食品衛生法上、フグは食用を禁じられている!?
できれば、家庭などで処理しない方がよいです
フグは体内に毒をもっており、誤って有害部位を食べるといわゆる食中毒になり、場合によっては死亡します。2001年から2010年で、フグ食中毒が336件発生し、患者が485人、そのうち23人が亡くなっています。フグは1年中捕獲されていますが、フグ料理はてっちりや鍋が人気のためかフグ料理は秋から春にかけて提供されることが多いようで、食中毒も秋から春にかけて増える傾向があります。地域別では広島県、兵庫県、山口県、福岡県での発生が多くみられ、これらの場所では家庭で調理されているケースが多く、釣り人や家庭料理で毒性の高い皮や内臓を食してしまったことで発生することが多いようです。
意外と知られていないかもしれませんが、食品衛生法第6条により、フグは原則、食用に禁止されています。適切な処理により安全に食することができる場合に、例外として食用が許可されているのです。
フグを調理できる資格とは
フグを取り扱える資格は、国家資格ではありません。そのため全国で統一された資格はなく、条例で定められており、各都道府県によって異なります。資格の名称も、ふぐ調理師、ふぐ包丁師、ふぐ取扱者、ふぐ処理師、ふぐ調理士、ふぐ取扱登録者、ふぐ調理者など様々。資格を得る場合も、試験であったり、講習のみであったりと異なるようです。いずれにしても、無資格で適切な処理ができない状態で食用にするのは大変危険です。食べる人の命を守るためにも、正しい知識を身につけることが大切になります。フグ毒のテトロドトキシンとは
フグ毒の代表が、テトロドトキシンです。一言でテトロドトキシンといっても、毒の力は、フグの種類、組織、個体、地域、漁獲時期によって異なります。テトロドトキシンは、アルコールや水には溶けにくく、アルコール水や酸性溶液に溶けやすい毒素です。強力な神経毒で、筋肉にある末梢神経と中枢神経を麻痺させます。マウスに静脈内に注射して半分死亡する量が1kgの体重に対して8.7μgです。有名なトラフグの肝臓では、組織1gでマウスを100~999匹殺す毒性があり、カナフグの肝臓では、組織1gでマウスを1000匹以上殺す毒性があります。テトロドトキシンはわずか1mgで5000匹のマウスを殺す毒性を持っていて、人の致死量に相当すると考えられています。
フグ食中毒の症状
食べてから20分から3時間程度で症状が現れます。次のような段階で進行していきます。- 唇や舌のしびれ、指先のしびれ、歩くことが難しくなる
- 手足が動かない麻痺、嘔吐の後は運動不能になり、感覚がなくなり、言葉も発せなくなる
- 全身の筋肉の麻痺となり、呼吸困難になる
- 意識がなくなり、呼吸が停止し、心臓も停止
フグ食中毒の治療
フグ毒に対する治療方法はありません。唇や舌、指先のしびれの段階では、嘔吐させたり、胃の中を洗浄する胃洗浄が行われますが、呼吸する筋肉が麻痺すると誤って吐物が気管に入ってしまう誤嚥を起こす危険があるため、注意が必要です。早期に人工呼吸器などで呼吸を助けるのが有効な方法と言われています。テトロドトキシンは体内で8時間程度で代謝されるので、半日ほど人工呼吸を行うと回復に向かうとされています。
フグ食中毒の予防法
まず何よりもフグ調理の資格の持つ人による適切な処理をされたものを食べること。そしてフグ毒の危険が少ない部位を摂取することです。フグの種類によって食べられる部位は異なります。フグの名前も地域によって異なることがあるので、素人判断で調理することがないよう、危険を理解しておきたいものです。フグによって食べられる部位が異なります
クサフグ、コモンフグ、ヒガンフグ、サンサイフグ
■筋肉と精巣が食べられるフグ
ショウサイフグ、マフグ、メフグ、アカメフグ、ゴマフグ、ハコフグ(ハコフグ科)
■筋肉と皮と精巣が食べられるフグ
トラフグ、カラス、シマフグ、カナフグ、シロサバフグ、クロサバフグ、ヨリトフグ
ハリセンボン科では、イシガキフグ、ハリセンボン、ヒトズラハリセンボン、
ネズミフグ
ナシフグは漁獲された場所にとって食べられる部位が異なります。有明海、橘湾、香川県および岡山県の瀬戸内海海域で漁獲されたものは、骨を含む筋肉で、有明海、橘湾で漁獲され、長崎県が定める要領に基づき処理されたものでは、精巣です。
そして決して、フグの肝臓や卵巣などの内臓は食さないようにしましょう。皮も一部のフグでは危険です。フグ食中毒は、正しい知識を持っていれば防げる食中毒です。危険性を十分に理解して、美味しいフグ料理を楽しむようにしましょう。