いくら貯めればいいのか、具体的な金額が知りたい

将来のお金や保険のことなど心配が多い

将来のお金や保険のことなど心配が多い

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、障害をもつお子さんを育てる会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

■相談者
りぅさん(仮名)
女性/会社員/35歳
賃貸住宅

■家族構成
子ども(10歳)

■相談内容
子どもが障害を持っているので、通常の進学コースでなく、自立までに時間がかかりそうです。正社員ですが、ボーナスはなく、退職金も確定拠出年金のみです。子どもが小さいときに離婚して(慰謝料、養育費はゼロ)からようやく生活基盤が整ってきましたが、今後の教育資金と老後資金の準備に不安でいっぱいです。年に1度、子どもと2人でお泊まりの旅行(5万円弱)はどうしても譲れません……。他に準備しなければいけないこと、貯金の目安等具体的に教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

■家計収支データ
「りぅ」さんの家計収支データ

「りぅ」さんの家計収支データ



■家計収支データ補足
(1)子どもの障害について(相談者コメント)
「軽度の自閉症、ADHD(注意欠陥、多動性障害)、学習障害の発達障害です。あと知的障害の軽度と診断されましたが、今はまだ境界なので様子を見てからでも遅くないと言われ、知的障害の申請はまだ行っていません。なので、特別児童扶養手当や障害児福祉手当などは受給していません」

(2)加入保険の保険料内訳
[本人]
・医療共済(定期タイプ、入院5000円)=保険料2000円
・終身保険(払込期間10年間=2020年まで、死亡保障300万円)=保険料9万8000円(※年払い/米ドル建てを円換算)
・がん保険(保険期間20年、診断一時金300万円、満期保険金200万円)=保険料9万5000円(※年払い/米ドル建てを円換算)
[子ども]
・医療保険(終身保障終身払い、入院5000円、先進医療特約、60歳時に120万円の還付金)=保険料2200円
・養老保険(22歳満期、満期金100万円)=保険料7万1000円(※年払い)
・学資保険(満期金18歳から25年で100万円)=保険料一括払い済み
(保険についての相談者コメント)
「できれば、本当にお葬式代のみ200万円くらいの終身保険と共済ではなく医療保険の終身タイプ日額5000円くらいの保険に加入したいです。
ただ、お葬式代は改めて加入するより、今の保険を残して置き、払込終了後も支払う想定で貯金していく方がお得なのかも……と思って迷っています。あと医療保険ですが、20歳から病気をいくつも併発し、治療していたため以前から加入していたコープ共済以外加入できませんでした。2年前には病気を患い手術を行ったことで医療保険はまた加入できないのでは、と思っています」

(3)食費について
勤務先での昼食はお弁当持参か小遣いから捻出。実家からお米が送られることもある。ただ、子どもの食べる量が増え始め、じきに5000円増になりそう。

(4)教育進路について(相談者コメント)
「子どもは嫌なことがあると家に引き込もってしまうので、なるべく好きなことをさせて外の世界を遮断しないようにと考えています。恥ずかしながら、進路をはじめ将来のことはおぼろげにしか考えておらず、教育費が予想つきません。現在は市立の支援学級に通っており、中学校もそのまま同じ市立の支援学級の予定です。また、母子家庭および障害をもつ家庭への自治体の支援等は、ほとんど知りません。普段、子どもの様子が不安定なとき、通院時に有休を使用するため、それ以外で休むのは難しいです」

(5)厚生年金と確定拠出年金について
厚生年金の加入期間は通算191カ月。確定拠出年金は企業型で会社8000円、本人が2000円拠出している。スタートは2016年4月。

(6)定年等について
60歳定年後、パートとして再雇用は可能。転職は具体的には考えていない。

(7)実家について(相談者コメント)
「私が万が一のときには、両親に資金援助を受けることは可能と思っています。仲は悪くありませんが、お盆正月等も集まる習慣がなく、あまり交流がありません。また、将来は現在の借家(マンションの一室)の大家が母になります。貸契約書を交わし、家賃は母の口座に振り込んでいますが、相続といえば相続になるかと思います。今の家賃が購入資金代わりのローンのようなものだと認識しています。3兄弟ですが、妹は実家、弟は私と妹の相当分現金とし、他は特に相続できるような資産はないから争わないようにと2年前に話がありました」

■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 もっとも重視すべきは自分の健康
アドバイス2 必要な死亡保障を定期保険で確保する
アドバイス3 教育資金や老後資金は焦らず自分のペースで
 

アドバイス1 もっとも重視すべきは自身の健康

お子さんに軽度の障害があるとのこと。障害そのものについては専門家の方にアドバイスを求めてほしいと思いますが、FPの観点から言えば、今もっとも重要視すべきは、母親であるりぅさんの健康です。

母親が倒れたら、もちろん、ご実家がある程度は助けてくれるしょうが、時間的に限界があるという点で、万全とは言えません。子どもさんにとっては経済的にも、そして生活面も母親が長期間支えていくことがもっとも望ましいと考えます。

したがって、りぅさんも大きな手術を過去にされている点が心配です。お子さんと同様に、ご自身の健康に気を配り、かつ無理はしない。それが結局はお子さんのためにもなるということを絶えず意識してほしいと思います。

さて家計ですが、これ以上、生活費を節約する必要はないと思います。毎月4万5000円の貯蓄は立派です。貯蓄しなくてはという思いから、無理な節約はしないようにしてください。年に一度のお子さんとの旅行も、絶対削ってはいけないコストです。贅沢でも無駄遣いでもありません。実に有意義なお金の使い方です。

したがって、一度と言わず、年2回行かれてもいいと思います(もちろん1回の経費は下げない)。そのくらい、気持ちをリフレッシュできる機会、時間を持つことは家族として必要なのです。
 

アドバイス2 必要な死亡保障を定期保険で確保する

心配されている保険については、多少見直す余地はあります。まず、現状でもっとも必要な保障はりぅさんに万が一のことがあった場合の死亡保障です。必要額としては1500万~2000万円。加入されている保険ではこれが確保されていません。保険料の割安な定期タイプ(保険期間20年)の保険で確保します。

ただ、気になるのはりぅさんの健康状態。保険加入が難しいか、加入できても保険料が割高な引受基準緩和型保険(持病等がある場合でも加入できる)に限られるでしょう。一般に35歳女性であれば、死亡保障2000万円を保険期間20年の定期保険で確保すると、保険料は月額3000円前後。これが倍の6000円を超えるようであれば、加入は数年待つ方がいいでしょう。手術の経過年数によっては加入できる保険の選択肢が広がるからです。これは、加入できなかった医療保険にも該当することです。

ただ、どちらにしてもりぅさん名義の終身保険は不要です。今は流動性の低い保険に貯蓄性は求めず、現金で貯蓄していくことが効率的です。したがって、払済保険にして、年間9万8000円の保険料は貯蓄に回すか、新たに定期保険に加入できたらその保険料に充ててください。終身保険を払済保険にしても、額は小さくなりますが、今まで支払った保険料分の保障は確保されます。

また「お葬式代確保のために200万円の終身保険に加入したい」と書かれてありますが、それもすべきではありません。ご自身の葬式費用よりも優先すべきは、今後ずっと生きていくための資金です。

あと、米ドル建ての保険に加入されています。1ドル75円のときに契約されたとのことですからまだ良かったですが、今後はいくら予定利率が高くても外貨建ての保険には加入しないでください。もちろん為替差益も期待できますが、為替差損というリスクも絶えず抱えています。今はリスクを取ることは避けなくてはなりません。
 

アドバイス3 教育資金や老後資金は焦らず自分のペースで

最後に教育費についてですが、まだ不確定要素が多く、具体的な対策はまだ取れません。ただ、進路がまだ決定していなくても、そこは焦る必要はないと思います。資金も「いくら準備しないといけない」ではなく「可能な範囲で用意していく」という発想でいいのでは。こうしなくてはいけないと自分を追い込むことは、今後のマネープランにも逆効果です。貯蓄の仕方も、今までどおり元金保証の貯蓄商品でコツコツ積み立てればそれで構いません。

一方、資金不足をフォローしてくれる公的制度も多いに利用すべきです。もちろん、りぅさん自身よくおわかりだと思いますが、自治体ごとに母子家庭や障害を持つお子さんに対しての支援制度があります。

また、今後のお子さんの状態によっては「特別児童扶養手当」や「障害児扶養手当」を申請することになるかもしれません。そういうことも含め、何があったらどのような制度が有効だということは、お子さんのセーフティーネットとして認識しておくことが大切だと思います。最近は土日、祝日も対応する市役所や行政施設も増えていますし、インターネットで調べることもできるはずです。

また、同じ悩みを持つ世帯や母親がネットで情報発信をしています。そこを覗いてみるといろいろ発見があるかもしれません。

老後資金についてはさらに不確定要素が多くなります。今から心配しなくてもいいと思います。

もちろんある程度の試算はできます。予想される公的年金と必要な生活費の差額を出し、例えばそれが月5万円の赤字なら、30年間(60歳から90 歳までを老後とした場合)で1800万円。それに余裕資金を加算して2500万円程度が必要な老後資金となります。

しかし、生活を抑えれば公的年金だけで生活できるかもしれません。60歳以降も働けばもっと老後資金は上積みされます。幸い、りぅさんは自宅は相続という形で確保できそうなので、その分コストは抑えられるでしょう。

確定拠出年金については、余裕があれば自身の拠出分を最大8000円まで引き上げても(企業型でマッチングを利用する場合、企業の拠出額を超える額は拠出できません)いいでしょう。老後資金が増えるだけでなく、節税メリットもアップするので、結果的に家計節約につながります。

今できることは、メリハリをつけながら、上手に節約して貯蓄を持続させること。そして先に述べましたが、心も身体も無理をすることなく、自身のペースでお子さんとの生活を重ね、そしてその日々を楽しむこと。もちろんご苦労はいろいろあると思いますが、りぅさんならできるはずです。肩の力を抜いて頑張ってください。
 

相談者「りぅ」さんより寄せられた感想

自分が生きていくより、自分が死んだ後の子どもの心配をしていたように思います。アドバイスを受け、日々の生活、障害、教育資金、老後と悩んでいましたが、「できる範囲」で、 子どもとのびのびと過ごしてみようと思いました。また、葬式代よりは確定拠出年金のマッチングを増やしたり、終身死亡保険は払済にしようと思います。保険加入についても丁寧に詳しく教えていただき、ありがとうございました!


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん 
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ




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