好調なスタートを切った新型インプレッサ
10年、15年単位で使われるプラットフォーム(車体)を一新したスバル。「SUBARU GLOBAL PLATFORM」と呼ばれるのがそれで、採用第1弾となるのが新型インプレッサだ。
9月1日の先行予約から11月14日時点で、1万1050台という受注を集めたというからまずは好調なスタートを切ったといえるだろう。なお、新型インプレッサには2.0Lと1.6Lが用意されているが、同時点では2.0Lが82%(5ドアハッチバックのSPORT)、74%(セダンのG4)と、1.6Lを大きく上回っている。1.6Lは2016年の年末発売で、試乗してから買うという人もいるだろうから、もう少し1.6L車の比率が高まるかもしれない。
以前、クローズドコースでのプロトタイプの試乗記をお届けしたが、ここでは量産車で公道を走る機会があったのでご報告したい。試乗車は5ドアハッチバックの「IMPREZA SPORT 2.0i-S EyeSight」のAWDで、最上級グレードであり11月14日時点で5ドアハッチバックの中で一番人気となっている。
量産仕様を公道で走らせると?
クローズドコースと公道の違いは大きい。プロトタイプ試乗会が開催された伊豆の日本サイクルスポーツセンターは、路面状態が一部を除いて良好で、しかもミュー(摩擦係数)が高くよくグリップする。プロトタイプ試乗会で走った際は豪雨後でウエット状態だったが、乗り心地の良さや静粛性の高さ、そしてなにより大小様々なコーナーで正確なハンドリングも感じ取れた。
一方、量産仕様で公道を走らせると気がつくのは、プロトタイプ試乗会で感じた時ほど乗り心地が良好とはいえない点。一般道でそれほど飛ばさなければ十分に合格点といえるものの、高速道路ではボディの揺れが一発で収束せずに、揺れの余韻が続く。
これはクルマそのものの個体差や、タイヤサイズ(試乗車はヨコハマの「ADVAN Sport V105」225/40R18)によって変わってくるかもしれない。また、リヤに隔壁があるセダンの方が剛性面で有利だから、セダンなら乗り心地も良い方向性で変わる可能性もある。少なくても試乗車に関しては手放しでフラットライドといえる状態ではなかった。
154ps/6000rpm、196Nm/4000rpmという2.0L水平対向4気筒直噴エンジンは、動力性能に不満はない。少し飛ばすとCVTならではの音が高まり加速感が付いてくるというCVTそのものの欠点が顔を出すシーンもあるが、それでもCVTとしては変速フィールの違和感は抑えられている方だろう。
シーンを問わず静かな車内
一方の美点は、プロトタイプでも感じられた静粛性の高さだ。中・低速域のこもり音や高速域の風切り音など不快に感じる音の遮断、吸音は見事で、欧州Cセグメント車を含めてトップクラスではないだろうか。音が静かだとロングドライブでも無用な疲れを誘わないが、名古屋から東京まで走っても疲れ知らずであった。
新型スバル・インプレッサは、最大のライバルとしてマツダ・アクセラやフォルクスワーゲン・ゴルフなどが挙げられる。とくに「G-ベクタリング コントロール」を採用するアクセラと共通するのは味付けこそ違うが自然な操舵フィール
また、素直なハンドリングも見逃せない。曲がりくねった高速道路やコーナーが続く郊外路でも思いのまま車両をコントロールでき、ボディの傾きなども抑制されているから運転しやすい。同じコースを乗り比べたわけではないが、「G-ベクタリング コントロール」を採用している最大のライバル、マツダ・アクセラと比べるとフィーリングは異なるものの、ライントレース性の高さは甲乙付けがたいものがある。
逆に、高速道路での直進安定性はフォルクスワーゲン・ゴルフやプジョー308と比べるともう少しという印象。「EyeSight(アイサイト)」のレーンキープ機能(車線中央を維持する機能も含む)により横風が吹き付けるようなシーンでも楽ではあるが、レーンキープに頼らずにもう少し矢のように走って欲しいところ。その方がドライバーの負担が減るのは間違いない。
長距離でも疲れを誘わなかった新型スバル・インプレッサ。フロントシートの出来の高さも見逃せない。腰痛持ちの私だが、名古屋から東京に帰京する移動でも腰痛に見舞われなかった。これで高速域の直進性がさらに高まれば、とくに積載性という利点を持つ5ドアハッチバックのSPORTならグランドツーリングカー的に使えるモデルになりそうだ。