入れた人の半数が後悔… 増加する「タトゥー除去」の需要

タトゥーイメージ

最新のレーザー治療技術でも完全に消し去るのは難しいタトゥー。入れる前に将来後悔しないか、慎重に考えることも大切です

欧米に比べればまだまだ少ないですが、日本でも若い人を中心に、タトゥーを入れている人を見かけることは珍しくありません。芸能人のタトゥーについて、話題になることもあります。

しかし、入れるときにはカッコいいと思って彫ったにもかかわらず、数年後に後悔する方は後を絶ちません。半数近くの人がタトゥーを入れたことを後悔することがあるとも言われており、タトゥー除去のニーズは年々増えています。タトゥーを消したいとおもうきっかけはさまざま……就職に不利だと感じた、結婚や出産を機に消したいと思い始めた、温泉やプールでの制限が気になる、などが挙げられます。

2013年には、アメリカ全体で10万件のレーザーによるタトゥー除去術が行われました。レーザーは年々進歩を遂げており、最新のレーザーを用いれば効率よくタトゥー除去ができるようになりましたが、それでも完璧に元の皮膚に戻すことは難しいのが現状です。タトゥーを入れる前に、将来後悔することにならないかどうか、よく考えることが何よりも肝心になります。

タトゥー除去の方法は? セルフ除去の危険性・切除のデメリット

タトゥー2

自分でタトゥー除去ができると謳う薬品や機器も販売されていますが、傷になる、瘢痕ができる、色素が抜けてしまうなど多くのトラブルが報告されています。皮膚科医としては使用は控えるべきと考えます

ウェブを検索すると、自分でもタトゥー除去ができるというクリームなどの塗り薬や機器が紹介されていることがあります。これらはクリニックで行われているレーザーによる治療に比べると安価で気軽に試せそうなため、検討してしまう方もいるようです。しかしいずれも、傷になる、瘢痕(はんこん)ができる、色素が抜けてしまうなどの危険性をはらんでいますので、手出ししないことが賢明です。皮膚科領域の専門誌でも自分でタトゥー除去を行うことの危険性が度々指摘されています。

以前見た専門誌では、トリクロロ酢酸という皮膚にダメージを与える薬品をインターネットで購入してタトゥー除去を試みた例が報告されていましたが、その部位の皮膚が死んで剥がれてしまい、他の場所から皮膚を移植する植皮施術を受けることになった例が紹介されていました。このように、さらなる外科的治療を要する事態になりかねない化学薬品を使って自分でタトゥー除去を試みるのは非常に危険です。

外科的にタトゥーが彫ってある部位を切除する、という治療法もありますが、痕が目立ちますし、侵襲が大きすぎます。タトゥーの色素にアレルギーができてしまい、色素が入ってしまった皮膚ごと除去しなければならない、という場合以外には勧められません。

現状の治療法で最適なタトゥー除去法は「レーザー治療」

タトゥーを消したいと思ったら、まずレーザーを検討しましょう。保険は効きませんが、タトゥー除去をレーザーで行っている美容皮膚科のクリニックは多く見られます。Webを見るとタトゥー除去のメニューがあり、値段も書いてあるので参考になると思います。

タトゥー、レーザー

レーザー治療が非常によく効いた例


タトゥー除去で最近話題になっている新技術がピコレーザーです。英語ではpicosecond laserと呼ばれ、非常に短い間隔(500ピコ秒前後、なんと1秒の10億分の1以下!)でレーザーを当てることによって、タトゥーの色素を粉々に破壊します。そして、非常に小さい粒子となったタトゥーの色素は、皮膚から自然に除去されます。

代表的なピコレーザーにはCynosure社のPicoSure(ピコシュア)、Cutera社のEnlighten(エンライトン)、Syneron-Candela社のPicoWay(ピコウェイ)がありますが、いずれもタトゥー除去に用いられています。

ピコレーザーが出る前に最もよく使われていたのが、Qスイッチレーザーというタイプのレーザーです。こちらもタトゥーの色素に反応しますが、nanosecond laserと呼ばれ、ナノ秒の単位、ピコレーザーに比べると10~100倍のパルス幅でしかレーザーを照射できないため、色素をピコレーザーのように粉々にできません。

また、妊娠中もレーザーによるタトゥー除去術は受けられますか?と質問されることがありますが、 妊娠中にはレーザー治療は行いません。緊急性がないため出産後の治療で十分間に合うこともありますが、レーザー治療は妊娠中の方に対しては発売前にテストされていないので、大丈夫と言い切れる保証がないのです。

ピコレーザーと従来型レーザーの治療経過の違い

この2つのレーザーの違いをまとめると、ピコレーザーのほうが

1. 治療が圧倒的に早い
2. ダウンタイムが少ない

となります。従来型のナノセカンドレーザーでは10~20回ほど治療してようやく効果がある程度出る、という印象でした。それに比べピコレーザーでは1回の治療でも効果を実感でき、3~4回もすれば多くの部分の色素が消えます。
脚、レーザー

レーザーをもってしても完全にタトゥーを除去することは困難だが、色は消退し目立たなくなる


ダウンタイムというのはレーザーを当てたあとに、皮膚がダメージから通常な状態に戻るまでの期間です。従来型のレーザーではタトゥーの色素周囲の正常な皮膚にも熱ダメージが伝わり、水ぶくれやかさぶたができる高いリスクがありました。ピコレーザーを使うことで、タトゥーの色素だけをより少ない回数で、より少ないパワーで、より強力に破壊することができるので、周囲の正常な皮膚へのダメージも最低限に抑えることができます。そのため、ダウンタイムが少なくてすみます。

ピコレーザーによる痛みは従来型のレーザーに比べて少なく、小さい範囲であれば麻酔なしで、範囲が広ければ表面麻酔のぬり薬を使ってからレーザーを当てます。痛みは色や範囲によっても変わってきますが、従来のナノセカンドレーザーの時のように注射麻酔は必要にならないことが多いです。

また、ピコレーザーは532 nmや755 nm、1064 nmといった複数の波長の光を使うことで、黒だけではなく赤、黄色、緑、青といったタトゥーに使われるどの色の色素も効率よく破壊することができます。

私自身も従来のナノセカンドレーザーで治療を行っていましたが、強いエネルギーで当てるために痛みが強く注射の麻酔が必要で、しかも10回治療しても色が明らかに残存している、ということが通常でした。ピコレーザーによる治療は、タトゥー除去の画期的な方法です。

ピコレーザーの欠点を一つ上げるとすれば、新しいために機械自体の値段が高く、それに伴って施術の料金が高いということです。ただし、ナノセカンドレーザーに比べて効果が高く、受診回数も少なくてすむので、一回の値段が多少高くともこちらの施術を受けることをおすすめします。

ピコレーザーはタトゥー除去以外にも効能がある?

ピコレーザーは元々タトゥー除去のために開発されましたが、シミの原因となるメラニンも破壊することができるので、シミ治療にも有効です。シミ治療には従来型のナノセカンドレーザーが今も最もよく使われていますが、ピコレーザーを使うことでより周囲の皮膚へのダメージを少なく、つまり短いダウンタイムで治療できます。

また、コラーゲンやエラスチンを増加させる作用も報告されていますので、表面の小じわやテクスチャーを改善するアンチエイジング作用も期待できます。

シミ治療やアンチエイジングの目的でピコレーザーを使う場合には反応が弱く痛みも少ないので、麻酔を使わず簡便に施術を受けられます。機械が高価なこともありピコレーザーはまだ一部のクリニックにしか導入されていませんし、タトゥー除去をメインに使用されていますが、今後は適応が拡大してくることが予想されます。

まとめ

今回は最新のレーザーを使ったタトゥー除去の例をご紹介しました。しかし、最新の治療法でも完全にタトゥーを除去するのは難しいこともお分かりいただけたかと思います。タトゥーを勢いで入れてしまう方も多いようですが、入れる前に将来後悔しないかどうか、よく検討するようにしましょう。

また、タトゥー治療を自宅で行うのは危険性が大きいため、医療機関でレーザー治療を受けるようにしてください。従来型のレーザーをタトゥーに当てたが効かなかった、という方にも新しいピコレーザーの技術は十分に試す価値のあるものです。夏になりタトゥーを目立たせたくないとお悩みの方は、医療機関での治療を検討してみてください。
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