亡保障2000万円を保険期間20年の定期保険で確保すると、保険料は月額3000円前後。これが倍の6000円を超えるようであれば、加入は数年待つ方がいいでしょう。手術の経過年数によっては加入できる保険の選択肢が広がるからです。これは、加入できなかった医療保険にも該当することです。

ただ、どちらにしてもりぅさん名義の終身保険は不要です。今は流動性の低い保険に貯蓄性は求めず、現金で貯蓄していくことが効率的です。したがって、払済保険にして、年間9万8000円の保険料は貯蓄に回すか、新たに定期保険に加入できたらその保険料に充ててください。終身保険を払済保険にしても、額は小さくなりますが、今まで支払った保険料分の保障は確保されます。

また「お葬式代確保のために200万円の終身保険に加入したい」と書かれてありますが、それもすべきではありません。ご自身の葬式費用よりも優先すべきは、今後ずっと生きていくための資金です。

あと、米ドル建ての保険に加入されています。1ドル75円のときに契約されたとのことですからまだ良かったですが、今後はいくら予定利率が高くても外貨建ての保険には加入しないでください。もちろん為替差益も期待できますが、為替差損というリスクも絶えず抱えています。今はリスクを取ることは避けなくてはなりません。
 

アドバイス3 教育資金や老後資金は焦らず自分のペースで

最後に教育費についてですが、まだ不確定要素が多く、具体的な対策はまだ取れません。ただ、進路がまだ決定していなくても、そこは焦る必要はないと思います。資金も「いくら準備しないといけない」ではなく「可能な範囲で用意していく」という発想でいいのでは。こうしなくてはいけないと自分を追い込むことは、今後のマネープランにも逆効果です。貯蓄の仕方も、今までどおり元金保証の貯蓄商品でコツコツ積み立てればそれで構いません。

一方、資金不足をフォローしてくれる公的制度も多いに利用すべきです。もちろん、りぅさん自身よくおわかりだと思いますが、自治体ごとに母子家庭や障害を持つお子さんに対しての支援制度があります。

また、今後のお子さんの状態によっては「特別児童扶養手当」や「障害児扶養手当」を申請することになるかもしれません。そういうことも含め、何があったらどのような制度が有効だということは、お子さんのセーフティーネットとして認識しておくことが大切だと思います。最近は土日、祝日も対応する市役所や行政施設も増えていますし、インターネットで調べることもできるはずです。

また、同じ悩みを持つ世帯や母親がネットで情報発信をしています。そこを覗いてみるといろいろ発見があるかもしれません。

老後資金についてはさらに不確定要素が多くなります。今から心配しなくてもいいと思います。

もちろんある程度の試算はできます。予想される公的年金と必要な生活費の差額を出し、例えばそれが月5万円の赤字なら、30年間(60歳から90 歳までを老後とした場合)で1800万円。それに余裕資金を加算して2500万円程度が必要な老後資金となります。

しかし、生活を抑えれば公的年金だけで生活できるかもしれません。60歳以降も働けばもっと老後資金は上積みされます。幸い、りぅさんは自宅は相続という形で確保できそうなので、その分コストは抑えられるでしょう。

確定拠出年金については、余裕があれば自身の拠出分を最大8000円まで引き上げても(企業型でマッチングを利用する場合、企業の拠出額を超える額は拠出できません)いいでしょう。老後資金が増えるだけでなく、節税メリットもアップするので、結果的に家計節約につながります。

今できることは、メリハリをつけながら、上手に節約して貯蓄を持続させること。そして先に述べましたが、心も身体も無理をすることなく、自身のペースでお子さんとの生活を重ね、そしてその日々を楽しむこと。もちろんご苦労はいろいろあると思いますが、りぅさんならできるはずです。肩の力を抜いて頑張ってください。
 

相談者「りぅ」さんより寄せられた感想

自分が生きていくより、自分が死んだ後の子どもの心配をしていたように思います。アドバイスを受け、日々の生活、障害、教育資金、老後と悩んでいましたが、「できる範囲」で、 子どもとのびのびと過ごしてみようと思いました。また、葬式代よりは確定拠出年金のマッチングを増やしたり、終身死亡保険は払済にしようと思います。保険加入についても丁寧に詳しく教えていただき、ありがとうございました!


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん 
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ




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