薬の箱に必ず書かれている「第○類医薬品」とは
一般用医薬品の分類は薬効と副作用リスクに基づいて決められています
皆さんはドラッグストアで販売されている薬をよく利用しますか? 病院に行けないときのカゼや、コロナ禍以降はワクチン接種後の副反応(発熱や頭痛など)対策で解熱鎮痛薬を買い求めた方も少なくないのではないでしょうか。いざというときのために常備薬としているご家庭も多いでしょう。
ドラッグストアで処方せんなしに購入できる医薬品は大衆薬や市販薬と呼ばれますが、専門的には「一般用医薬品」と呼称されます。しばしば相談カウンターの奥に陳列されている薬なのでOTC医薬品(Over The Counterの略)という呼び名もあります。
この一般用医薬品の箱には必ず「第一類医薬品」のように数字などで分類が書かれていることをご存知ですか? 本記事ではこの分類の特徴を中心に解説していきます。
<目次>
- 一般用医薬品は5種類に分けられる
- 要指導医薬品とは
- 第一類医薬品とは
- 第二類医薬品と指定第二類医薬品とは
- 第三類医薬品とは
- 登録販売者とは
- 「薬剤師が不在で販売できません」の謎
- 正比例する薬の効果とリスク
- 副作用のリスクを低減させるためには適正使用が不可欠
- ドラッグストアでもお薬手帳を活用しましょう
一般用医薬品は5種類に分けられる
「星の数ほど」と表現すると少しオーバーですが、ドラッグストアにはとても豊富な種類の一般用医薬品が揃っています。その一方ですべての一般用医薬品はわずか5つのカテゴリーに分けられています。どのような基準で分類されているかというと、ずばり含まれている成分の薬効と副作用リスクの高さによってです。
薬効と副作用リスクが高い順に「要指導医薬品≧第一類医薬品>指定第二類医薬品≧第二類医薬品>第三類医薬品」となっています。ここからは各カテゴリーの特徴をみていきましょう。
要指導医薬品とは
いかにも厳しく管理されていそうな名前の要指導医薬品。要指導医薬品の多くは病院で医師が処方し、調剤薬局で受け取る医療用医薬品の成分を含んだものです。それが一般用医薬品にスイッチ(転換)された直後のものが要指導医薬品であり、もっとも慎重に用いられる必要があります。なお、販売から一定期間が過ぎ、特に問題がなければ要指導医薬品から次に登場する第一類医薬品に扱いが変更されます。
要指導医薬品は2023年8月の段階であまり種類はないのですが、抗アレルギー薬で内服薬の『タリオンAR』(田辺三菱製薬)、目の乾燥を改善する点眼薬の『ヒアレインS』、胃もたれや食欲不振を改善する『イラクナ』(小林製薬)などが含まれます。
■要指導医薬品の特徴
- 箱への記載:要指導医薬品
- 薬効と副作用のリスク:特に高い
- 販売できる者:薬剤師のみ
- 通信販売:不可
- 陳列方法:消費者は直接手に取れない
第一類医薬品とは
第一類医薬品はほぼ要指導薬品と扱いは同じですが、ネットなどを介した通信販売が可能な点で異なります。やはり多くの成分は医療用医薬品からスイッチされたもので、高い薬効と副作用のリスクがあり注意深く使用される必要があります。第一類医薬品には鎮痛薬の『ロキソニンS』(第一三共ヘルスケア)、胃酸を減らす『ガスター10』(第一三共ヘルスケア)、発毛薬の『リアップ』シリーズ(大正製薬)などが有名です。
■第一類医薬品の特徴
- 箱への記載:第一類医薬品
- 薬効と副作用のリスク:高い
- 販売できる者:薬剤師のみ
- 通信販売:可能
- 陳列方法:消費者は直接手に取れない
第二類医薬品と指定第二類医薬品とは
第二類医薬品は薬効も副作用のリスクも中程度の一般用医薬品が含まれます。またこのなかで服用する方の背景や他の薬との飲み合わせでなどでより注意が必要なものが指定第二類医薬品に属しています。具体例としてお子さんや妊婦の方は服用してはいけない成分が含まれているケースです。この第二類医薬品と指定第二類医薬品には抗アレルギー薬、総合感冒薬(いわゆるカゼ薬)、便秘薬、そして漢方薬などが幅広く含まれています。
第二類医薬品には抗アレルギー薬の『アレジオン20』(エスエス製薬)や『アレグラFX』(久光製薬)、有効成分は漢方薬の葛根湯である『カコナール』(第一三共ヘルスケア)など。
そして指定第二類医薬品には鎮痛薬の『バファリンA』(ライオン)、総合感冒薬の『パブロンゴールドA錠』(大正製薬)や『ルルアタックEX』(第一三共ヘルスケア)、睡眠改善薬の『ドリエル』(エスエス製薬)などが挙げられます。
■第二類医薬品と指定第二類医薬品の特徴
- 箱への記載:第二類医薬品(指定第2類医薬品は「2」を丸や四角で囲むなど)
- 薬効と副作用のリスク:中程度
- 販売できる者:薬剤師と登録販売者
- 通信販売:可能
- 陳列方法:手に取って確認可能(指定第二類医薬品は情報提供を行う場所の近く)
第三類医薬品とは
第三類医薬品には作用も穏やかで副作用のリスクも低いものが含まれます。主にビタミンを有効成分とする製品が多くラインナップされています。第三類医薬品にはビタミンB1誘導体などを含む『アリナミンA』(アリナミン製薬)、ニキビなどの肌トラブルを改善する『ハイチオールC ホワイティア』(エスエス製薬)、口内炎などに有効な『チョコラBBプラス』(エーザイ)、目の疲れを緩和する点眼薬の『ソフトサンティア』(参天製薬)などが含まれます。
■第三類医薬品の特徴
- 箱への記載:第三類医薬品
- 薬効と副作用のリスク:とても穏やか
- 販売できる者:薬剤師と登録販売者
- 通信販売:可能
- 陳列方法:手に取って確認可能
登録販売者とは
上記の「販売できる者」の欄に登録販売者と書いてあることに気付かれましたか? 一般用医薬品は薬剤師だけではなく、登録販売者という有資格者も販売が可能です。一方で登録販売者は要指導医薬品と第一類医薬品は販売できず、薬剤師が説明の上で販売します。一般用医薬品を販売するスタッフは必ず名札などでどの資格を持っているのか明示することになっています。ちなみに薬剤師は6年制の薬学部を卒業後、国家試験に合格して得られる国家資格です。登録販売者のテストは特に学歴に関係なく受験が可能で、各都道府県が実施しています。
「薬剤師が不在で販売できません」の謎
皆さんはドラッグストアで一部の陳列棚がカーテンなどで閉鎖されて「薬剤師が不在で販売できません」と札が掛かっているのを見たことはありませんか?これはシフトなどの都合で薬剤師はいないけれど、登録販売者はいる状態に起こります。登録販売者だけでは要指導医薬品と第一類医薬品は販売できないので、これらが陳列されている棚が「閉店状態」になってしまうのです。
私は友人の登録販売者から、薬剤師不在時に第一類医薬品のロキソニンSを指名買いでこられた方のエピソードを聞いたことがあります。その方は頭痛を訴えながら「いつも買っているのにどうして今は買えないの!?」と激怒されたとのこと……。
ドラッグストアなのにドラッグ(薬)が買えなくなってしまうこの珍現象は、このようなスタッフの免許と一般用医薬品の区分が背景にあるのです。
正比例する薬の効果とリスク
要指導医薬品と第一類医薬品の説明で、効果も高い一方で副作用のリスクも高いと説明しました。これを読んで「怖いからこのカテゴリーの薬は避けよう……」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、その理屈だと病院で処方される薬は何も服用できない(服用したくない)ということになってしまいます。薬はその効果と副作用リスクの高さはほぼ正比例します。したがって、大切なのは適正に薬を服用してその効果をしっかり発揮させて、副作用の内容を前もって理解しておくことです。
副作用のリスクを低減させるためには適正使用が不可欠
薬は指示された用法・用量で最も効果が出るように設計されています
適正使用にくわえて重要なのは服用しようとしている薬にどのような副作用があるのか、特に服用初期にどのような副作用が起こり得るのかを知っておくことです。そうすれば服用中止の判断が素早く行えます。冷静に薬剤師や登録販売者に問い合わせることもできるでしょう。
ドラッグストアでもお薬手帳を活用しましょう
普段から服用している薬があればそれを記載したお薬手帳を、一般用医薬品を購入する際にも薬剤師や登録販売者に提示しましょう。特に要指導医薬品と第一類医薬品は他の薬との飲み合わせに注意が必要なものが少なくないのでぜひ活用しましょう。もし不安な点があれば薬剤師などに積極的に質問してください。場合によっては一般用医薬品ではなく適切な医療機関の診療科をアドバイスしてくれるでしょう。この記事を参考にして一般用医薬品をうまく利用していただければ幸いです。
なお、厳密な定義において要指導医薬品は一般用医薬品から独立したカテゴリーとされます。しかしながら、処方せんなしで購入できる市販薬という点において両者に差異はなく、さらに横断的に各カテゴリーの特徴を理解しやすくするため本記事では要指導医薬品を一般用医薬品のひとつとして記載いたしました。
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