アドバイス1 住宅ローンは60歳より前の完済を目指したい
まず、繰上返済についてですが、行う条件として、資金的に余裕があるのはもちろん、今後ライフイベントで大きな支出が予定されていない、毎月しっかり貯蓄できているといったことがあげられます。相談者の場合、150万円の繰上返済をしても100万円手元に残ります。独身女性であれば、100万円あれば予期せぬ支出があっても、ほぼ対応できるはずです。毎月貯蓄もできていますし、繰上返済を行うこと自体、問題ありません。
たとえば、購入から1年後に150万円を繰上返済した場合、支払利息が約37万円軽減され、返済期間は2年8カ月短縮されます(※1)。目標の60歳完済であれば、次にいつ行うかにもよりますが、あと1回、20万~30万円程度の繰上返済で達成されるでしょう。
ただし、できればもっと完済時期を早めた方がいいと、個人的には考えます。相談者の方は、考え方もしっかりされているし、家計管理も実に優秀。おそらく、今後お金で大きく困ることはないでしょう。それでも、リストラについては十分に気を付けておくべきだと思うからです。
本来あってはならないことですが、40代以降の独身女性は、働き手としてのスキルに関係なく、リストラの対象になりやすい傾向が日本社会には少なからずあります。そのときに慌てないためにも、家計負担の大きな住宅ローンはなるべく早く完済しておきたい。60歳と言わず、もっと早め目の完済、もっと高い目標でもおそらく問題なくクリアできるはずです。
アドバイス2 投資は確定拠出年金をメインに
投資と貯蓄のバランスですが、独身ですでに持ち家、貯蓄もきっちりできていますから、その点でリスクは取れます。とは言え、個人型の確定拠出年金で投資信託を買っていくとなると、それが上限(※2)の月2万3000円。さらに別途、投資信託を月3万円購入となれば、やはり投資に偏り過ぎていると言わざるを得ません。毎月の投資額と貯蓄額の割合は、投資に比重を置いたとしても5対5まで。それ以上は危険と考えてください。確定拠出年金は、目的が「老後資金づくり」と明確ですし、節税効果もあります。掛金は上限の月額2万3000円でいいでしょう。一方、それとは別に投資する分については、当初1万円程度に抑えてもいいのでは。変額終身保険に加入していますが、それ自体、投資信託を間接的に買っていることになります。それが毎月1万5000円。そう考えれば、別途1万円投資信託を買うだけでも、それなりにアグレシッブな資金運用をしていることになるわけです。
アドバイス3 保険で備えず、貯蓄でまかなう
保険については、がん保険、介護保険、個人年金保険のいずれかを検討されているようですが、これ以上新たに加入する必要はないと思います。がん保険はがん家系などの理由でよほど心配ならば加入してもいいでしょうが、かかる医療費は、2本の終身保険も貯蓄がわりと考えれば、十分捻出できるはず。保険に加入せず、浮いた保険料を貯蓄に回せば、結果的にそれも治療費の一部になるわけです。介護保険も同様。いざとなれば貯蓄でまかなうという発想の方が、相談者の場合には合理的です。個人年金保険も、終身保険で老後資金づくりをしていることを考えれば、予定利率も高くない今、これ以上、保険で備えなくてもいいと思います。
ともあれ、相談者の場合、節約よりも貯まっていく資金をどう有効に配分するかが、今後のマネープランの大きなポイントです。そういう点では、まずは住宅ローンの早めの完済。あとは、確定拠出年金を利用しながら、バランス良く、老後資金づくりに備えるという方向がいいと考えます。
(※1)利用されている住宅ローンの金利は返済額等から0.8%と推測して試算
(※2)企業年金等の対象になっておらず、かつ企業型の確定拠出年金の対象にもなっていない企業の従業員が個人型を利用する場合の掛け金の月額の上限
教えてくれたのは……
All About「資産運用」ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきたFP。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに詳しく「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスしています。
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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