マメは植物性タンパク質やビタミン・ミネラル・食物繊維の宝庫!
マメ科の一年生植物で、一つのさやに粒や種が入っているマメ。「国際マメ年」でいうところの「マメ」は、厳密にいうと乾燥穀物向けにのみ収穫される作物に限られていて、お野菜に分類されるエダマメやサヤインゲンなどや、主に油の抽出や播種目的のみに使われるマメ科の作物はこの「豆類」からは除外されています(国連食糧農業機関の「マメと派生産物」の定義による)。 世界で食用にされるマメ類は約80種類ほどもあるとか! 種類によって含まれる栄養素も異なりますが、総じて糖質やタンパク質、ビタミンB群、ミネラル、食物繊維に富んだ、またポリフェノールなどの成分も含む食品です(表参照)。穀類と豆の組み合わせでアミノ酸バランスが整う
アミノ酸のうち「必須アミノ酸」と呼ばれる種類は、体内でほとんど合成できないので食品から摂取しなければなりません。成人にとって8種類の必須アミノ酸のうち1種類でも一定量に満たないものがあると、体内でのタンパク質合成が効率的に行われません。食品のタンパク質については、量だけではなく、含まれている必須アミノ酸の種類と量のバランスも重要なのです。その含有比率を評価するための数値をアミノ酸スコアと言います。肉や魚が良質のタンパク質と言われるのは、アミノ酸スコアが高いからです。
マメ類には、必須アミノ酸のリジンやスレオニンが豊富に含まれています。これらは、米には少なめです。またマメにはメチオニンは少なめで、米には多く含まれています。このため、米とマメ類を組み合わせて食べると、お互いに少ないアミノ酸を補い合って、アミノ酸スコアが良くなると考えられています。
マメは栄養価の高い食品ですが、ビタミンCが少ないと言った面もありますから、くれぐれも偏った食べ方はせずに、多様な食材とともに食べて、栄養バランスをはかってください。
マメは人間の生存に欠かせない大切な食べ物
豆類は、糖質やタンパク質、ビタミン、ミネラルに富み、食物繊維やポリフエノールも含みます。
同様に東南アジアの米食文化地域は米とマメ、また中近東や地中海ヨーロッパは小麦とマメ、北南米はトウモロコシとマメといった伝統食に見られ、長い人類の歴史の中では、経験的に栄養的に見ても理にかなった食べ方が、見出されてきたのですね。
またマメは、乾燥をさせる長期保存ができ、食糧が不作の際にも救荒食としても役立ったことでしょう。『本朝食鑑』で大豆を見ると「まめ=万米(和名)」とあり、米の万倍というような意味を込めていたのではないかと想像しました。
乾燥豆を水つけて戻すたびに、あれほど水分が抜けて小さく乾ききったマメが、二倍ほどに膨れ、煮豆やはたまた味噌などになっていくのを見ると、今のように食べ物が豊かではない時代には、神様がもたらしてくれた貴重な食べ物という位置付けなのもわかる気がします。
過去の記事でも、マメ類について解説していますので、「豆ごはんは、理想のアミノ酸バランス」「小豆がお正月太りやむくみ解消をサポート」「低脂肪・食物繊維豊富!いろいろないんげん豆を楽しもう 」もあわせてご覧ください。
大豆に含まれるイソフラボンに注目
市販の蒸し・茹で野菜なども便利に使って、食卓にお豆料理を。
イソフラボンは、大豆胚芽に含まれるフラボノイドの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)によく似た構造で、体内で様々な作用もあることがよく取り上げられています。
エストロゲンは、コレステロールや、また骨吸収に関わっています。女性が閉経期になるとエストロゲンの分泌が減少してしまうため、コレステロール値が上がったり、また骨形成が追いつかず骨粗鬆症が見られるようになったりします。
イソフラボンが生活習慣病や更年期障害などに役立つかどうかは、これからもさらなる検証が必要ですが、国立がんセンターでもイソフラボンを摂取するためには大豆製品をバランスよく食べることが心がけるようにと示しています。
イソフラボンの摂取目安量は?
イソフラボンには、幾つかの種類がありますが、大豆の主なイソフラボンは、ゲニステインとダイゼインです。イソフラボンは、配糖体(糖とくっついている)ですが、摂取後に腸内細菌により代謝されて、アグリコン型 (糖が外れる) になって消化管から吸収されます。
近年は、食事に加えて、保健機能食品などでイソフラボンを摂取することもあるため、一日の摂取目安量が食品安全委員会によって示されています。
大豆イソフラボンの安全な1日の摂取目安量の上限値は70~75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)。一般食品から摂取することも考えて上乗せして、トクホなどから摂取する場合には、上限値30mg/にち(大豆イソフラボンアグリコン換算値)と設定されています。
エストロゲン活性が強いエクオールも魅力
イソフラボンの一つであるダイゼインが腸内で代謝され、エクオール(エコールとも呼ばれる)が生成されます。このエクオールは、もとのイソフラボンよりもエストロゲン活性が強いと見られています。このエクオールも、脂質代謝、癌予防効果、更年期障害予防効果や閉経後の骨粗鬆症予防効果などが期待され、研究が重ねられています。では大豆を食べてイソフラボンを食べればエクオールに変わるのでしょうか。実は、エクオールを産生する能力は、エクオール産生に関わる腸内細菌の違いにより個人差が大きいのだそうです。
様々な研究調査が報告されており、エクオールプロデューサーは欧米人で20~30%、日本人では50~60%。日本人のように歴史的に長く大豆を食べてきた民族は、エクオールをつくれる人が約半分いますが、若い世代になると欧米人並みに減ってしまいます。
このようなエクオール産生菌をもたない人は、大豆や大豆加工品を食べてもエクオールの作用を受けることはなく、大豆イソフラボンとして吸収してしまいます。
なぜ若い人ほど、産生菌をもつ人が少ないのかはまだ明確ではないのですが、日本の食生活を年代別に見ると、年配の人ほど大豆を食べている傾向があり、若い世代は食生活において食事が欧米化し、年配のひとほど大豆や大豆製品に慣れ親しんでいないためではないかと考えられています
こういう注目の研究から見ても、伝統食のようにマメ類を食卓にのせるのは良いことだと思います。時間がある時にまとめて乾物のマメをも戻して、あるいは調理した後に、少しずつ小分けして冷凍しても良いですね。乾物を使うのが面倒という方は、市販の蒸し・茹でマメを利用してみてください。
参考/
・国際マメ年について(FAO)
・食と健康の文化史(MARUZEN BOOKS)
・本朝食鑑1(平凡社)
・和歌食物本草現代語訳(源草社)
・大豆イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について(国立がんセンター)
・大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(食品安全委員会)