ゲームをして「心の状態がよくなる」ことはありえるのか
スマホでゲームを楽しむことが心の健康につながる、という話は本当でしょうか? ゲームをプレーすることに、ストレス対策の基本が隠れているようです
具体的に報告されているのは、それまで気持ちが落ち込みがちだったり、対人恐怖症的だったりして、室内に引きこもりがちで、人と言葉を交わす機会もあまりなかった方たちが、ポケモンGOによって外に出て、心の状態がよくなったのを実感した、というものです。
もしゲームをすることで気持ちが楽になったという実感がご本人にあるのなら、それだけでも有益なことといえるかもしれません。これまで心の健康維持に役立つとゲームがもてはやされたことはなかったのではと思いますが、ポケモンGOはこの意味でも、もしかしたら先駆的な存在になる可能性があるかもしれません。ではポケモンGOのどのような要素が、心の状態にプラスに働きかけているのでしょうか。
ストレス対策の基本?ポケモンGOの意外な要素
心の健康を守るためには、上手なストレス対策が大切なのは言うまでもありません。ストレスは避けられないものですが、心身にさまざまな不調を生み出してしまいます。例えば、大事な仕事を控えて緊張した状態になるとトイレが近くなるなどの身体への変化が起きたり、強いストレスを感じると、暴飲暴食や衝動買い、ギャンブルなどの衝動を抑えられなくなってしまうという方もいます。
また、ストレスが深刻になると、心の病気の引き金になってしまう可能性もあります。実際、うつ病や統合失調症など心の病気は脳内の神経生理学的な問題が原因ですが、そのきっかけはしばしば生活環境のストレスなのです。また、心の病気から回復していく過程で、再び症状が悪化するような場合も、これらのストレスが大きな要因になります。
「ストレス対策」の基本として、栄養バランスの取れた食事や、充分な睡眠時間、散歩やジョギングなどの運動習慣、家族や友人と楽しく過ごす時間、自分ひとりで楽しむ時間などが挙げられます。
では、ポケモンGOの場合はどうでしょう? 冒頭のような引きこもりがちだった方を例にあげると、ポケモンGOがきっかけになって外に出る必要性が生まれ、ポケモンを探すうちに結果的に適度な運動ができていたり、外出先で同じ目的の人と出会って言葉を交わすことになったりし、家に帰って来た時には気持ちが楽になっていた、といったパターンが多いようです。ストレスなくできる運動や、同じ趣味を持つ人とのちょっとしたコミュニケーション、自分自身で楽しめる娯楽など、ポケモンGOにはストレス対策の基本の要素が結果的に多く盛り込まれている点には注目したいところです。
ポケモンGOで健康になれるのはどんな人?
ポケモンGOにストレス対策によい要素がたくさん含まれていそうだとはいえ、心の健康のためにわざわざゲームをしなくても……と思われる方もいるかもしれません。実際その通りで、そう思われた方はすでに心の健康維持は自分でうまくできており、あまり問題がないのではないかと思います。
しかし、心の調子が普段からあまりすぐれないという方には、ポケモンGOが持っている要素をぜひ参考にして考えていただきたいと思います。先にあげたストレス対策の基本ですが、今さら言わずもがなだとは思うのですが、それらが習慣になっていなければ、日々実践していくのはなかなか難しいものです。また、見方をかえれば、こうしたストレス対策があまり身についていない事が原因で、心の調子があまりすぐれなくなっている可能性もあります。
実際、散歩などの運動が心身に良いと分かっていても、始めるきっかけも続ける意欲ももてなければ、習慣として定着させるのは難しいでしょう。同じように、誰かと楽しい会話が弾めば気持ちが軽くなるとわかっていても、それは相手がそばにいればの話です。また、ネガティブなことに思考がとらわれて気持ちがうかないならば、認知行動療法的なアプローチでその思考にストップをかける必要があります。それには何か別のことをしたり、考えたりするのが有効です。そういった場合はポケモンGOをプレーして……とは言いませんが、手段のひとつとしてこのゲームが持つような楽しい要素を自分自身の楽しみに当てはめて考え、楽しくできそうなストレス対策法を探したり、試したりしてみることは良いことだと思います。
以上、話題のポケモンGOの意外な効果として、心の健康維持につながる可能性について解説してみましたが、最後にこれらのゲームを楽しむときは歩きスマホや悪いマナー、不慮の事故につながることがないように充分お気をつけください。