日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり!
今回の一人旅は、宮城県の「松島」、京都府の「天橋立」と並ぶ、日本三景の一つである広島県の「安芸の宮島」へ出かけます。「宮島」は「厳島(いつくしま)」と呼ばれることもありますが、「宮島」、「厳島」、どちらでも間違いではありませんので、本記事では、「宮島」を使うことにします。
海上に浮かぶ厳島神社の壮麗な社殿
宮島には、平安時代の末期に平清盛によって、海上に浮かぶ厳島神社(正式表記は「嚴島神社」)の壮麗な社殿が整えられました。
厳島神社が観光名所としてあまりにも有名なので、宮島へ観光に来ても、厳島神社をお参りしただけで帰ってしまう人も多いと思いますが、じつは、神社の背後にそびえる弥山(みせん 標高535m)は広島県民にとって「聖地」のような山。
弥山への登山道の途中から眺めた厳島神社
弥山頂上からの眺望は、かの伊藤博文も「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と絶賛し、また、厳島神社とともに、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』の三ツ星にも輝いている絶景スポット。
どんな景色が見られるのか、弥山登山にチャレンジしてみたいと思います。それでは、安芸の宮島へレッツゴー!
宮島観光の玄関口「宮島口」からフェリーに乗船!
宮島へは、フェリーで渡りますが、フェリーが発着する「宮島口」までは、広島駅からJR山陽本線または路面電車(広島電鉄)が行くことができます。所要時間は、JR線ならおよそ30分、路面電車なら1時間ちょっとかかります。広島の街並みを見ながら、路面電車でのんびり行くのもいいですが、今回はJR線を利用しました。
宮島へのフェリー
まだ、周囲が薄暗い7時前にフェリー乗り場に到着すると、夜明けの海をフェリーがやってきました。
取材に訪れたのが12月中旬で、吐く息が真っ白になるほど寒かったので、乗船するとすぐに客室に入りましたが、宮島までの航行時間は、わずか10分ほど。
フェリーの中から見える厳島神社の大鳥居。絶好のシャッターチャンス!
島に近づくと、満ち潮なら海中に浮かぶように建つ大鳥居が船から見え、絶好のシャッターチャンスですが、うっかりしていると撮り逃してしまうほど、あっという間に到着します。
鹿に囲まれながら、厳島神社に向かいます
宮島に降り立つと、まず、出迎えてくれるのは鹿たち。放し飼いの鹿というと、奈良の春日大社が有名ですが、宮島にもかなりの数の鹿が生息しています。
宮島を闊歩(かっぽ)する鹿たち
以前、宮島の鹿が増えすぎたために様々な被害が出ているので、鹿を野生に帰すために餌やりを禁止した、というようなことが報道されていましたね。
宮島地域のシカについて(広島県ホームページ)
海岸沿いをしばらく歩いて行くと、いよいよ大鳥居が近づいて来ました。ちょうど引き潮の時間帯だったので、鳥居の下まで歩いて行くことができました。
引き潮のときは、大鳥居を歩いてくぐることもできます
近づいてよく見てみると、約16メートルにもおよぶ鳥居の柱6本には、丸太材ではなくクスの木の自然木が使われており、とても安定感があるように見えます。荒波にも倒れないようにするため、ほかにも様々な工夫がなされているそうです。
自然の重みで建つ大鳥居(宮島観光情報)
「もみじ饅頭」発祥の地から、ロープウェーに乗る
厳島神社をお参りしたら、いよいよ弥山に登ります。弥山には3つの登山道があり、麓から頂上まで歩いて登ることもできますが、今回は、麓と弥山の中腹を結ぶ「宮島ロープウェー」を使うことにします。ロープウェーの乗り場は「紅葉谷」という紅葉の名所にありますが、この場所は広島土産の定番「もみじ饅頭」の発祥の地。
「宮島ロープウェー」の「紅葉谷」駅
現在、広島名物として知られる「もみじ饅頭」は、元々は、宮島の銘菓。発祥については諸説あるようですが、明治の元勲、伊藤博文が、この紅葉谷の茶店に立ち寄ったときに、お茶を出した娘の手を見て、
「この紅葉のような可愛い手を食べてしまいたい」
と冗談を言ったのだそうです。これをヒントに作られた「紅葉形焼饅頭」こそが、「もみじ饅頭」のはじまりだそうです。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
「神ってる」にあやかりたい!広島で買いたいお土産
「宮島ロープウェー」は、「紅葉谷」駅から途中の「榧谷(かやたに)」駅までは小さなゴンドラが次々に来る「循環式」ロープウェー、そこから大きなゴンドラ2台が行き来する「交走式」ロープウェーに乗り換えて、終点の「獅子岩」駅へ上がっていくという珍しい営業方式をとっています。
宮島ロープウェー「交走式」区間(獅子岩付近より撮影)
紅葉谷から獅子岩までは、所要時間約14分の空中散歩。終点の「獅子岩」駅に到着し、近くの「獅子岩展望台」(標高430m)へ上ると、素晴らしい景色が広がっています。
宮島の「獅子岩展望台」の眺望。島々の間を行くタンカー
たなびく雲と、セピア色に輝く瀬戸内の海に浮かぶ島々の影、そして、ゆっくりと航行する大型タンカー。こういう景色を見ると、本当に旅っていいなーと思いますね。
いつまでもこの場所にいたい気分ですが、続いて、ハイキングを楽しみながら、弥山頂上の展望台を目指します。
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■宮島ロープウェー
アクセス:フェリー宮島桟橋からロープウェー乗り場まで、徒歩約25分
運休情報:
2017年1月30(月)~2月28日(火)の30日間は定期点検整備のため運休
宮島ロープウェーホームページ
世界遺産の自然の中を歩いて弥山頂上へ
弥山の登山道は、よく整備されていて歩きやすいですが、「弥山原始林」と呼ばれる豊かな自然林が残されており、世界遺産にも指定されています。弥山原始林
山頂への道の途中に建つ「不消霊火堂(きえずのれいかどう)」の中では、弘法大師が修行に使ったという「消えずの火」が、1200年以上経った今も燃え続けています。この火は、広島平和記念公園の「平和の灯火」の元火にもなったのだそうです。
先ほどの獅子岩から弥山頂上までは、片道およそ30分。
頂上の展望台は、2014年7月に建て替え工事が完了し、リニューアルオープンしたので、まだとてもきれいです。
弥山展望台からの眺望。360度のパノラマビューを楽しめる
展望台3階からは360度遮るものがない、まさにパノラマビューを楽しむことができます。とくに、絵の島、大奈佐美島、江田島など、無数の島々が浮かぶ瀬戸内の"多島美"は言葉に言い尽くせぬほど。
山頂付近には、「くぐり岩」「不動岩」などの巨岩・奇岩がゴロゴロしていますが、展望台からはそれらも見下ろすことができます
ちなみに、訪問した日は、遠くの方がかすんでいましたが、日によっては、四国連山も望めるそうです。
宮島グルメを楽しみます
絶景を満喫して、下山すると、朝は潮が引いて近くまで行くことができた大鳥居が、完全に海水に囲まれていました。およそ6時間サイクルで干潮と満潮を繰り返しますが、わずかな時間で、こんなにも景色が変わるなんて、自然の力はやはりすごい!と思いました。潮が満ちてきて、海水に囲まれた大鳥居
お昼になったので、ランチをと思いますが、宮島のグルメといえば、牡蠣(かき)と穴子が名物。この日は、穴子丼と生牡蠣のセットをいただきました。
穴子丼と生牡蠣
そして、もう一つ紹介したいのが、カレーパン。
牡蠣入りカレーパン
このカレーパン、ただのカレーパンではなく、中に、なんと牡蠣が2つも入っている「牡蠣入りカレーパン」で、宮島の新名物だそうです。
ベンチで食べていると、鹿たちが、「虎視眈々(こしたんたん)」ならぬ、「鹿視眈々」と狙ってくるので要注意です!
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