「購入vs賃貸」の議論、金利低下の影響は?
賃貸と購入、条件を揃えるのは難しいけれど、金利条件で結果が大きく変わる
【シミュレーションの前提条件】
世帯主30歳、配偶者30歳、子ども2人(2歳、0歳) 4人家族を想定。東京都23区内、地下鉄某駅から徒歩5分、広さ約70平米、3LDKの物件を想定
●マンション購入の前提条件
・物件価格は4000万円
・購入時諸費用200万円(物件価格の5%)
・管理費は毎月1万2千円。修繕積立金は毎月5千円
・固定資産税は毎年12万円。火災保険料は毎年2万円(地震保険込み)
・住宅ローンは借入金額3600万円、金利は1.10%(手数料定額型)、30年固定、元利均等返済
・頭金 600万円
※東京23区内、A駅徒歩5分、新築マンション
●賃貸マンションの前提条件
・30歳から55歳になるまでは家賃15万円の物件に住み、子どもが独立後、55歳からは、同じ賃貸マンションの中で家賃11万円、約60平米、2LDKの物件に住み替え
・管理費・共益費は家賃込み。更新料2年ごと1ヶ月分。家賃の上昇率は見込まない。
※東京23区内、A駅徒歩3分(築20年)、同じマンション内でダウンサイジング
■マイナス金利下のシミュレーション
現在の金利水準をもとに、40年間の購入と賃貸の比較シミュレーションを行いました。下のグラフで、棒グラフが購入の場合の住居費累計で、折れ線グラフが賃貸のものです。購入6204万円に対し、賃貸6748万円で、購入に軍配が上がりました。60歳住宅ローン完済後、購入の場合の年間コストは一気に少なくなり、64歳で逆転します。将来の修繕積立金の価格改定や室内のリフォーム費用を見込んだとしても、購入した方が、生涯の住宅費用は安く抑えられそうです。
※「購入vs賃貸」シミュレーション(1)
■アベノミクス前の金利下のシミュレーション
少し視点を変えて、今から8年前の平成20年6月の金利水準で、同じ条件でシミュレーションしてみました。8年前のフラット35の金利は、21年超の場合3.05%でした。先ほどと同様に40年間のシミュレーションを行うと、購入7475万円に対し、賃貸6478万円(変わらず)で、今度は、賃貸に軍配が上がりました。購入と賃貸の住居費累計が逆転するのは、80歳の時です。購入の場合は、買ったマンションが資産になるので、その分を考えれば購入の方がお得という考え方もできますが、お金のフローにだけ着目すれば、購入と賃貸の損益分岐点は、今回のケースでは、男性の平均寿命相当の80歳なので、どちらが得かという判断は難しいと言えます。
※「購入vs賃貸」シミュレーション(2)
■マイナス金利下では、マイホーム購入はお勧めか?
購入と賃貸の比較シミュレーションは、同じ物件で賃貸と購入の比較がなかなかできない(中古マンションの場合可能ですが……)ので、あまり意味がないと言われています。今回は、できるだけ同じような条件の物件を選択しました。同じ条件でも、8年前の金利水準と現在のマイナス金利下の金利水準では、シミュレーションにかなり差が出ることに気づきます。「住み続けることを前提に、気に入った物件と、購入するための前提となるライフプランとマネープランがあるなら、今は、購入がおすすめ」と明確に言えるでしょう。もともと、マイナス金利政策が、住宅ローンの金利を押し下げ、住宅購入を含めた消費や投資を喚起するため、ということを考えると当然の結論とも言えます。
>>住宅ローンの永遠のテーマ「固定vs変動」シミュレーション