「交差点という立地をどう考えていますか?」コーヒーロースター4軒のオーナーに質問してみました
魅力のある街には必ず優秀なコーヒー店が存在し、街の磁力を強めているものです。とりわけ交差点に面した店舗は、たとえ小さくてもコーヒー好き、カフェ好きにとってはその街のランドマーク的存在。今回の記事では、交差点に面したロースタリーカフェの素晴らしい名店4軒をご紹介します。いずれもおいしいスペシャルティコーヒーを焙煎・販売するお店ですが、その味わいも、お店の空気感もオーナーの個性も各人各様。それぞれが多くのファンに支持されています。
小さなお店を人気店へと成長させてきたオーナーの方々に、以下の2つの質問を投げかけてみました。
・交差点という立地
・2017年の抱負
4人はどのように答えてくださったでしょうか――。
猿田彦珈琲 恵比寿本店(恵比寿)
2011年のオープンから季節が2つか3つ移った頃、オーナーの大塚朝之さんにインタビューさせていただいたことがあります。「物件を借りたら手元に5千円しか残らなかった」
「友人たちに交通費を借りたり内装工事を手伝ってもらったりした」
そんな言葉が今や遥かな昔のことに思えるほど成功を収め、全国に広く知られる人気店となった猿田彦珈琲ですが、現在もその真摯さとホスピタリティは変わりません。
猿田彦珈琲 恵比寿本店(サルタヒココーヒー エビスホンテン)
東京都渋谷区恵比寿1-6−6
【TEL】03-5422-6970
【OPEN】8:00 - 24:30、土日祝10:00 - 24:30
【CLOSE】無休
猿田彦珈琲・大塚朝之さんに聞く
【交差点】
猿田彦珈琲本店が所在する、恵比寿で2番目に知られている五叉路の一角。その五叉路にはもっと目立ったお店がたくさんありますが、その中でも洞窟のように小さく佇むのが猿田彦珈琲です。
人が洞窟に入りたくなったり、何があるのか興味が湧くように、一度、人が止まっては辺りを見渡す五叉路に、隠れ家のような洞窟がある。そんな不思議な立地に猿田彦珈琲があることは、たくさんのお客さまに関心を持って頂くいい機会になっていったのではないかと僕は推測しています。そんなふうに、お客さまの深層心理にフックする場所だったように思うのです。
一方、働く私たちにとってもこの五叉路は特別な時間を与えてくれました。流れるような人の生き行く姿を、ほんのちょっと俯瞰して眺められる。立ち止まることを嫌うこの東京で、真っ昼間からコーヒーを片手にゆっくり五叉路を眺められるその風景は、自分が何者なのか地に足をつけて感じることのできるそんな特別な時間でした。コーヒー屋としての心意気を感じる特別な瞬間でした。今もたまにそこに立ってはその風景を眺めていると、創業した頃の大きな不安と、振り絞ってやっと出てくるくらいのちっぽけ勇気を思い出さずにはいられません。
【2017年の抱負】
今年は私たちにとって、1つの区切りになる集大成をお見せできたらいいなと考えております。その一つとして複数の焙煎機を置いた150坪の大型店舗を秋頃にオープンさせる予定です。私たちの実直な姿をお見せするような、何も包み隠すことのない、いわば猿田彦珈琲のありのままの姿を楽しんでもらえるようなお店になります。
ARISE COFFEE ROASTERS(清澄白河)
日本各地はもとより、海外からも観光客やコーヒー業界の人々が訪れる清澄白河の強力な案内役。コーヒーのおいしさと、オーナー・林大樹さんの日々の出来事を面白がる視線と気骨とメタル魂が多くの人々を惹きつけ、唯一無二の空間に。ARISE COFFEE ROASTERS(アライズコーヒーロースターズ)
東京都江東区平野1-13-8
【TEL】03-3643-3601
【OPEN】10:00 - 18:00
【CLOSE】月曜日
ARISE COFFEE ROASTERS・林大樹さんに聞く
【交差点】
物件探しにあたって、交差点の角地は良い条件と捉えていました。「店の前に駐車できないのは不便だ」と指摘する人もいましたが、焙煎の排気の面では利点です。
窓を大きく設けているので、店内にいる僕にとっては交差点の風景がスクリーンのように映ります。一日の中で朝、昼、夕方と、道行く人々が移り変わるのが見られる。地元の老人たち、ビジネスマン、スーツケースを持ったツーリストなど、眺めていて退屈しません。
店に入ってきそうな人はなんとなくわかります。どこの国の人か目星をつけて訊ねてみると、だいたい当たります。「なぜわかった?!」と聞かれますが、いま、台湾や韓国から訪れるバリスタが多いんです。
【2017年の抱負】
人生で一度も抱負というものを掲げたことはないんですが、今年だけはあります。英語を学ぶ(笑)。毎日、海外からの多くの人が訪ねてきて、拙いブロークンイングリッシュで対応していますが、勉強しないといつまでも間違った表現をするし、語彙も増えない。
昨年3月にタイ・バンコクに焙煎を教えに行った際には、外語大出身で英語に不自由しないスタッフの松本を通訳として連れていきましたが、彼をはじめ、店の常連客にも英語の得意な人々がいて助けてくれるので僕が成長しません(笑)
コーヒー豆は言葉を必要としないツールで、海をこえて独り歩きします。うちで豆を買っていったバリスタが自国に戻って、同業者たちとカッピングして気に入ってくれたりして、口コミの連鎖で海外から次々にお客さまが来店するんです。そういう人たちに、もっと複雑なことも英語で伝えたい。
GLITCH COFFEE&ROASTERS(神田)
ポール・バセットのバリスタを率いて活躍してきた鈴木清和さんが自らのコーヒーを極めるために独立して開いた店舗は、喫茶店の聖地・神田のイメージをスタイリッシュに更新。先鋭的な焙煎に国内外のコーヒー好きから熱い視線が注がれています。今後の動向にも目が離せません。GLITCH COFFEE&ROASTERS(グリッチ コーヒーロースターズ)
東京都千代田区神田錦町3-16 香村ビル1F
【TEL】03-5244-5458
【OPEN】7:30-20:00、土日9:00-19:00
【CLOSE】不定休
GLITCH COFFEE&ROASTERS・鈴木清和さんに聞く
【交差点】
1.交差点にあり光も差し込む、空気も循環する、働いていて見晴らしが良いことで、空間だけでなく外の景色も含めて店舗の一部分となる。
2.認知度も上がります。
3.一番はスタッフの働きたいと思う環境になるという点が大きいです。
【2017年の抱負】
1.海外のフェスの出店やスタッフの海外派遣などで、さらに海外にアプローチを図りたいと考えております。
2.GLITCH COFFEE&ROASTERSの各個人が活躍する場を提案し提供できるように考えています。
3.今回のcoffee collectionは内容をアップグレードして、さらに多くの方が楽しめる、拘りある企画を計画しています。
THE FIVE BEANS(葉山)
THE FIVE BEANS(ファイブビーンズ)神奈川県三浦郡葉山町一色2037
【TEL】046-876-1269
【OPEN】11:00-17:00
【CLOSE】火曜日+第2・4水曜日
豊かな緑に抱かれた葉山御用邸の正面に位置する、たった2坪の素敵なコーヒー豆販売所。コーヒーの味わい、オーナー・森嵜夫妻のお人柄、ゆったりした街を吹いてゆく風と光。なにもかも非常に気持ちのいいお店。焙煎はすぐ近くの古い家屋で行っています。
コーヒー選びに迷ったら気軽に相談してみてください。楽しく言葉を交わしているうちに、イメージが浮かんでくることでしょう。おいしい一杯が抽出されたら、立ち飲みまたは外のベンチでどうぞ。
THE FIVE BEANS・森嵜健さんに聞く
【交差点】
普通のお店よりも人との出会いが多い場所。しかしどんなお店であれ、いろいろな所から人が集まってくるので、交差点のような場所だと思います。うちの場合はコーヒーを求めて来る方々の交差点。
ファイブビーンズはお店自体はとても小さいのですが、ガラス窓が大きいので内側からの見晴らしが想像以上に良いです。歩行者に限らず、車の方、知り合いはもちろん、知らない人とも目が合えば店内から挨拶を交わしていますよ。
【2017年の抱負】
コーヒーを通してみんなの笑顔のお手伝いをすること。「笑う門には福来たる」を実践します。
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