あるとき昔の資料を整理していたら、1994年頃のものがあれこれと出てきました。ちょうど住宅ローンの基準が変わった時期で、変動金利型は長プラ連動から短プラ連動へ変更、固定金利選択型の登場、融資枠の拡大など「新型住宅ローン」を分析したものも多いのですが……。

そのときの新しい変動金利は年4.0%、固定金利は年5.15%~5.65%程度であり、住宅ローンの超低金利化が進んだ現在と比べればかなり高く感じられるでしょう。

しかし、当時の金融専門家のコメントとして「現在の住宅ローン金利はかなりの低水準であり、これからさらに下がる可能性は低い」「十分に金利が下がったので、いまのうちに固定金利型を選ぶのが賢い選択」といった意見が並んでいます。

ところが、これらの予測とは裏腹にそれから後、長く続く超低金利時代へと突入したことはみなさまご存知のとおりです。

住宅ローンの金利にかぎらず、地価や住宅価格でも同じことでしょうが、将来の動向を予測することがいかに難しいのかを改めて感じながら、しばらく古い資料を読みふけっていました。

専門家でも難しい将来予測を消費者自身に課しながら、「住宅を選べ」「立地を選べ」「金利タイプを選べ」というのが住宅市場を取り巻く環境の一面でもあるわけです。

まだ当分この状況は変わらないでしょうが、何らかの不測の事態が起きたときにすべて「消費者責任」という言葉で片付けられても困ってしまうでしょう。常に慎重な判断が求められます。

話は大きく変わりますが、2006年の年末頃にはちょっと首を傾げたくなるような事件が報道されていました。

車検の代行業者が偽造された印紙を使い、その業者が死亡したために車の使用者に対して運輸局が再納税を請求しているというものです。

しかし、運輸局側の請求が通るとしたらおかしな話でしょう。車の使用者には何ら落ち度がなく正しく支払っているのにもかかわらず、国が二重払いを要求していることになります。

印紙の偽造を見破れなかった「役所の責任」はどこへやら、消費者への責任転嫁でしかありません。その後の顛末がどうなったのかは把握していませんが……。

不動産の登記でも登録免許税相当額は収入印紙で支払うのですが、その分のお金をいったん司法書士に預けることが通例です。

もし、その司法書士が偽造印紙を使って登記の申請をし、それを登記所が見破れなかったとしても、上記のような事態が起きれば住宅の購入者が再び支払わなければならない、などという話にもなりかねません。

そのようなことをする司法書士の先生はいないと信じるほかありませんが、くれぐれも公的機関の責任を消費者へ転嫁することがないように願いたいものです。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年6月公開の「不動産百考 vol.12」をもとに再構成したものです)


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