疲労回復法

短い夏休みにも!週1の温泉で動脈硬化予防にも期待?

温泉入浴はなんとなく体に良いということはみんな知っています。でも、何が体にいいのか具体的に知っている人は少ないかもしれません。今回は温泉が動脈硬化予防につながる可能性があるかもしれない、という最新の研究結果をご紹介します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

夏休みは温泉で疲れをリフレッシュ…温泉の健康効果は?

熱海温泉

週1温泉がお勧め(熱海温泉:写真提供熱海市)

今年の夏休みは「九州ふっこう割」で温泉天国・九州にお出かけの方も多いことでしょう。温泉は、観光やレジャーの他、疲れを取ったりリラックスしたりするために入る人も多いと思いますが、実際に健康効果も報告されています。環境省が発表している温泉の「適応症」では、温泉がいくつかの症状に効果があることも示されています。

温泉入浴習慣のある人は悪玉コレステロールが低い?

私たちの研究グループは日本有数の温泉地、静岡県熱海市で、熱海市や熱海市医師会の協力を得て2014年に調査を行いました。この年に同市の特定健康診断を受けた1092人の市民にアンケート調査を実施。
  • 週1回以上の温泉入浴習慣の有無
  • 性別
  • 65歳以上・未満
でグループ分けし、特に温泉入浴習慣の有無で、健康診断項目にどのように違いがあるのか、統計学的に分析しました。結果は2016年5月、日本温泉気候物理医学会・学術集会で発表しました。

その結果、65歳未満では、温泉入浴習慣がある男性は、ない男性に比べてLDLコレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」の値が低かったのです。また、65歳以上では、温泉入浴習慣がある女性は、ない女性に比べてHDLコレステロール、いわゆる「善玉コレステロール」の値が高かったのです。いずれも「統計学的に有意差がある」というもの、つまり統計学的な計算をしたところ意味のある差があった、というものでした。

悪玉コレステロール値が高いと動脈硬化を引き起こす危険性が高まります。逆に、善玉コレステロールは悪玉コレステロールの働きを阻止し、動脈硬化を防ぐと言われています。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中の原因となるものです。つまり、この結果は温泉入浴習慣がコレステロール値に影響し、健康効果をもたらす可能性が示されたもの、と言えるでしょう。

なぜ温泉で悪玉コレステロールが下がるのか?

温泉に入ることでストレスの改善や各種ホルモンが変化し、結果、コレステロールが改善すると考えられています。また、温熱効果による代謝改善作用もあるでしょう。このような温泉のコレステロール改善作用は以前から研究報告がありました。このような研究結果をうけて、環境省の温泉の「適応症」にも「軽い高コレステロール血症」が入っています。

しかし、これまでの研究は主に少人数を対象にした実験的な研究結果によるものでした。温泉地に滞在して1~3週間程度滞在して療養する伝統的な温泉の利用方法を湯治と言いますが、この湯治の前後でコレステロールが改善すること観察されてきました。一方、今回の研究は湯治などの短期間の温泉作用ではなく、習慣的な温泉利用の効果を1000人超の大人数で調査したという特徴があります。

温泉水に浸かるだけが温泉の効果ではない

温泉に浸かることは、水道水の沸かし湯とは違い身体への各種効果があることが多くの研究で明らかになっていますが、それだけですべてのことが説明できないのが温泉効果の奥が深いところです。なかには、温泉水に浸かることによって薬のように効果が出ると考える方もいるようですが、私たち温泉医学者はそのようには捉えていません。

例えば、温泉施設に行くこと自体による運動量の増加、広い湯船にゆったりと浸かること、良い景色を眺めること、温泉に皆で入ることによる人との交流や会話をすることによるストレス改善など、さまざまな要因をすべて含めての温泉効果と考えるのが現実的です。

気になる温泉の健康効果…詳細な研究はこれからに注目です

今回の研究では温泉入浴の頻度のみ解析しており、どこの温泉にどんな入り方をしているのかまでは情報を集めていません。そのため例えば泉質についても、今回の研究では様々な種類が混ざって解析されています。熱海の温泉は塩化物泉が多いのですが、今後、どの泉質の温泉に入浴しているのかも調査する必要があります。また、湯の温度や入浴時間といった具体的な入り方の比較もこれからの課題です。

しかし、週1回の温泉入浴は実践しやすい手軽な方法です。週末や、また短い夏休みでも、健康づくりも兼ねて温泉に出かけてみませんか。
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