新世代スバル第一弾は新型インプレッサ
10年~15年単位で使うプラットフォーム(車体)は、走りだけでなく、居住性や安全面までクルマの大半を左右する重要なアーキテクチャーだ。モデルやフルやマイナーチェンジで、手が入れられることがあっても全面的に刷新するのは十数年単位ということになる。
「SUBARU GLOBAL PLATFORM」と命名された新プラットフォームを初めて採用するのが、すでに受注を開始している新型インプレッサ。その狙いは、最近のスバル車で購入動機になっている安全(アイサイトの効果が大)、デザインと質感を引き上げること、そしてスバルらしい走りの良さをさらに引き上げる点にあるという。
内外装ともに質感向上を狙う
今秋の正式発表、発売を前にプロトタイプではあるがクローズドコースで試乗する機会があったのでその印象をお届けしたい。運転席に収まる前に外観を眺めると、デザインテーマである「ダイナミック&ソリッド」という雰囲気に満ちている。試乗車は5ドアハッチバックのSPORTで、撮影車両としてセダンのG4も用意されていたが、いずれもスポーティで質感の高さが伝わってくる。
内装もフルモデルチェンジにふさわしいクオリティが伝わってきて、従来モデルよりもひとクラス上にアップデートされたようだ。とくに、大型のカーナビが収まるディスプレイまわりのパネルや、よりグラフィカルになったマルチファンクションディスプレイ、メータークラスターなどの視認する表示が質感向上に大きく貢献している印象を受ける。もちろん、インパネ全体から細部にまで気が配られているのは言うまでもない。
安定感抜群なのに「よく曲がる」
エンジンは写真の2.0L直噴NAと、ポート噴射の1.6L NAを用意。組み合わされる新リニアトロニックもレシオカバレッジの拡大や軽量化などが図られていて、洗練された走りも魅力となる。2.0Lは154ps/6000rpm、196Nm/4000rpmというスペック
エンジンは新開発となる2.0L直噴と、ポート噴射の1.6Lを用意。ともに当然ながら水平対向エンジンで、後者も軽量化など大幅に手が入れられている。組み合わされるCVTのリニアトロニックも軽量化、ステップ変速など最新の制御が入れられている。
新型インプレッサ(プロトタイプ)を試乗ステージになった修善寺のサイクルスポーツセンターで走らせると、まず印象的なのがCセグメントの中でもトップクラスと思わせるボディ剛性感の高さ、そして大小様々なコーナーを容易に曲がっていく軽快感と安定感を備えたハンドリングだ。
しかも、足がよく動くから路面からの衝撃を巧みにいなしてくれるし、入力の大小を問わずボディが無粋に揺すられることはほとんどない。なお、試乗車は17インチ、18インチでエンジンは2.0Lのみだったが、18インチはハイグリップでしっかりした走りが得られる反面、40~50km/h程度の低めの速度域、つまりタウンスピードで微少な揺れが感じられた。市販モデルまでに改善されれば、乗り心地も不満のないレベルにあるといえるだろう。
先述したように、試乗したのが路面の良い自転車試乗向けのコースだったため、公道でどれだけの乗り味を披露してくれるかは分からない。ただし、大半のスバル車のA型は硬めの乗り心地であったことが多いことを考えると、新型インプレッサ(プロトタイプ)は良好な乗り心地といえそうだ。
今回の試乗コースは、多彩なコーナー、アップダウンに富んでいてハンドリングや乗り心地だけでなく加減速、ブレーキングを試すには格好のステージ。先述したフットワークの良さは、コーナーでのロール、そして体勢を戻していった際の揺り戻しが少なく、ロールフォールディング性能の高さを十分に感じさせてくれた。
パワートレーンの反応の良さも印象的
さらに、加速レスポンスも鋭く、急坂を上り下りする際はCVTをパドルシフトで積極的に使えば意のままに走らせることができるし、CVTの反応も以前よりも鋭くなっている。従来型と乗り比べると、安定感の増した走りが印象的で、しかも「よく曲がってくれる」という、相反する要素を高い次元で両立しているのが分かる。
前席、後席ともに居住性も向上し、ボディサイズを拡大しながらも5.3mの最小回転半径、2019mmのミラーtoミラー(左右ミラー間の距離)を堅持するなど、取り回しの良さ、安全面でも「アイサイト3」や国産初となる歩行者エアバッグを装備するなど、全方位進化を果たしている新型インプレッサ。
日本勢のCセグメントモデルがハイブリッド一辺倒になっているいま、フォルクスワーゲン・ゴルフに代表される欧州勢にも太刀打ちできるし、走りやデザインを磨き上げているマツダ・アクセラとも高いレベルでの競争ができている。スバル車だけでなく、日本車の走りや質感を引き上げる役割も担ってくれそうだ。