子育て/育児ストレス解消法

子育てにイライラした時の心をしずめる処方箋

子どもがちっとも言うことを聞かない。はじめは優しく諭していたけれど、だんだんイライラしてきて、つい怒ってしまう。そんなことはありませんか?

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

思うようにならない子育て

寝顔

どうしてあんなにイライラしちゃったんだろうと、子どもの寝顔を見ながら思うとき、色々な思いが消化できなくて、疲れすぎているのかもしれません。

子どもがちっとも言うことを聞かない。朝からダダをこねる。何度注意しても同じことを繰り返す……。はじめは優しく諭していたけれど、だんだんイライラしてきて、つい大きな声を出してしまう。きつい言葉で叱ってしまい、怒りすぎたと後から自己嫌悪。そんなことはありませんか?


「叱る」と「怒る」

「叱る」と「怒る」は違う、ということを聞いたことがある人も多いと思います。

「叱る」とは、子どもの不適切な行動を改めさせるために、冷静に指摘し、改善を求めること。一方、「怒る」とは、親が気に入らない行動をとった子どもに、感情をぶつけること、といった感じで区別されています。

今、自分は子どもを叱っているのか、怒っているのか。それを意識するのは、怒りがエスカレートすることを避けるためのひとつの方法です。

でも、親といっても人間ですから、子どもの行動に腹を立てて怒ってしまうことは当然ありますよね。日々子育てに格闘していると、いつも冷静沈着に「叱る」だなんて、神業のように感じます。


無視した怒りは暴走する

いつもプリプリ怒っている人より、いつもおだやかな人の隣にいたいもの。しかし、怒りは「喜怒哀楽」という人間の基本的な感情に数えられる、フツーの心の動きです。

あまり怒らない人というのは、自分の怒りを適切にコントロールできている人か、自分の怒りをコントロールする自信がないために、無理やり封印して誤魔化している人のどちらかではないでしょうか。

自分の感情が、自分の意思とは無関係に暴走してしまうのではないか。自分の怒りが、これまで築き上げてきた大切な人間関係の何もかもを破壊してしまうのではないか。そう思ったら怖いですよね。

しかし、怒りは自然にわき起こる感情ですから、いくら「なかったこと」にしたとしても、適切に処理されない限り、心の中に溜まっていきます。澱のように沈殿した怒りは、いつしか「発酵」して、憎しみや恨みといったものに変質していくものです。また、そういう自分を責めたり、自己嫌悪に陥ったり、そうしたことも出てきます。


怒りは「シグナル」

でも、怒りは、自分の安全や尊厳を守るための「シグナル」の役目を持っています。

歩き煙草をしている人に腹が立ちませんか? 車を運転していて無理な割り込みをしてくる人にイラッとしませんか? それは、子どもや自分の「安全」が脅かされたと感じたから、怒りの感情が出てくるのです。

また、「話していると、なんだかイライラする」人っていませんか? 冗談っぽく言われたので、その場では流したけれど、家に帰ってきて相手の発言を思いだしたら怒りがこみ上げてきた、なんて経験は?

それは、自分が傷ついていると、怒りが教えてくれているのです。


怒りの奥にある感情に気づこう

怒りは「二次的な感情」だと言われています。つまり、怒りの奥をのぞき込むと、必ず別の感情があるということです。「怒りには別の感情が必ずくっついている」と言ってもいいかもしれません。

「安全」が脅かされた時の怒りにくっついている感情は、「傷つけられる!」という『恐怖』かもしれません。とんでもないことになるのではないかという『不安』や、相手の傲慢さに対する『見下し』もあるかもしれません。

「尊厳」が脅かされたと感じたときの怒りには、人によって大きく違う、様々な感情がくっついています。甘く見られたという『悔しさ』や、大切に扱われなかったという『悲しさ』、「どうしてわかってくれないんだ!」という『寂しさ』など。相手に対する『嫉妬』や『見下し』が潜んでいる場合もあるでしょう。自分が嫉妬していたり、自分が見下している相手に「バカにされた!」と感じたら、『屈辱感』から、余計に腹が立つものです。

では、子どもが思うように動いてくれなかった時に感じる『怒り』の奥には、どんな感情があるのでしょうか?

「なんでもっと早くできないの!」と怒るときには『焦り』が怒りという形で出ることが多いようです。「何度も言ったのに、理解されなかった」という『悲しさ』や『無力感』、この子はこの先大丈夫だろうかという『不安』や『心配』もあるかもしれません。「この子はわざと反発している? 嫌われている?」と思って『不安』になって、『寂しさ』がワーッと押し寄せてくる、なんてことも。


怒りの矛先を間違わない

「怒りすぎた」と感じる時、私たちは、怒りの奥にある感情に支配されていることが多いものです。

親は、子育ての中で色々な「未消化の感情」と対面します。自分の子どもの中に、かつて子どもだった自分自身を見てしまうからです。

「私は、もっと親のいうことを聞いていた」という気持ちがあった場合、怒りの奥には、勝手気ままな我が子に対する『うらやましさ』があるかもしれません。あるいは、自分自身の親に対して、「こんなふうに育ててほしかったのに」という『悔しさ』や、そのことをわかってもらえなかった『悲しみ』や『寂しさ』が眠っているかもしれません。

子育てを丸投げしてくる夫へのイライラがある場合、その怒りの奥には、自分の大変さをわかってもらえないという『孤独感』や『やるせなさ』といったものもあるのかもしれません。うまく子どもを育てられていないと、自分に対して『情けなさ』や『自責感』、『罪悪感』などを持ってしまっているのかもしれません。

その『怒り』は、果たして誰に向かっている、どんな感情なのか、自分で識別できるようになるといいですね。そして、自分の未消化な感情を、子どもにぶつけないようにしたいものです。

そのためには「怒りの奥にある感情」と、向き合ってみるといいと思います。『怒り』を感じたら、「ハテ、この怒りの奥にある感情はなんだろう?」と探してみるクセをつけましょう。

「そうか、私はこんなふうに感じていたんだ……」そんなふうに自分の奥に閉じ込められていた感情の存在を認めてあげると、それだけでも、ずいぶん気持ちが楽になると思います。また、誰にどのように対応していけばいいのかも、自ずと見えてくるでしょう。

感情自体に善悪はありません。怒りを持つことをおそれないようにしましょう。そうすれば、これまでよりもっと早い段階で(自分が余裕で対処できる段階で)、自分の色々な感情に気づけるようになるでしょう。怒りは自分でコントロールできるものだと知っておくこと。それが怒りに振り回されないコツです。
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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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