お金の悩みを解決!マネープランクリニック/早期リタイア・セミリタイアしたい人のお金の悩み相談

54歳公務員。早期リタイアして寿命まで逃げ切れる?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、早期リタイアの資金計画に不安を持つ50代の公務員男性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 生活費が公的資金内なら毎年の海外旅行も十分可能

「寿命まで逃げ切れますか? 」というご質問ですが、先に結論から申し上げます。資金的には、逃げ切れると考えていいと思います。

ざっと試算してみます。2年後に早期退職した時点で、予想される金融資産の保有額は、現在の金融資産1950万円に退職金2000万円。さらに、今後2年間で900万円(貯蓄ペースが月20万円とボーナス年間200万円超)が貯蓄に上積みされます。

また、老後資金となる収入としては、個人年金保険の総受給額が900万円。拠出型企業年金は退職後、拠出が停止となりますが、結果的に満額の半分の180万円受け取れるとすれば計1080万円。つまりは、公的年金以外に確保できる資金は計5930万円ということになります。

次に支出ですが、退職が56歳であれば、公的年金を受け取るまでの9年間の生活費があります。ご本人は「リタイア後は年間240万円で生活する(税、社会保険料込み)」とのことですから、トータル2160万円。これを先の老後資金から差し引けば、65歳の時点で3770万円がまだ手元にあることになります。

これだけで寿命まで資金的に足りるかということですが、240万円の生活費であれば公的年金だけでの生活が可能です。90歳まで生きるとして25年間。何もなければ、貯蓄を取り崩す必要はないということです。ただし、長生きリスク、さらには病気や介護費用も考慮すべきでしょう。

そのために1000万円を予備費とすれば、老後資金の残りは2750万円。これを25年間で割れば、生活費として月9万円の余裕があることになります。予備費を2000万円としても月に約6万円の余裕資金があります。当然、生活費以外に不定期支出もあるでしょうが、それを考慮しても年1回の海外旅行は十分実現できるはずです。
 

アドバイス2 インフレが不安ならばアルバイトで収入を得る

心配されているインフレ率ですが、上昇率2%だと85歳で資金が底をつくとのこと。どのような条件設定での試算かは不明ですが、まず現実問題として、ご相談者が90歳になるまで、毎年物価が確実に2%上昇し続けることは考えにくいと思います。

仮に今年からずっと2%上がり続けるとすれば、想定していた生活費は月20万円が90歳のときは約28万5000円にアップし、トータルで3520万円程度の老後資金が別途必要になります。そうなると、手持ち資金は270万円に減ってしまいますが、それまで生活費以外に何も支出が発生しない場合ですから、実際には90歳までは資金がもたないと考えるべきでしょう。

そうなることがご心配であれば、どう対処すべきか。もっとも効果的な対策は働いて収入を得ることです。完全リタイアを希望されていますが、不安で仕方がないならば、働かざるを得ません。

とは言え、フルタイムで働く必要はありません。苦にならない程度に週の半分程度アルバイトをする。収入にして月6、7万円あれば十分です。退職後、60代の半ばまで続ければ700~800万円、老後資金が上乗せされます。

もっと老後資金がないと不安というのであれば、早期退職の時期を遅らせるのが賢明です。1年先延ばしすれば、それだけで450万円、老後資金が増えることになります。

もうひとつ、高齢になって資金が足りなくなったら、自宅マンションを担保に資金を借り入れるという手段もあります。現在は都心の一戸建てが対象物件の中心ですが、リバースモーゲージも利用できるかもしれません。どちらにしても、自宅を遺す必要がないならば、有効な対策となるでしょう。
 

アドバイス3 リタイア後は社会の関わりを意識する

早期リタイアは資金的な不安がもっとも大きいでしょうが、ご相談者の場合、他の部分に目を向けるべきです。ひとつは健康。これは老後生活を豊かにするための前提条件です。健康管理には十分気を配ってください。

そしてもう一つが、社会との関わりです。それがストレスを生むことはもちろんありますが、リタイア後、社会とのつながりがなくなってしまい、ただ一人で生きているというのであれば、それもまた問題です。ケースによっては、健康を害する可能性すらあります。

その意味で、先に触れた退職後のアルバイトは、収入以外にも社会との関わりを持つというメリットがあります。もちろん、働くこと以外で接点を持っても構いません。すでにそういう点は考えられているでしょうが、とても重要な部分だということは認識しておいてください。

最後に個人型の確定拠出年金(iDeCo)を活用すべきかどうかですが、してもいいとは思いますが、在職期間が2年なので所得控除のメリットも2年分しか受けられません。上限である月2万3000円を掛けて節税となる額が年間5、6万円といったところでしょうか(口座管理等のコストを考慮せず)。

また、投資による売却益や配当が非課税になる恩恵を受けたいなら、NISAの方が選択できる投資商品も多く、投資額も大きい点で有利だと思います。また、最大5年間という利用期間も、54歳という年齢であればiDeCoの方が有利とも言えないでしょう。


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん 
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ




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