名前には左右対称な漢字を使うのが縁起が良い?
漢字の形に良し悪しは無い
A: そういう話が流れることはよくありますが、そのこと自体に良い、悪いの区別はありません。名づけで大切なことは、名前をつける親自身が気に入っている字かどうかです。悪い意味をもった字、名前に適さない字というのも確かにありますが、その前に大事なのは親の正直な好みです。
左右対称の字は、好きな人は使えば良い
世間ではよく「名前で左右に分かれる字はいけない」とか「左右対称の字を使うと運がいい」などという話が流れたりします。しかしそれはあくまで個人の好みの問題です。たとえば「由」とか「幸」のような、左右対象の字が好きな人は確かにいます。それがご自分の正直な好みであるなら、自分のお子さんの名づけの時に使えばよいですが、他人に向かって一般論のように言うのはおかしな話です。左右対称の字というのは限られるので、作れる名前もかなり狭い範囲になりますが、命名相談などでそのような希望を出される方には、そうした名前のリストをご提供することはあります。ただ「世間でそう聞いたから」というのは、自分自身の名づけではありません。
漢字は分かれることが当たり前
もともと「字」というのは、屋根の下に「子」を描いています。つまり両親から子が生まれるように、二つのものが組み合わさって作られるのが「字」なのです。そして漢字というのは、上下だったり、左右だったりの違いはあっても、二つ以上の絵の組み合わせで作られているものがほとんど。左右に分かれる字がいけないと言われたら、大半の漢字が使えなくなり、「明」の字はダメで「悪」や「病」なら良い、ということになってしまいます。名前の漢字はそのような基準で選ぶものではなく、字の成り立ち、意味、使い勝手こそが最も重要で基本的なことなのです。ただし、これはわかっているつもりで軽く考えますと、うっかりミスというのも起きてしまいます。
たとえば空音(そらね)という名前は、左右に分かれませんし、左右対称に近い字ですが、この名前が「うそ」という意味の熟語であることに気がつかない、というようなことです。もちろんわかっていてつけるなら親の自由ですが、世間の噂にこだわって肝心なことを忘れては本末顛倒になります。
春に生まれるから「小春」にしよう、という方も多く、もちろん名前としては問題ありません。ただこれも「左右に分かれないから」「左右対称に近いから」などと考える必要はなく、まず小春というのは秋の暖かい日のことだ、ということをご承知の上でつけていただく、ということです。