『ロミオ&ジュリエット』では“子供と大人の中間”を生きる若者、マーキューシオ役
『ロミオ&ジュリエット』
「はい、自分のキャラクターというか、マーキューシオだったら自分が作品に入った時の想像がしやすかったというか、楽しいだろうなという気がしてオーディションを受けました。前回の公演の(東山)光明君のニヒルで、ちょっとイカレてそうなマーキューシオも魅力的でしたしね。「マブの女王」が課題曲でしたが、とにかく歌唱力がポイントだろう、もしこのオーディションに受かれば一つの自信になるだろうと思って、何度か先生を変えて試行錯誤しながら、歌のレッスンを積んで臨みました」
――ご自身の歌唱をどう伸ばしていこうと思われたのですか?
「これまで、歌に関しては感情がこうだから声をだそうとか、勢いで歌っている部分がありました。でももうちょっと知識を蓄えて、より(楽譜に対して)正確に歌えたらと思ったんです。それまでは楽譜をもらっても歌詞を確認する程度でしたが、鍵盤で弾いて一音、一音“答え合わせ”をするようになりましたね。それと、マーキューシオは男性としては高めの音で最後伸ばして終わるナンバーがあるので、そこが余裕で出るようにしたいと思っています。演出家の小池(修一郎)さんの舞台にはこれまでも『レディ・べス』や『オーシャンズ11』に出演させていただいたけれど、三重唱や四重唱のコーラスが多くて、一人の歌は初めてちゃんと聴いていただきました。オーディションでは“声、出るようになったね”と言っていただけて、嬉しかったですね。
『ロミオ&ジュリエット』製作発表記者会見では、アクロバットも見せつつ、青年たちの青春謳歌のナンバー「世界の王」を披露。(C)Marino Matsushima
――マーキューシオはロミオに対して“分別を持て”と言っておきながら、結果的には衝動的な行動で悲劇の起点となってしまいます。
「マーキューシオはきっと、(ジュリエットとの恋に突っ走る)ロミオと大人たちの中間に立つ人物なんだろうなと思います。どちらの言い分もわかって、状況は分かっているけど、どこかでいらいらして、それが爆発してしまう。僕もそういう感覚は分かります。大人にふるまわなくてはいけないのは分かっていても、もっと子供みたいに素直に動いてもいいんじゃないか、と思っている。でも世の中にはそうじゃない“当り前”があって、それに従って生きなくてはいけない。マーキューシオが抱いていたのはそういうことに対するいらいらであったり、ロミオに対する羨ましさだったのでしょうね。きっといろいろなことを経験してきたからこその“中間”の人間なのだろうな、と思います」
のめり込むことで、かっこいい台詞も自然に出てくるようになる……かも?
――そのマーキューシオの今際(いまわ)の際(きわ)の台詞を以前、ロミオ役の古川さんがすごく好きとおっしゃっていました。「(照れて)僕はそう言われると、恥ずかしくなっちゃう。かっこいい台詞を言いたい、とかあまりないです。名場面とか、意識しないようにしたいです(笑)。
いろんな舞台をやってくるなかで、『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』でご一緒した柿澤勇人君は、ここまで入り込んで演じるのか、というくらいのめり込んでいて、本当にすごかった。僕も今回は、どれだけのめり込めるのかというのをポイントにおいてやりたいと思っています。それぐらいになれば、意識せずにかっこいい台詞が出てきたりもするんじゃないかな」
――小池さんはどんな演出家ですか?
「どの演出家の方もこだわりが強いけれど、小池さんはとりわけ美しさに対してこだわりがあると感じます。今日の制作発表のリハーサルでも、台を降りるときの足の降ろし方一つとっても“踵からじゃない、つま先から”とダメ出しされたり、勉強になりますね。でも時々発想が天才的すぎて、分からないこともあります(笑)。『レディ・べス』の時に、吟遊詩人役を“ドリフターズみたいにやって”と指示されて、それはどういう意味なんだろう、中世のイギリス人の役に、いかりや長介さんや加藤茶さんをどうやってすり込ませたらいいんだろう?と、仲間内でさんざん悩みました」
『レディ・べス』写真提供:東宝演劇部
「台本が上がっていないので何とも言えない部分もありますが、『ロミオ&ジュリエット』で僕が一番好きなのは、最後に大人たちが握手して終わるという光景、それまでの(対立という)“当たり前”を彼らが自分たちで変えてゆく瞬間が、すごく好きです。『ロミオ&ジュリエット』が世の中に訴えているのは、そこなんじゃないかな。世の中は自分の考え方次第で変わるのかもしれない。自分がちょっと変われば、敵と思っていた相手ともうまくやっていけるのかもしれない……と、舞台を観終わった後に感じていただけるといいなあ……。昨晩、寝ながらそんなことを考えていました(笑)。もちろん軽く観ようと思えば(シンプルに)“ああ、切ないな”と観ていただいていいのですが、僕は観てくれた方の人生にちょっとでも影響を与えられたらいいなと思っているので。
『ロミオ&ジュリエット』は、命を懸けられるほど何かを思う、芯の強さを描いた作品。平間壮一自身の強さも高めながら、“ロミジュリ”に向かっていきたいと思っています!」
『ロミオ&ジュリエット』製作発表記者会見で、共演の面々と。演出の小池修一郎さん(前列左)からは「平間君はとても達者(な俳優)なので、今回も面白くやってくれそう」と期待のコメントが。(C)Marino Matsushima
*次頁で平間さんの“これまで”をうかがいます。小学4年生でダンスに出会った壮一少年は、“もっと知りたい”一心で、中学2年にして北海道から上京。少しずつ、舞台経験を重ねてゆきます。