病院で医師が作成する「診断書」とは
診断書には、官公庁に出すべき診断書と職場や学校などに出す診断書があります
診断書は医師の診察を受けて発行してもらうもので、ある程度の形式があるものの、決まった形はありません。記されるのは、主に診断名とその内容になります。
また、「死亡診断書」または「死亡検案書」、「出生証明書」または「死産証書」などは、決まった用紙に記載することになります。これらの死亡診断書または死亡検案書が無い状態で、死体を動かしたり運んだりすると、刑法190条の死体遺棄罪に抵触してしまう可能性すらあるのです。その点でも診断書はとても重要なものです。
一般的に、皆さんに馴染みのある診断書は、職場や学校、官公庁、保険会社などに提出する際に作成してもらうことが多いでしょう。生命保険や入院保険に加入している患者さんの場合、事故や病気の後で保険金を請求するために、診断書が必要となり、加入している保険会社によって決まった診断書を医療機関に渡して書いてもらうことになります。
官公庁に提出するケースでは、障害者の程度などの年金関連の診断書や介護保険関係の主治医意見書があります。
虚偽・偽造・仮病…診断書の信用性を保つために
時折、悪用のニュースもある診断書ですが、その内容の信用性を高めるために、以下のような定めが刑法で決められています。- 医師の守秘義務(刑法第134条)と患者さんのプライバシーから診断書は本人に対して作成されます
- 官公庁に提出する虚偽診断書(死亡診断書など)等作成すれば、刑法第160条より3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金になる
- 診断書には印鑑があるので、有印私文書になりますが、その診断書を偽造したり、変造したりすると、刑法第159条により3月以上5年以下の懲役となる
- 偽造、変造された診断書を官公庁に提出したり、保険会社に提出したりすると、刑法第161条により、官公庁に提出する虚偽診断書では3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金、診断書では3月以上5年以下の懲役となる
仮病で診断書をもらうことはできる?
結論からですが、仮病で診断書をもらうことはできません。仮病は、まず病名自体が虚偽ですから、仮病で作成された診断書は「虚偽診断書」になります。これは明らかに刑法違反になります。患者さん側がいくら希望しても、医師が仮病であると判断した時には、正当な事由ということで、診断書の発行を拒否することができます。さらに、本当で病気であるかのような演技をして医師に誤った診断をさせて診断書を作成させた場合、法律上医師を使って偽造したことになります。診断書をもらった時点で、刑法第159条に該当することになります。さらにそれを提出すれば、刑法第161条にも違反することになります。
休職などのための診断書偽造がばれるとどうなる?
処罰の対象になります。偽造された診断書を提出すれば、上記の刑法第161条に抵触することになります。また、虚偽の申告によって、診断書を作成させた場合でも、医師を通じて自ら偽造したことにもなります。休職時にその対価をもらおうという意思があれば、- 刑法第246条において、人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
なお、懲役3年を越えると、刑法第25条により執行猶予すらつきません。
何よりも会社などの組織に虚偽の申告をすれば、組織からの処罰があると思われます。
診断書の料金・費用の目安
診断書は医療機関によって、自由に診断書の料金を決めることができるために、費用は様々です。2012年に参労総合研究所による医療文書作成業務・文書料金実態調査では、医療機関独自の診断書は比較的、簡略化したものでは平均2337円(1000~5250円)、複雑なものでは平均3665円(1000~10500円)でした。厚生、国民年金診断書は平均5753円(1050~12600円)、年金現況届は平均5167円(500~12600円)となっていました。介護保険関係の主治医意見書は平均5125円(1050~5250円)でした。保険会社関係では、所定の診断書は平均4841円(1050~10500円)、所定の後遺障害診断書は平均5837円(2100~12600円)、交通事故関係での自賠責診断書は平均4763円(1500~10500円)となっていました。診断書は記載しなければならない部分が多くなるだけで、料金が高くなっています。
地域によっても異なり、比較的、簡略化した医療機関独自の診断書の費用は、九州で低く、関東が高いとされています。保険会社関係の所定の診断書の費用は、近畿で低く、関東で高くなっています。
さらに、これらは2012年当時の調査に基づくものです。2009年にも一度行っていますが、それと比較するとすべて増加傾向でした。そのため現在では、さらに費用が上がっている可能性が考えられます。
各診断書の記載事項・内容
上記でも少し触れましたが、書式の決まっている診断書の場合、提出に必要な記載事項が記載されることになります。資格取得、入学、就職に必要な診断書の場合、健康であることが記載されます。一方、病気の診断書の場合は、診断名、現状、その病気についての治療、治療見込み期間、安静の有無、入院の有無、休学や休職の必要性、後遺症の有無、後遺症の回復の見込みや期間などが記載されます。診断名が不明な場合は、診断書作成が困難なこともあります。
病院の場合は入院患者さんが多いので、生命保険を受け取るための診断書作成が多いですね。また、病院の診断書には公印が押され、確かに病院が発行していることをはっきりと示すことが多いです。
いずれの場合も有料である診断書。何となく作成してもらったものの提出の必要がなく無駄だったということがないように、作成前に職場や学校、官公庁、保険会社などに本当に必要かどうか、内容はどういったものが記載されていなくてはならないのかを確認するようにしましょう。