「再婚なのに白でいいの?」と疑問視する声も
左から、片岡愛之助さん、藤原紀香さん。写真は、2016年3月31日に開かれた東京で結婚式の発表記者会見の様子。(Photo by AFLO)
さて、ご存知の通り紀香さんは再婚。2回目なのに衣裳は白無垢でいいの?という疑問がネット上で飛び交ったようです。現在では再婚でも挙式や披露宴を行う人が増えていますので、再婚の場合の花嫁姿について書いておこうと思います。
白無垢は着てもいいの?
日本の花嫁と言えば白無垢姿。でも白という色は再婚で着てもいいの?
そもそも結婚式という概念が生まれたのは平安中期~鎌倉期。武家における結婚式の形は、小笠原流や伊勢流といった礼法を伝える家によって整えられ、今に伝えられていますが、どちらも「白物」(白装束)で挙式を行うとされています。女性だけでなく、男性も白い衣裳です。時代劇の結婚式のシーンには、ともに白の衣裳を着たお殿様とお姫様が盃を交わしていますよね。
花嫁が白い衣裳を着る理由として、伊勢流の文献には「葬礼からきた」とあるそうです。小笠原流にも、花嫁を家から出す際には門火(送り火)を焚くとあり、ともに娘が死んだものとして家から出す死に装束の意味を持っていることがわかります。服飾史学者の増田美子氏は、「神の加護や祝福を受けるための神聖な装束として白を着た」という説を唱えているのですが、男性も白を着る点から考えると、増田氏の説のように儀式にふさわしい色だから白を着ていた側面が強かったのではないかとガイドは考えます。
死者の衣裳、儀式の衣裳のどちらの意味においても、再婚だから白は着ないという要素はありません。だから再婚でも白無垢を着てもOKです。むしろ、結婚式をするなら衣裳は白、とするのが日本古来の考え方のようです。
しかし、これではあまりにも夢がないですよね。前述した純潔の証とか、あなたの色に染まりますという「意味」は、これらの由来をロマンチックに表現したものでしょう。
ウェディングドレスは白を着ていいの?
では、ウエディングドレスは?
欧米では、再婚の花嫁は白のドレスは着ないという風潮があったものの、最近はあまり気にせずに白を着るケースが増えているよう。再婚の海外セレブのドレスもほとんど白ですよね。本場にならって服装を考えるのであれば、現在は白を着てもいいと考えていいでしょう。
お色直しはしていいの?
答えは“Yes”。 挙式から3日(昔は挙式は夜行われたので厳密には3夜目)経って色物の衣裳に着替え、披露の宴を行ったというのがお色直しの由来です。現在一般的なのは、まだどの色にも染まっていない白無垢に対して、挙式をして婚家の色に染まったという意味で着替えるのが「お色直し」だと言われますが、嫁ぎ先が衣裳を用意して、それをお色直しで着るというしきたりもあったようです。3日(3夜)というのは平安時代に既に見られる習慣です。当時は男性が女性の家を訪問する「通い婚」。相手を決めるための事前の根回しや正式な夫婦関係とみなされるためのおまじないのようなしきたりはあっても、挙式と呼べるものはありませんでした。3夜通って結婚が成立したとされ、3夜目に「三日夜の餅」と呼ばれる餅を一緒に食べ、関係者を招いた宴会(平安時代はもちろん男性のみの宴席)が催されたそうです。
小笠原流礼法には「陰の式」「陽の式」という2パターンの挙式があったと伝わっており、陰の式は白装束の新郎新婦だけで行われ、陽の式は陰の式から3日後に、色物の衣裳を着て家族の前で行われる儀式だそうです。服装の決まりごとも、こうした礼法の整備に伴って定着し、今に至っているわけですね。
前置きが長くなりましたが、こういう経緯からすると、白無垢同様にお色直しを行うのも初婚でも再婚でもOKということになります。
「着るか着ないか」は本人と周囲の見方次第!
由来から考えた、再婚者の白無垢やウェディングドレス、お色直しの是非を見てきました。今は再婚だから地味にしなければいけないという時代でもありません。着るか着ないかは本人次第、周りの見方次第。そこを考慮して衣裳を決めるのがいいと思います。白無垢なら落ち着いた柄や柄が控えめなものにしたり、和髪でトラディッショナルなコーディネートにしたりする。ウェディングドレスなら濃い目のベージュ系にする、ボリュームがあまりないものにする。お色直しはしないなど、見え方を調節する方法はいろいろあります。家族や友人にアドバイスをもらうのもいいですね。同じものを着ても派手に見えたり見えなかったり、その人のキャラクターによって変わるので、再婚だからこうと決めつけず、客観的に見てどんな印象に見せたいかを考えて選んでみてください。