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吐き気止め薬の選び方・使い方

胃の調子が悪い、食べ過ぎた、飲み過ぎた、乗り物酔いしやすい……吐き気の理由は様々です。市販薬および処方薬の主な吐き気止めの種類と選び方、使い分け方を解説します。

三上 彰貴子

執筆者:三上 彰貴子

薬剤師 / 薬ガイド

吐き気止めを選ぶ前に、まず原因を探ろう

自分の吐き気の症状や原因に合った吐き気止め薬を選ぼう

自分の吐き気の症状や原因に合った吐き気止め薬を選ぼう

「気持ち悪いな、何か薬を……」と考えたとき、まず考えてほしいのが「何か思い当たる原因があるかどうか」です。たとえば、いつもストレスで胃の調子が悪い、食べ過ぎた、飲み過ぎてしまった、乗り物酔いしすい、などです。

原因が推測される吐き気で、軽症なものや短期的なものでしたら、市販薬での対応は可能です。しかし原因が不明な場合、もしかすると脳や眼、心臓、その他ホルモン異常などの疾患が隠れているかもしれませんので、早めに受診してください。

今回は原因別に、主な吐き気止めの市販薬や処方薬について解説します。
 

吐き気の原因が明らかなら、薬で対処が可能

吐き気を感じる原因として考えられるのは、たとえば以下のようなものです。
  • ストレスなどの原因による胃酸の出過ぎで、胃液が逆流して起こる吐き気
  • 食べ過ぎや胃のもたれによる消化不良で起こる吐き気
  • お酒の飲み過ぎやそれによる二日酔いで起こる吐き気 など
こういった原因からの吐き気には、胃薬で対応します。

また、乗り物酔いによる吐き気も、原因が明らかなものの一つです。乗り物に乗るストレスや緊張を感じやすい子どもに起こることが多く、内耳にある平衡感覚を司る三半規管の未発達によるものとも言われています。

この場合には、乗り物酔いの薬での対応になります。ただし、成人のみ適応のある乗り物酔いの薬は、子どもには絶対に使わないでください(文末※1を参照)。
 

ウイルス性胃腸炎による吐き気や嘔吐は安易に止めないこと

ただ、食中毒ロタウイルス・ノロウイルスなどによる吐き気や嘔吐には、安易に吐き気止めとして胃薬や下痢止めを使わないでください。吐き気や嘔吐を止めてしまうことで、症状が長引いたり危険な状態になったりすることもあります。

こういったケースでは、経口補水液などの水分補給に努めて様子を見ます。辛い場合、脱水症状でしびれや痙攣が起こる、意識が朦朧とするなど酷い場合には、すぐに受診してください。

なお、ビフィズス菌などの整腸剤でしたら服用しても大丈夫です。
 

吐き気に効果のある市販薬

胃薬
ストレスにより胃がきりきり痛かったり、胃酸が逆流して口の中にすっぱいものが出ているようであれば、胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護するような薬がよいです。
食べ過ぎによる吐き気などには、消化酵素や荒れた胃粘膜に作用する成分が入っているものがよいです。
酔い止め
酔い止めは、乗り物に乗る15~30分ぐらい前には服用するようにしましょう。吐き気を感じてから服用しても効果がみられないか、効果が弱いことがあります。また、空腹でも飲むことができますし、水なしで飲める飴のようなタイプもあります。お子さんが服用する際には、飴が喉に詰まらないように注意してください。

また、子どもは慣れない空間での緊張から酔うことがありますので、前日の十分な睡眠と共にリラックスさせるように促したり、洋服でウエスト部分がきついものは避けるようにするなど、薬以外の工夫もしてくださいね。
 
以上、代表的な薬を紹介しました。薬によっては、基礎疾患があると服用できない場合もあります。購入時に薬剤師や登録販売者に相談したり、添付文書の説明をよく読んでから服用してください。
 

医家向けの吐き気止めの薬(処方薬)

一般的に「気持ち悪い」「吐いてしまった」といった時によく処方される、吐き気止めの薬には、以下のようなものがあります。
 
  • ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)
    胃腸の機能を整えることで吐き気を抑えます。そのため、胃の動きが弱まっていて食欲がないといった時に使うこともあります。ただし、妊婦には禁忌ですので、絶対につわりの吐き気には使わないでください。
  • プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)
    同様に胃腸の機能を整えて吐き気を抑えます。こちらは、つわりのために妊婦にも用いられることがあります。
  • トラベルミン(一般名:ジフェンヒドラミン、ジプロフィリンの合剤)
    めまいによる吐き気に使われることがあります。例えば内耳にある平衡感覚を司る三半規管や前庭などの調子が悪く(むくんだり、微細な耳石がはがれ落ちるなど)、メニエル病や慢性的なめまいを感じることがあります。そのめまいなどに使われます。

その他、薬の服用によって吐き気を感じることがあります。例えば、抗うつ薬やアルツハイマー治療薬などの中枢に効果をもたらすような薬剤は、薬に慣れるまで吐き気を感じることがあります。2~3週間ぐらいで吐き気が落ち着くとは言われていますが、辛いようでしたら、医師に相談して吐き気止め(ナウゼリンなど)を処方してもらうか、どうしても酷いようでしたら、薬の用量を減らすか変えてもらうようになるかと思います。
 

なかには危険な吐き気も

ここまでは原因がわかる吐き気について触れてきました。自分で理由が分からない、薬を飲んでも良くならない、吐き気以外の症状が出ている場合には、なるべく早く受診を。

以下に挙げるのは、注意すべき吐き気と考えられる病気です。
  • 脳関連
    頭蓋内圧が上昇することで吐き気をもたらすことがあります。脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、脳炎などです。
  • 消化器系
    胃の症状も長く続くようでしたら潰瘍や腫瘍の可能性もあります。また、虫垂炎(盲腸)、胆のう炎、肝炎、膵炎(背中も痛くなる)などといった炎症によっても吐き気が出ることがあります。
  • 心臓
    心筋梗塞で、心臓に近い胃がムカムカするように感じることがあります。脱水症状があったり過度の飲酒(脱水になります)があったりしたときには要注意です。胃薬を飲んでも良くならないようでしたら、すぐに受診してください。ちなみに筆者の友人は心筋梗塞に気付かずに胃薬を飲み続けて、最終的には脳に血流がいかずに少し障害が残ってしまいました。

  • 眼圧が上がることで頭痛や吐き気をもたらすことがあります。急に眼圧が上がる急性緑内障は、失明の危険性もありますので早めの対応が重量です。
  • その他
    甲状腺などのホルモン異常などでも吐き気が起こることがあります。

以上、吐き気の症状から見た薬の選び方・使い分け方について紹介しました。症状が長く続くようでしたら、早めに受診をして根本的な原因を探るようにしてください。

▼吐き気に悩む方にはこんな情報も
※1)成人用にアネロンニスキャップという製品がありますが、局所麻酔薬で胃の表面を麻痺させて吐き気を感じにくくする「アミノ安息香酸エチル」という成分は、乳幼児にはNGです。メトヘモグロビン血症を引き起こし、酸素不足になることがあり危険です。子どもが誤飲しないように注意しましょう。
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