予算より高い物件を勧められる理由1、不動産会社が得をするから
理由のひとつは簡単だ。予算より高い物件を借りてもらったほうが不動産会社が得をするからである。それにはいくつかの要因がある。ご存じのように不動産の仲介手数料は成功報酬である。賃貸の場合は会社にもよるが、最大で家賃の1ヵ月分。家賃が5万円でも、100万円でも報酬は1ヵ月分である。となると、5万円が希望と言っていた人が最終的に8万円で決めてくれたら、そのほうが仲介する人としては嬉しい。
しかも、多くの仲介のみを手掛ける不動産会社では営業マンの給料は歩合で決まる。ということは、早く、高い物件を決めてもらえば、そのほうが身入りは良くなる。半日かけて物件の下見をしても、やっぱり止めますと言われたら、そのために費やした時間は一円にもならない。逆に下見に行きもしないでこれにしますと決めてくれたら、時間もかけずに仲介手数料が入ってくることになる。
と書くと、自分が儲かるから言って高い物件を勧めるんだ!と非難したくなるが、自分がその立場だったらということも考えてみたい。来る人、来る人が全く決めてくれなかったら給料ゼロということもあり得るのだ。となったら、なんとしてでも決めたいと考える人が出てきても不思議はない。そう考えると、仕組みにも問題点があることが分かる。
もうひとつ、最近ではなかなか入居者が決まらない物件が増えており、それにAD(広告料)と称したボーナスが付いていることがある。決まらない物件を決めてくれたら、余分に報酬を払いますよという意味で、営業マンにとっては決めると得する物件ということでもある。となると、相手が何を望んでいようが、自分が得する物件を勧める人が出てくることは容易に想像できよう。
もちろん、その物件が自分の希望にあっていれば問題はないわけだが、なかなか決まらない物件は遠い、狭いその他いろいろな条件が市場のニーズに合致しないから空室が続いている。他物件より魅力的なことは少ないはずだ。
予算より高い物件を勧められる理由2、相場を勘違いしているから
もうひとつの理由は探している人の問題だ。相場を勘違いしているのである。あちこちのポータルサイトが沿線駅別などに相場を出しており、私達は数字で表されたモノを見るとそれが正しいと思ってしまいがち。だが、相場は意外に変動するし、信用できない場合もある。よく安ければ古くてもという条件を出す人がいるが、多くの場合、古い物件を知らないことが多く、ではと案内されると「ここまで古い物件じゃない」などということも多いとか。その意味では物件の古さ、良し悪しなども個人で認識の違いが大きい(クリックで拡大)
たとえば、相場が沿線、駅別に間取りで表示されている場合、その相場には築年数、駅からの距離、同じ間取りでも広さの違いなどは考慮されていない。古くて安い物件が多い地域では相場は安くなりがちだが、そこで新築物件を探そうとすると賃料は相場より高くなることも。また、同じ2DKでも35平米と45平米では当然、賃料は変わってくるが、相場は平均なので、どっちつかずの額になっている可能性もある。ワンルームが少ないエリアで1棟高額な物件が供給されると、相場がそれに引っ張られて上昇するなどの現象もあり、目安としては使えるが、絶対ではないのが相場なのである。
だが、人は面白いもので、自分がお金を払う立場にある時にはできるだけ少ない額でより良いものを求めようとする。そのため、ワンルームの相場が7万円とされている地域で、それが古くて狭いワンルーム中心の相場であったとしても「新築でオートロック、バス・トイレ別で25平米のワンルームだと8万円近く出さないと難しい」と言われると、そんなはずはないと思ってしまう。物件例を示した上で無いんですよと言われても、信用できないと思ってしまう。例も示さずに「ありません」と言われたのであれば、そう思っても仕方ないが、例を挙げていてすら信用できないと思ってしまう。
これではなかなか決まらない。相手が本当に物件がないからないと言っているのか、自分が儲けたいと思って高い物件しかないと言っているのか、見抜くのは難しいが、それを考えて判断しないと、いつまでも条件に合う物件には辿り着かない。その意味では部屋探しでは不動産会社や人を見る目が試されているのである。
■参考記事
賃貸の部屋探し、ダメダメ不動産会社の見分け方
もうひとつ、よく不動産会社で聞かれる、「何社くらい回られましたか」という質問の意味を解説しておこう。よく、他社を回っているかどうかを聞かれていると解釈する解説があるが、そうではない。これは相場、物件の状況を理解しているかどうかを知るための質問である。もし、初めての人の最初の会社ということであれば、理解してもらうためには時間がかかる。それを事前に知るために聞くのである。
ちなみに初めての物件探しをする人が最初の会社で決めることはあまりない。最初の会社がいくらきちんと相場、物件の状況を伝えたとしても、それを信用できず、ほかに行ってみようと思うことが多いためで、その結果、最終的には当初の希望とは異なる物件で決めたという例も良く聞く。効率的に探すためには早めに信用できる会社に巡り合えるようにすることというわけだ。