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患者はどう見極めるべき?気になる民間療法・代替療法

民間療法や病院では受けられない代替医療、代替療法の中には、医学的根拠に乏しいものもあります。藁にもすがる思いで試したい気持ちもあるかもしれませんが、妄信は危険なことも…。治療法を選択するときに、冷静に判断するためのポイントをご紹介します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

民間療法、代替療法…その方法で大丈夫?

医師

治療法の判断に、素人判断は禁物。よい医療は、医師と患者のコミュニケーションから作られていきます。あなたには信頼できる主治医がいますか?

「良いと聞いて飲んでいるのになかなか良くならない」「病院では受けられない最新の治療法と聞いて試してみたけど、やっぱり悪くなっているような気がする…」。

古くから伝わる民間療法や、病院では受けられない代替療法、代替医療を謳うものの中には、人によっては一定の効果が見られるものもある一方、はっきりとした根拠がないものもまぎれています。中には、患者の不安につけこんで高額な治療を受けさせるなど、いわゆる「ニセ医学」に分類されるような悪質なものもあります。特に医学的な知識もない方には、治療法の真偽の判断が難しいものがたくさんあると思います。

あとで後悔しない選択をするために、どんなところを注意すべきでしょうか。

そもそも医学的根拠とは

そもそも、治療法などでよく言われる「医学的根拠」とは何でしょう? 医学的根拠は、大きく2つの方法で検討されています。「多数で使用した結果」と「個人での結果」です。

「多数で使用した結果」として、判りやすい例が薬です。「多数で使用した結果」を検証する最も信頼性が高いと考えられる方法が、開発された治療薬と、何の効果もない偽薬であるプラセボを2つのグループに投与して、処方する方も内服する方もそれがどちらか知らない状況で効果を見る方法です。ダブルブラインド試験と言います。この方法で治療薬を投与されたグループに客観的なデータとして明らかな効果が見られた場合、その薬の投与と効果には、「はっきりとした医学的根拠がある」と考えられます。

一方、「個人での結果」は、効果があるのかもしれないが、信頼性が高いとまではいえないものが挙げられます。体験談の形で紹介されたりもしますが、確かにその人に効果はあったかもしれないが、他の人に効果があるかどうかは判らないものがここにあたります。

「こういう改善をした人もいるから、医学的根拠がある」といわれても、少数の個人での体験談や結果だけでは心元ない気もします。まず、何かしらの病気の治療を開始するときには、正式な資格や専門的な知識の確かな人に相談するのが一番です。

治療法を見極める時の5つのポイント

第一に優先していただきたいのは、主治医などの信頼できる人への相談ですが、どうしても自分で民間療法や病院以外での代替療法を試したくなったときには、冷静に考える必要があります。以下の5つのポイントで考えましょう。

■あまりに魅力的な言葉に惹かれていないか

医療行為に限りませんが、「必ず治る」「すぐに効果がある」など、あまりに魅力的な表現の広告には注意すべきでしょう。そもそも必ず治るといえるほどの有効な治療法があれば、なぜ正式な治療法として病院で行われていないのでしょうか。多くの医療者、研究者、製薬会社などが心血を注いで、治療のための研究と治験を積み重ねてきている中で、その方法が正式に採用されていないとしたら、それには何らかの理由があるはずです(たとえば「効果が確認できない」「副作用のデメリットの方が大きい」など)。 早く治りたいという気持ちにつけ込まれていないか、なぜそれが病院で採用されていないのか、冷静に考える必要があります。

■有名な人の推薦というだけで安心していないか
誰もが知っていそうな著名人や、自分にとって印象の良い人が言っていると、その人がその分野の専門家でなくても、その効果を信頼してしまうものです。仮にその有名人が実際に使用した体験などが掲載されていたとしても、多くの人に対して医学的な検証がされていない以上、自分にも合うとはいえません。その有名な方が効果を感じたからといって、その他多くの人に効果があるかどうかは全くの白紙ともいえます。「テレビに出ている」「○○大学所属」といった権威的なものは信頼しがちですが、結局医学的根拠がどの程度しっかりしているのかを、しっかり考えましょう。

■病気による不安な気持ちを利用されていないか
それまで精神的なタフさに自信があった人でも、病気になると様々なことが不安に感じるものです。藁にもすがりたい思いになっているときに、不安をすぐに取り除いてくれるような言葉に出会ってしまうと、頼りたくなるのが人間です。医学的根拠は不明としながらも、「多くの人がこの方法で治りました」「劇的に効果があります」などと言った言葉に引かれてしまうのは、無理のないことかもしれません。不安な状態は、体にとっても苦痛が大きいので、自分が弱気になってこれらの言葉に引きつけられ過ぎていないか、一呼吸おくことも大切です。

■希少性、限定的な言葉に踊らされていないか
特別な食品を、今ならこの価格でとか、この時期だけ限定数の販売などの商品は、不安なときでなくても購買意欲を煽られるものです。本当に効果がありそうなのか、今自分にとって必要なのかを考えてみましょう。中には、非常に安価なお試し価格で販売して、効果が出ない場合は長期間使用しないと効果が出ないからという形で長く購入させようとする悪質なものもあるので注意が必要です。

■自分で解決しようと思いすぎていないか
たしかに風邪やちょっとした怪我などは、もともと備わっている力で治すことができます。でも大きな病気になってしまった場合、自分一人だけで病気を克服しようとするのは、現実的に難しいものです。様々な民間療法や代替療法を試していると、軽い症状が自然に改善した場合でも、この方法が効いたんだ強く思い込んでしまいがちです。次第に、何が本当に効果があるのか判断がつきにくくなり、しかるべきときに適正な治療を受けられなくなってしまうこともあります。自分で解決しすぎず、信頼できる人に相談することです。

病気で不安なときに、誤った情報にだまされないために

一般に何かを信じすぎてしまったり、悪質なものに騙されやすい人は、人がよく、他人の言うことを信じてしまいがちなように感じます。他人に対してあまり疑いを持たず、人はもともと善であるという性善説を信じている人が、残念ながら医療者としては間違った選択と思わざるを得ない方法を選んでしまったりするものです。

また、多くの民間療法と同じように、病院やクリニックも治療においても患者さん側には出費があります。医療機関も赤字では診療を続けることができませんし、医療機関に行けば、診察、検査、処置などでお金を支払う必要があります。保険適応のものも、適応外のものもありますが、受けようとしている治療に対して、対価が常識的な判断で妥当かどうかも治療法を選択する判断材料になるかもしれません。

普段から気をつけておくことべきことは、「病気になると、誰でも不安になるのが当たり前」という意識をしっかりもっておくことです。そして、病気になったときには、しかるべき専門家に相談すること。信頼できる専門家として、日ごろから信頼できる専門医がいるかどうかは重要だと思います。まずは、大きな病気をする前に、専門医を探すことから始めてみましょう。
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