フィデリティ・USリート・ファンドとは?
フィデリティ・USリート・ファンドのポートフォリオ・マネージャー、スティーブ・ビューラー氏
インタビュー内容を紹介する前に、フィデリティ投信の「フィデリティ・USリート・ファンド」について簡単にご紹介しておきましょう。
為替ヘッジなしのBコースは純資産総額が最も多い投資信託
フィデリティ・USリート・ファンドは、2003年12月9日から運用されています。米国REITを投資対象とし、為替ヘッジがあるAコース、同ヘッジなしのBコースがあります。ヘッジなしのBコースは純資産総額が最も多い投資信託です。投資対象銘柄は、個別リートの綿密な調査・分析によるボトムアップ・アプローチを基本として、不動産市況やセクターごとの需要・供給などのトップダウン分析を考慮し、ポートフォリオは構築されています。
毎月の分配金は、2017年1月の決算期では1万口あたりAコースが60円、Bコースが70円支払われています。
※出典・フィデリティ・USリート・ファンド2016年12月14日発表の目論見書より抜粋
長期金利の上昇は必ずしもREITに向かい風とはならない
昨年11月分配金が減額された背景は、分配金利回りが高くなりすぎたためで、過去の分配金の見直しと同じスタンスで実行したに過ぎないようです。今後も、投資対象のREITからの配当金収入のほか、非実現の売却益等も勘案しながら、分配金は増額することも、減額することもあり得るとのことでした。今後の米国REITの見通しに関しては、長期金利がトランプ大統領当選後に急騰しました。長期金利の上昇はREITには短期的にはネガティブ材料ですが、中長期ではネガティブ材料とはいえないようです。2016年は長期金利とREITの価格は反対に動いたものの、1993年から2016年までの23年間、長期金利の上昇局面は合計11回ありました。その間、米国REITのトータル・リターンがマイナスになったのは、3回に過ぎず、平均ではプラス14%の収益を確保しているのです。
その背景は、長期金利の上昇は景気が拡張している局面なので、REITも賃料の改善、REIT価格(不動産価格)の上昇等、ファンダメンタルズの改善が見込まれるため、結果としてプラスに働くことが多いそうです。GDP(国内総生産)の成長=不動産市場全体も改善が続く傾向にあるようです。
ただし、REITのファンダメンタルズの改善は経済成長率に伸びに対して遅効性があるため、経済成長率が高まった時は、REITよりも株式が先に買われる傾向強いようです。長期金利の上昇で注意したいのは、資本調達コストの上昇となる点はネガティブ材料といえるとのことでした。
米国REITは割安局面にある
現在の米国REITはやや割安感があるそうです。NAV(純資産)に対して平均約3%プレミアム(割高)で取引されてきたのに対し、現状では5~10%ディスカウント(割安)の状態で取引されているからです。株式に例えれば、PBR1倍割れという状況です。また、米国商業不動産の新規供給は低水準で推移し、かつ急速に供給が高まることはないため、商業不動産の需給は引き締まった状況が続く模様です。ただ、ホテル、住居の供給は戻り基調にあるそうです。ファンダメンタルズの改善を受け、2017年も米国REITのFFO成長率を7.5%と予測しています。FFOとは、REITが本業である不動産賃貸業から得るキャッシュフローのうち、投資家に配分可能な金額を示すもので、REITの収益力を測る指標として使われています。
注意したいのは、米国REITのファンダメンタルズは良好に推移していますが、成長速度は緩慢なようです。ほとんどのタイプ、都市では需要が供給を上回っているものの、賃料は伸び悩む可能性があることです。
ただ、市場が株価を通じて示すREITの保有不動産に対する要求利回りである、インプライド・キャップ・レートと10年国債の利回りの差は足下290ベーシスポイントあります。この数値が100ベーシスポイントを下回ると大きな調整があると言われますが、現状では190ベーシスポイントバッファーがあるため、長期金利の上昇を織り込みつつあると考えられるようです。
最後に、個人投資家にとって気になる為替の見通しを聞いたのですが、為替は範疇外なのでお答えできないと言われました。とはいえ、為替は様々な要因で動き、またボラティリティが大きいことは否めない、純粋に米国REITの収益を取りに行くのであれば、フィデリティ・USリート・ファンドには、為替ヘッジあり(Aコース)もあります。
過度にリスクを取るよりも、そちらに投資した方が良いでしょうね、と言われましたことを記しておきましょう。