成分・効能が処方薬と同等のスキンケアコスメも! スキンケア医薬品とは
毎日のスキンケアではなるべく効果の高いものを選びたいもの。処方薬と同等の成分を含んだ「スキンケア医薬品」ですが、特に保湿剤は充実しているようです
「Pharmaceutical」から作られた造語で、「市販品(化粧品)だけれど、医薬品のような高い効果をもっている製品」のことを指します。これにあたる日本語に、最近「スキンケア医薬品」というものがあるようです。
日本のスキンケアに関する市販品にも、クリニックで処方されるのと同等の成分を含む製品が多数発売されていることは、意外とまだあまり知られていません。病院やクリニックで処方されるぬり薬の方がよく効くような先入観をもっている人も多いかもしれませんが、一部の製品、特に保湿薬では市販品と処方薬の成分がまったく同じ、ということもあるのです。そうすると、クリニックを訪れる手間と待ち時間を考えたら市販品を買ったほうが早い、ということも多いでしょう。
スキンケア医薬品にはどのような製品があるのか
スキンケア医薬品としてドラッグストアもしくはAmazonなどの通販で手に入るのは、皮膚科のクリニックで処方するぬり薬の中でも比較的安全で医学的指導が必要ない製品です。今回はクリニックで処方される薬と同等もしくは近い効能の成分が入った製品を紹介しますので、法律上の「医薬部外品」とは別と捉えてください。具体的には- ニキビケア
- くすみ・色素沈着ケア
- 育毛剤
- ステロイド外用剤
- 保湿剤(ヘパリン類似物質、尿素)
といったカテゴリーにわかれます。
1. ニキビケア
過酸化ベンゾイルやアダパレン、抗生剤といった皮膚科でのニキビの処方薬に含まれる成分は日本の市販品には残念ながら含まれていません。
アゼライン酸と呼ばれる、アメリカではAzelexまたはFinaceaという名前でニキビ治療に保険適用で処方されている成分があります。こちらは日本では保険適用の処方薬ではありませんが、ロート製薬からAZAクリアという名前でクリニック専売品として発売されています。AZAクリアのように20%の高濃度のものは市販では手に入りませんが、濃度が低めで保湿を兼ねて使用できるベーシックケアAZなどアゼライン酸が含まれた製品がオンラインで購入可能です。アメリカから逆輸入されているアゼライン酸入りの製品をAmazonなど通販で見かけることもあります。
2. くすみ・色素沈着ケア
くすみのなかでも肝斑にはトラネキサム酸という飲み薬をクリニックで処方することがあります。トラネキサム酸とビタミンCが配合された「トランシーノ」という成分が処方薬と同じ製品は市販でドラッグストアもしくはオンラインでも購入が可能です。
トラネキサム酸はくすみ・色素沈着治療に塗り薬としても使われていて、クリニック専売品としてWiQo社のリバースセラム、プラスリストア社のTAホワイトクリームMDなどが有名です。トラネキサム酸は市販の化粧品にも含まれていることがあり、ドラッグストアやオンラインで購入できます。資生堂のHAKUやエリクシールなどが知られています。
3. 育毛剤
薄毛として多いのはAGAと呼ばれる男性型脱毛と、分け目から徐々に薄毛が広がる女性型脱毛です。どちらもクリニックでは塗り薬、飲み薬、注射薬を組み合わせて治療することが多いですが、塗り薬に関してはクリニックでの治療と同等の成分が手に入ります。
ミノキシジルという発毛効果のある成分があり、それを含んだ製品にリアップもしくはミノキといった市販品があります。5%の高い濃度のものが男性用は市販していますので、半年以上継続して使うと効果がある可能性があります。ただし、市販でも1本7000円以上と高価なので、クリニックから買った方が安い場合もあります。
女性用ではリアップリジェンヌというミノキシジル1%の低濃度の製品が市販されています。こちらは5%の製品が海外にはありクリニックによっては保険外で処方していることがありますので、効果としてはクリニックの製品の方が高くなっています。
4. ステロイド外用薬
クリニック処方薬のステロイド外用剤は大きく分けて強さが4段階で、下の2段階の弱めのステロイドは市販品として手に入ります。ベトノベート、リビメックスなどが有名で、成分自体は処方薬の弱めのステロイド外用剤とまったく同じです。ステロイドの塗り薬は長く続けると副作用でニキビができることもありますので、注意が必要です。治らない場合は皮膚科を受診しましょう。
5. 保湿剤
ヒルドイドというヘパリノイドを保湿成分として含むクリームやローション、ケラチナミン・ウレパール・パスタロンといった尿素を保湿成分に含むクリームが挙げられます。どちらも同等の保湿成分を含んだ製品が市販品として購入できます。
処方薬で有名なヒルドイドもドラッグストアで買える!
ヒルドイドの保湿成分であるヘパリン類似物質を同じ濃度で含んだ製品が実はドラッグストアで市販されている
クリニックでもらえる保湿薬といえばヒルドイド、というのが定着しているため、ヒルドイドが保湿薬の代名詞になっているようです。そして、わざわざヒルドイドをもらうためにクリニックを訪れる患者さんもいます。症状がほとんどないにもかかわらず保湿薬だけのためにクリニックにわざわざ立ち寄り、長い時間待つ必要はあるのでしょうか?
ヒルドイドの保湿成分はヘパリノイド、もしくはヘパリン類似物質と呼ばれるムコ多糖類です。詳細は「ウワサの「ヒルドイド」の正しい効果・効能とは?」を参考にして下さい。処方薬のヒルドイドにはクリーム、ローションともにヘパリン類似物質が0.3%で含まれています。この成分の安全性は長い処方経験で確立されていますので、現在では市販品でもヘパリン類似物質というメインの成分に関しては同じ濃度で手に入ります。
商品名で言うと、『さいき(Saiki)』『ヒルマイルドクリーム・HPローション』『アットノン』といった製品です。執筆時点でのAmazon.co.jpでの価格は、さいきが30gで1045円、ヒルマイルドクリームが60gで1228円、HPローションが50gで1652円となっています。処方薬のヒルドイドは25gでクリーム、ローションともに約600円ですので、3割負担で180円程度になります。
たしかに値段だけを見ると処方されるヒルドイドの方が安いのですが、クリニックを訪れる手間と時間、そしてクリニックでは診察料や処方料といったほかのコストがかかります。また、医療保険でカバーされているために正規の価格(薬価)の3割で買えるヒルドイドですが、本来は病気の治療のための保険です。
保湿薬だけをクリニックでもらうというのはあるべき医療保険の使われ方ではありません(アメリカでは保湿薬は保険でカバーされず、皮膚科医はCetaphil、EucerinやCeraVeといった定評のある市販のブランドを推奨します)。ヒルドイドだけをもらいにクリニックにかかるのであればAmazonやドラッグストアでヘパリン類似物質を含んだ市販薬を買うのがよい方法だと思います。
アメリカの皮膚科では写真のようなCetaphilやCeraVeといった効果に定評のあるブランドの保湿薬を勧める。いずれも10~20ドル程度と安価。日本のドラッグストアにも優れた製品が多数置かれている。
二の腕のブツブツや手足のガサガサに効く尿素クリーム
皮膚科でヒルドイドと並んで処方される保湿薬は尿素を含んだものです。ケラチナミン、ウレパール、パスタロンといった名前で知られる尿素10~20%を含んだこれらのクリームは、保湿とともに角質の成分を溶かして皮膚のガサガサを改善する作用があります。皮膚科で処方されるケラチナミン。尿素20%を含み、表面のガサガサした角質を溶かして皮膚をなめらかにする作用があります。ヒルドイド同様、同じ濃度の成分を含んだ市販品がドラッグストアで手に入ります。
『ニノキュア』『ケラチナミンコーワ』『尿素クリーム』といった名前で販売されていて、どれもヘパリン類似物質の製品よりも安価です。尿素と聞くと古いタイプの保湿剤と思われるかもしれませんが、世界的にはヘパリン類似物質よりも一般的に用いられる保湿の成分です。市販品でも濃度を含めて処方薬と成分が同じですので、保湿一般、そして特に手や足、二の腕のガサガサには効果を実感できると思います。
尿素20%が含まれたニノキュアやサリチル酸が含まれるセナキュア。角質を溶かす効果があり、二の腕や背中のガサガサに効果的。
まとめ
スキンケア医薬品はいい製品が多数発売される一方で、効果がないことが医師の間では知られているにもかかわらず、〇〇に効果がある、といった謳い文句で売られている商品もあり、玉石混交とも思えるのが現状です。もし自分の使おうとしている市販品の効果について不安があれば、かかりつけのお医者さんにパッケージの成分を見せて聞いてみるのがよいでしょう。皮膚科医は市販品のすべてを知っているわけではないので商品名だけでは詳細がわかりませんが、成分があれば適切なアドバイスをくれるはずです。