視界が高く見晴らしのいい“Cクラス”
2L直4ターボを積むGLC250 4マチック(628万円)と同スポーツ(668万円 写真)、プラグインハイブリッドのGLC350e 4マチック スポーツ(863万円)、メルセデスAMG GLC43 4マチック(863万円)をラインナップ
ちょっとややこしくなるけれど、知っておくと便利なハナシをまず始めに。
メルセデス・ベンツは最近、車名の付け方を大々的に整理しなおした。というのも、今や、日本市場に正規導入されているモデルだけをとっても、その数は16モデル(AMGやスマートを除いて ! )と、ほとんどフルラインナップ状態で、以前のネーミング方法では、つじつまが合わなくなってきたからだ。
新しい方法は、実は、伝統に則ったもの。つまり、本流となるハッチバックとセダンのクラス分け=A、C、E、Sをそのままサイズ分類の目安とし、クーペならCL、オープンならSL、SUVならGLをその前に足す、という方法に変えた。例えばGLAならば、Aクラス相当=欧州CセグメントのSUVだと思えばいいというわけだ。
というわけで、本題のGLCである。
メルセデス的にどういう位置づけのモデルかは、前述の説明でだいたい想像つけていただけることだろう。GLだからSUV、そしてCだからCクラス相当、つまりは欧州Dセグメント(全長4.7m以下)に属するモデルだと思ってもらえばいい。あるいは、これまでGLKクラスと呼んでいた、といえば、「ああ、あのサイズね」と頷かれる向きも多いことだろう。
このクラス、実は今、世界的に流行りのコンパクトSUVのなかでも上級に属しており、より本物志向の強いユーザーにとっては憧れのモデルも多く、それゆえ激戦区となっている。国産車でいえば、レクサスNXやマツダCX-5が同じクラスに属するし、ドイツ系ではBMW X3やアウディQ5がライバルだ。
最高出力211ps/最大トルク350Nmの2L直4ターボをGLC250に搭載、GLC350eはそれに340Nmのモーターを組み合わせる。GLC43にはAMG専用開発の3L V6ツインターボを搭載、367ps/520Nmを発生する
そんな中で、GLCはメルセデスの放つ最新モデルだけあって、先進安全装備を始めとした最新の付加価値がぎっしり詰まっている。パワートレーンによるラインナップこそ今のところ3種類、しかも、ガソリン直4ターボと、ガソリン直4+電気モーターのプラグインハイブリッド、そしてV6ツインターボのAMG43で、全て4マチック(4WD)と、限られた選択肢となっているが、Cクラスと同様、とは言わないまでも、今後の人気次第でグレードがもう少し増えてくれることを願いたい。
否、増えてもらわなければ困る。なぜなら、このGLCクラス、乗ってみるとCクラスセダンよりも快適な実用車だと思えたからだ。良いクルマであるがゆえに、不満はというと、人気のディーゼルや小排気量モデルが選べないこと、という結論に収束してしまう。もっと、プレミアムブランドにおけるSUVを、以前のクーペのようなスペシャリティモデル的な位置づけとしてキープするというのであれば、パワートレーン数の少なさも理解できるのだが。
現行型Cクラスのいい点を全てキープしたまま、背の高いSUVモデルにしたといっても決して褒め過ぎではないだろう。乗った印象はというと、正に、視界が高く見晴らしのいいCクラス、というものだった。
ボディサイズは全長4670mm×全幅1890mm×全高1645mm、ホイールベース2875mm(GLC250スポーツ)。セダン(C200アヴァンギャルド)比で全長?20mm、全幅+80mm、全高+210mmとなる
“クロカンモデル的”な挙動はほとんどない
歳をとってくると、ドスンと腰を落として乗り込むセダンよりも、多少面倒でもよじ上って乗り込むSUVの方がラク。そんな風に考えながらGLC250スポーツのコクピットに収まる。ダッシュボードまわりの雰囲気はCクラスそのもの。スポーティにまとめたデザインがSUVにもよくお似合い。このあたりへの活用までしっかり考え抜かれたデザインだったのだろう。むしろ、セダンやワゴンのCクラスよりもしっくりとくる。
GLC250はファブリックシートを、同スポーツはスエード調ファブリックと人工皮革を組み合わせたスポーツシートを標準に。GLC250スポーツの本革仕様モデルは745万円となる。GLC350eは本革シートを採用する
2L直4ターボエンジンは、1000回転を越えたあたりでもう、右足ウラに頼もしさを感じる力を発揮して、1800kgの車重をらくらくと加速させる。C250に比べると+200kgにもなるというのに、力不足を感じさせることはない。むしろ、滑らかで上質な加速フィールにも思えた。
GLC250には減衰力を調整するセレクティブダンピングシステムを備えたアジリティコントロールサスペンションを装着。スポーツにはスプリングとダンパーを引き締めたスポーツサスが、GLC350eには電子制御連続可変ダンパーをもつエアマチックさすペンションを採用する
乗り心地も、タイヤとサスのタッパを十分に活用したもので、路面の凸凹からくる突き上げの吸収もより滑らかであり、Cクラスのセダンやワゴンに比べてソリッド感も抑えられた。街乗りでは、明らかに、GLC250の方が心地いい。
それでいて、カーブでの安定感はというと、セダンにも負けず劣らずで、しっかりと進むべき道をトレースし、安心してドライブできる。いわゆるクロカンモデル的な動きはほとんどない。あるのはやはり、視線の高さだけ、である。
高速クルーズも安定していた。悪天候をものともしないという、セダンにはない安心感もある。サイズ的(特に車高)な問題や、SUVがとにかく嫌いというのでなければ、Cクラス分類で最上のモデルのひとつとして、選択肢に載せてみてもいいと思う。