ただし街選びにおいては、一戸建ては集合住宅以上に注意が必要である。以下具体的に注意したいポイントを見ていこう。
地震などの災害の影響が大きい一戸建て。地盤の確認は必須
まず、気にしたいのが防災。マンションと比べると一戸建てのほうが影響を受けやすいためである。そこで、これという物件があった場合にはその土地が台地、丘陵上にあるのか、低地にあるのかを「土地条件図」からチェック。その上で現地では台地。丘陵上にあったとしても周囲から見て低くなった土地ではないかを周囲を歩いて確認してみたい。■土地条件図のチェック方法:地理院地図から主題図を選択、その中から土地条件図を選択して確認する
また、同時に不動産会社に地盤調査の結果を聞き、地盤改良をしているのであればどのような方法で行ったかなどを質問したい。説明を聞いても分からないと思う人もいるだろうが、きちんと行われており、それを説明できる人がいるなら、基本、ある程度信頼できるはずだ。
東京カンテイの「マンション・一戸建て住宅データ白書 2016」で一戸建ての供給戸数が多かった地域のうちで川口市、松戸市、船橋市、市川市、足立区などは低地も広がるエリアなので、注意が必要だ。
擁壁のある造成地の場合には同様に、いつ、どのような工法で作られたかを聞こう。もし、古い擁壁の場合には劣化していないか、ひびが入っていないかなども要確認である。
■参考記事:「歩いて、見て知る危険な擁壁」
もうひとつ、災害を考えると周囲の道路幅も見ておきたい点。建築基準法的には4mあれば良いことになっているが、道路からあまり後退せずに2階建てがある場合には4mでは倒壊した家屋に道を塞がれ、避難できないこともある。周囲の建物が倒れたり、火災にあった場合にその影響を強く受けることがないか、注意したいところだ。
一戸建ての分譲地ではよく見かける、敷地延長(旗竿地、路地状敷地などとも。敷地が道路に接していない場合に、敷地と公道をつなぐ部分に配される細長い道路上の部分が竿、路地のように見えるため)の場合にはメリット、デメリットをよく検討のこと。
メリットとしては価格的に割安、奥まっているために静か、通路部分を駐車場に充てられるなどがあるものの、災害時に通路を塞がれると避難しにくい、周囲を家に囲まれているために採光、通風が確保しづらい、売却時に不利になることがあるなどなど。価格だけで判断しがちだが、それ以外にも考慮すべきことがある。
マンションに比べて駅から遠くなる分、利便性は要確認
マンションに比べると、一戸建てではどうしても駅からの距離は遠くなりがち。そこで注意したいのが利便性。足回りで特にバス便利用の場合が要注意。始発、終バスの時間、通勤時間帯の本数、料金などをチェック、我が家の暮らしに合っているかを確認しておきたい。地域によってのバス利便性には差があるからだ。ちなみに、首都圏で個人的にお勧めなのは西武沿線。西武バス、中央線と連動した移動に便利な地図を作製しており、住む人に親切なのである。2016年時点では同沿線にある練馬区、川越市での一戸建て供給も豊富なので、検討の余地はあろう。
足回りでは坂の有無も気になるところ。駅から遠いから自転車利用でと思っても、急な坂のある地域では自転車利用はかえって大変なこともある。一戸建て供給の多い町田市、八王子市は坂が多いエリアもあるので、電動自転車利用などを考える必要があるかもしれない。逆に越谷市や春日部市のように比較的平坦な街では多少遠くても自転車利用が苦にならないというメリットもある。
自転車利用を考える場合には駅近くの駐輪場事情も見ておきたいところ。自治体が整備しているケースもあるが、個人経営の駐輪場に預けざるを得ないケースもあり、料金にも幅がある。また、雨天の際にはバス便を利用することになるとしたら、混雑度なども見ておきたい。
利便性では買い物の利便性もポイント。首都圏では駅近くに商店街があることが多く、駅から離れるとスーパーなどの大型商業施設が中心になりがち。車、自転車利用で行くことになる可能性が高いので、その場合の行きやすさ、駐車場の利用しやすさなどをよく確認しておこう。
また、郊外では駐車場2台分がスタンダードな地域がある。そうした場所で駐車場が1台分の住宅を買ってしまうと、後日売りにくいこともある。周辺を見て、不利になる条件になっていないかを考えておこう。
自治体との関係も忘れてはならないポイント
駅から遠い立地の場合、もうひとつ、気になるのがどの自治体に属するかという点。最寄り駅周辺と住宅が立地する場所が属する自治体が異なるケースもよくあり、せっかく駅近くに支所が設けられていても利用できないことも。特に子どもの小さいうちや高齢者のいる家庭では自治体サービスを利用することは多々想定される。近所に保健所があっても、それが利用できないのでは不便。地図をよく見て、自分たちが頻繁に利用しそうな施設がどこにあるか、それが実際に利用できるかなどを自治体ホームページなどから事前に調べ、そうした不利を蒙らないようにしたい。
また、そもそも自治体間でサービスが異なるのはよく知られた話。特に子どもの医療費助成では東京23区と多摩エリア、他県とでそれぞれに違いがある。とはいえ、子どものためには医療費以外にも様々なサービスがあり、しかも、ある時期はA市がお得でも、大きくなるとB市がお得という例もある。過度に評価する必要はないが、チェックは必要である。
街の話とは離れるが、一戸建てチェックで意識して欲しいのは水回りの位置。たいていの建売住宅では洗濯機置き場が1階、洗濯物干し場が2階となっているが、率直なところ、これは使いにくい。洗濯物以外でも家事動線、つまり使い勝手を考えて作られているかどうかは家自体の出来のバロメータになる。実際に使うつもりで動きを想定、使いやすい家かどうかをイメージし、そこで判断していただきたいものである。
要点チェック
- 地盤の確認は必須。その土地が台地、丘陵上にあるのか、低地にあるのかを「土地条件図」からチェックする
- 不動産会社に地盤調査の結果を聞き、どのような方法で行ったかなどを質問する
- 火災等があった場合に道を塞がれることがないか、周囲の道路幅なども注意する
- 旗竿地などの敷地延長の場合、価格的に割安だが、通路が塞がれて避難しにくいなどのデメリットも考慮する
- 駅からの距離が遠くなる分、バス便の本数や料金、または自転車での通いやすさなど、足回りの利便性を確認する
- どの自治体に属するのかによって利用できるサービスが異なる。特に子育て世代は自治体ホームページなどを要確認
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