所沢が魅力的なコーヒータウンに

2016年に所沢にオープンした3軒の魅力的な自家焙煎コーヒー店をご紹介します。コーヒーの方向性はそれぞれ違えど、いずれも開業までに少なからぬ年月に渡ってコーヒーの研鑽を重ねてきた、実力あるお店たち。所沢が一躍、充実のコーヒータウンに変身した感があります。

LIMENAS COFFEE(リメナスコーヒー)、bib coffee(ビブコーヒー)、kieido(キエイドウ)。3店に共通するのは地元のお客さまを大切にする姿勢と、独力で凛として我が道を探究していく一匹狼的なスピリット……いや、彼らの柔らかで親しみやすい身ぶりは、オオカミという言葉では怖すぎますね。「一匹犬」のような3軒は、いずれも所沢駅の西側に位置しており徒歩圏内。のんびり散歩しながらお楽しみください。


LIMENAS COFFEE(リメナスコーヒー)

コーヒー豆のアロマを嗅ぎくらべて、好みの一杯を注文

コーヒー豆のアロマを嗅ぎくらべて、好みの一杯を注文


所沢エリアのスペシャルティコーヒーの牽引役として期待大のリメナスコーヒー。窓辺に陽光の踊る小さな空間は、かつては幼児向けの英語教室。その雰囲気を残しつつリノベーションした空間には楽しげな色彩と植物が溢れています。

気軽に扉を開けて入っていけるその佇まいから、なんとなく可愛い軽自動車に乗ったようなつもりでいると、これがとんでもなく高性能のスポーツカー。痛快な速度で新しい味覚の王国へと連れて行ってくれるのです。

スペシャルティコーヒー豆を焙煎、販売するリメナスコーヒー

リメナスコーヒーの目印は黄色い扉


私がお店を訪れたのは10月最初の晴れた日曜日、うっすら汗ばむほどの陽気でした。勧められた冷たいエスプレッソ&ソーダはめざましい美味! 豊かなコーヒーの香味、弾けるソーダの爽快さ。その一杯で唸ってしまったのです。

オーナーにしてローストマスターの元明健二さんも店長の齋藤浩基さんも、コーヒーの国際資格であるQグレーダーの持ち主。初歩的な質問から専門的な質問まで、にこにこしながら答えてくれます。

しかし店内にはスペシャルティコーヒーのスの字もなく、数種類のコーヒー豆のアロマを試せるコーナーには生産国のみが記されており、農園名などの詳細はあえて表記されていません。

店舗は所沢保育園・小学校の向かい

店舗は所沢保育園・小学校の向かい


「ここは地元の皆さまにスペシャルティコーヒーを味見していただく場所。飲み慣れない人に過剰な説明をしても『ふーん』で終わってしまう。本能的においしいと感じる感覚は、ヒトのDNAに刻まれた体に良い食べ物を求める能力。それを刺激しながら、コーヒーの未知のおいしさを知っていただくための部屋です」

元明さんはそう語ります。ハードルを高くしないおかげで、子ども連れの女性も若いカップルも気おくれせずに店内でコーヒーを楽しんだり、テイクアウトしたりしていきます。

エスプレッソマシはスイス製のJURA(ユーラ)。「豆のキャラクターが素直に出る」と元明さん。

エスプレッソマシはスイス製のJURA(ユーラ)。
「豆のキャラクターが素直に出る」と元明さん。


元明さんは所沢市内の焙煎アトリエでディードリッヒ12kgの焙煎機を使ってローストを行っています。前職では食品会社の研究所で商品開発を担当し、フレーバリスト=調香師として活躍。コーヒー業界での研鑽も重ねてきました。

「コーヒーは香りのバランスが大切。良いコーヒーも悪いコーヒーも、膨大な化合物の組み合わせのちょっとしたバランスの違いでしかない。いかにそのバランスをとるかが難しい」

コーヒー豆を購入したお客さまができるだけ長期間に渡って楽しめるよう、風味の劣化を遅らせる工夫をした焙煎。おいしいラテのために、ミルクの魅力もコーヒーの魅力も活かす焙煎。

「お店の都合による焙煎ではなく、常にお客さま本位の焙煎をしたいと考えています」

「きのう感激したのは、おいしいデカフェを探していた妊婦さんが『これなら飲めます!』と喜んでく れたこと」と齋藤さん。

「きのう感激したのは、おいしいデカフェを探していた妊婦さんが『これなら飲めます!』と喜んでく れたこと」と齋藤さん。


店長の齋藤さんは学生時代から趣味で焙煎を始め、青梅の自家焙煎珈琲店「ねじまき雲」に出会ってコーヒーの世界へさらに深く惹き込まれていき、食品小売会社のコーヒー研究室に就職。無類のおいしいもの好きです。

「おいしいものに出会うと、『生きててよかった』と思えるタイプです(笑)まだまだ知らない世界があるなって。理想のフレーバーについて考えることはいろいろありますが、何よりお客さまに提供したいのは、一日の励ましになる、嬉しい気持ちになれるコーヒー。ひととなりの見える一杯を目指しています」

この強力な二人の探究は、季節感たっぷりの楽しい一杯、新しい発見と驚きのある一杯を次々に生み出していくようです。

shop data

LIMENAS COFFEE(リメナスコーヒー)
【住所】埼玉県所沢市寿町10-8
【TEL】04-2009-1028
【OPEN】10:00~19:00
【CLOSE】木
【MENU】
ドリップコーヒー各種 300円
エスプレッソ 300円
カフェラテ 350円
エスプレッソ&ソーダ 350円

 
 

bib coffee(ビブコーヒー)

店名のbibは「be in bloom」(花咲いて)の略

店名のbibは「be in bloom」(花咲いて)の略


4坪に満たないシンプルで洗練された空間に、小さな驚きと美しい詩情が潜んでいる不思議なお店です。いかにも現代のコーヒースタンドらしい店構えながら、30代に入ったばかりの店主、中村さんのコーヒーの原点は、今はなき吉祥寺の名店「もか」の深煎りネルドリップ。週に一度の定休日に長距離バスに乗り、長野県の実家で焙煎をおこなっています。

bib coffee

bib coffee


メニューはひとつひとつ、お客さまの視点を大切にしながら思考を重ね、じっくり吟味してから登場したもの。しかしながら、ここは決して「違いのわかるコーヒー好き」が静寂の中でコーヒーを嗜むための聖域ではなく、誰でも通りかかったついでに気軽に立ち寄れる場所なのです。中村さんがドーナツドリッパーを使ってコーヒーを抽出する光景を、少年がジュースを飲みながら興味深げに眺めていたりもします。

bib coffee

bib coffee


窓ガラスに綴られている “You’ll never find a flower if you’re looking up.” は、チャップリンの名言 “You'll never find a rainbow if you're looking down.” のビブコーヒー的逆説。名優は「うつむいていては虹をみつけられないよ」と語りましたが、ビブコーヒーはうつむきながら足元に咲く小さな花をみつようとしているようです。

shop data

bib coffee(ビブコーヒー)
【住所】埼玉県所沢市東町13-29 H-CUBE東町1G
【TEL】04-2968-7956
【OPEN】10:00~18:00
【CLOSE】木、第1・第3金
【MENU】
ドリップコーヒー各種 350円
デミタスミルク 400円
紅茶 350円
信州産りんごジュース 350円
スイーツ各種


kieido(キエイドウ)

kieido

kieido


入口を入ってすぐにコーヒー豆販売コーナーがあり、奥に細長いカウンター席が伸びています。kieidoは店主の寺内さんの30年に及ぶ独学のネルドリップ探究と、15年にわたる焙煎探究が結実したお店。「研究職出身の研究オタクですから」と笑いますが、その目指すところはコーヒーが飲めない人にも愛される、まろやかで優しさ溢れるコーヒー。

カウンター席でも緊張しないのは、視界の大半を占めるコーヒー豆のガラス瓶の列のおかげ。お客さまが店主と顔をつきあわせて気まずい思いをしないように設計されており、それでいて、会話を楽しみたければ気軽に言葉を交わせる距離感。

「最初の一杯が気に入ってもらえなければ、二度と来店していただけない」と寺内さん。味にも居心地にも、安心して楽しめるようにという心遣いが感じられるのです。
コーヒーのおいしさそのままのコーヒーゼリー

コーヒーのおいしさそのままのコーヒーゼリー


kieidoで人気を博す名物は3つ。基本のブレンドコーヒー3種と、「食べるコーヒー」とでも呼ぶべき美味コーヒーゼリー。プレーンのコーヒーゼリーと、アイスクリーム添え用のコーヒーゼリーの2種類を、わざわざコーヒーの味を変えて作るという徹底したこだわり!

kieido

kieido


そして近ごろリピーターの間で有名になっているお遊びが、店内に置かれた幸運を呼ぶおまじないのオブジェ。あるお客さまが言い始めたことから評判になり、話を聞いた人が冗談まじりにオブジェに触っていくと「小さな幸せがやってきた!」という楽しい報告が相次いでいるそう。知りたい方は来店時に店主に訊ねてみてください。

shop data

kieido(キエイドウ)
【住所】埼玉県所沢市日吉町7-6
【TEL】04-2925-7757
【OPEN】11:00~19:00
【CLOSE】第2・第4月
【MENU】
ネルドリップコーヒー各種 300円
カフェオレ 350円
コーヒーゼリー 400円
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。