創業80余年。オーダースーツのパイオニア「HANABISHI」
HANABISHI渋谷店外観
ビジネスカジュアルの台頭により、スーツ市場の売上は減少傾向にある。その一方で、スーツへのこだわりや愛着を持つ人が増え、「どうせ所有するなら自分にぴったりの勝負服が欲しい」というニーズからオーダースーツは活況を呈しているようだ。
最近でも、大手紳士服専門店がオーダースーツの新業態や新サービスを打ち出しており、市場はじわじわと盛り上がりをみせつつある。
今回取材した「HANABISHI」はそんなオーダースーツにおけるパイオニア的な存在だ。創業は1935年。いまでは当たり前となった機械でオーダースーツを縫うシステムを日本で初めて導入し、オーダースーツの量産体型を築き上げた立役者といっても過言ではない。
国内各所に自社工場を持ち、すべての工程を熟練の職人たちが手がける“国産”にこだわっているのも特徴。某大手百貨店のスーツも長年同社が手がけているとあり、その実力はまさに折り紙付きだ。
2014年から「HANABISHI」ブランドを刷新
自社工場では熟練の職人が腕を振るう。スーツは1日約450着、年間では13万着を手がける 出典:HANABISHI
創業80余年と歴史はとにかく古い「HANABISHI」であるが、メンズファッション誌などで頭角を表してきたのは実は最近の話。
「それまでは縫製屋としての下請け仕事が多かったが、2013年下期から物売りになろうと方向転換を図りました。ブランドサイトをリニューアルし、2016年からはwebで簡単にオーダー体験ができるオーダーナビゲーションを導入。店舗も路面店にこだわることで、オーダースーツの敷居を下げるように努力してきました」(花菱縫製株式会社 営業本部 PRマネージャー堂藤賢二氏)。
実際、それまではほとんどがリピーターだったが、2016年にはいって新規顧客の割合が一気に増えたという。
「HANABISHIのウリはきめ細かいカウンセリングと熟練の職人たちによる卓越した縫製技術。また生地へのこだわりも強く、仕入れから生産、販売まで一貫してやっています。同業他社でもここまでやっているところはあまりありません」(堂藤氏)
競合ひしめくオーダースーツ市場において、確固たる地位を築いているHANABISHI。実際にオーダー体験して分かったその魅力を、次から詳しく紹介していこう。
初心者でも安心。フィッターとの会話で作るスーツが見えてくる
「オーダースーツは初めて」という読者も多いことだろう。かく言う筆者も、普段はカジュアルな服装が多いため、40過ぎのおっさんであるが、スーツは2着しか持っていない。オーダースーツはその名の通り、何から何まで自分好み、自分仕様でカスタマイズできるのが魅力ではあるが、その分、スーツに詳しくなければどうして良いかわからないという気持ちもよく分かる。
しかし、そこは心配無用。スーツ作りにおいてはフィッターと呼ばれるオーダースーツのプロがしっかりサポートしてくれる。HANABISHIにおけるオーダーの手順は大きく分けて4段階。カウンセリングから始まり、生地選び、スタイル&ディテールの決め、そして採寸だ。
以下、ひとつひとつを実際の流れに沿って細かく見ていこう。
1.カウンセリング
スーツづくりはフィッターと呼ばれるオーダーメイドのプロと話すことから始まる。どんなシーンで着用するのか? クローゼットには何色のスーツがあるのか? 持っている靴は何色があるのか? などなど。筆者の場合、濃いグレーとブラックのスーツは所有しており、着用シーンは結婚式やパーティが多いと伝えると「ライトグレーかネイビーで、比較的オーソドックスなスタイルのほうが汎用性もあり長く着られます」との提案が。
デザインやスタイルなどはタブレットなどで型見本を見ながら確認。スーツの知識がなくとも、丁寧に説明してくれるのでわかりやすい
2.生地選び
方向性が決まったら次は生地選びだ。予算を伝えると、フィッターがいくつか候補を絞ってくれるので実際に体にあてて印象を確かめる。ツヤの有無やストライプの強弱など、とにかく膨大な種類があり自分一人ではなかなか決められない。が、先のカウンセリングで着用シーンなどを話しているため、思いのほか選択肢は絞られてくる。筆者の場合、結婚式やパーティでの着用が多くなるため、ツヤ感があって、ストライプは控えめなネイビーを選択。
生地を折り曲げて体と腕に掛けることで、着用時のイメージがかなり湧いてくる
3.スタイルとディテールを決める
シングルかダブルか、襟の幅や形をどうするか、ボタンの種類やスーツの裏地、パンツのシルエットなどなど、生地が決まったら各種ディテールを決めていく。フィッターは昨今のスーツトレンドにも詳しいので、カウンセリングに基づきながらここでも選択肢を絞った提案をしてくれる。
また、股擦れなど、体型の個人的なお悩みについても解決方法を指南してくれる。要望はもちろん疑問点などがあればこの段階ですべてクリアにしておこう。
数あるサンプルのなかから、フィッターが候補をチョイス。追加料金でベストを付けた3ピーススーツにすることも可能
4.採寸
最後はゲージ服と呼ばれる採寸用のサイズ見本服を使っての採寸。肩幅、袖丈、脇、胴、股下、股上、裾などあらゆるパートを細かく測っていく。好みに応じて、パンツをローライズにしたり、テーパードを強め(裾に向かって細め)にしたりのオーダーも追加料金なしで対応してくれる。スーツの場合は着丈と股上の長さが全体バランスに影響を与えるので、ニーズにあわせてフィッターがバランスを整える。
オーダースーツの醍醐味は、美しいウエストラインにあり。微調整により、お腹ポッコリ体型でもキレイなラインを演出してくれる
約3~4週間で完成! 微調整は1年間無料で対応
ウエストのくびれもしっかり! 吊るしのスーツでは味わえない美しいシルエット
オーダーから約3~4週間。いよいよスーツができあがる。この時の高揚感たるや、車の納車や物件の引き渡しに近いものが!
完成したら店頭へ出向き、最終のフィッティングだ。ここでは、肩周りやウエスト周りをはじめ、全体的なシルエットや着丈のバランスをチェック。もちろん気になる部分があれば再度調整も可能だ(約10日間)。
また、購入から1年以内であれば、各種サイズの微調整を無料で行ってくれるというのもうれしい。
さらに、一度採寸を行っていれば2着目以降のオーダーはかなりスムーズ。オーダースーツのフィット感を一度味わってしまったらもう吊るしのスーツには戻れない。筆者自身、シーズンの変わり目、春先に新しい生地が店頭に出揃ったタイミングで再訪してしまいそうだ。
ジャケット5万6000円(オプション含む)、ベスト2万6000円(オプション含む)、パンツ2万4000円。
取材協力:HANABISHI渋谷店