年金

年金額の改定の仕組みと計算方法~2016年度版

公的年金の額は、物価や賃金の変動に伴って毎年度改定されます。2016年度の年金額はどうなったのか、年金額の改定の仕組みを含めて解説します。

原 佳奈子

執筆者:原 佳奈子

年金入門ガイド

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毎年4月に支給額が見直される公的年金。2016年度の年金額の改定の仕組みをご案内します

公的年金制度は、きちんと保険料を納めていれば、老後には、その時々の社会経済状況や生活水準に応じた年金が生きている限り生涯支給される社会保険制度です。また、「老後」でなくても、障害を負った場合や、死亡してしまった場合にも一定の要件を満たしていれば年金が支給されます。もし公的年金がないとしたら、自分のことだけでなく、親の老後を仕送りなどで全て支えなければならなくなります。公的年金制度は、社会全体で支え合う社会保険の1つです。

公的年金の支給額については、物価や賃金の変動に伴って毎年度改定されることになっています。しかしながら、2016年度の公的年金の額については、昨年度と同額となりました。どうしてそのようになったのか見ていきましょう。

<INDEX>
2016年度の年金額の改定について
マクロ経済スライドはどうなるの?
2016年度の年金額の計算式について
事例でみてみましょう。
国民年金と国民年金基金の関係
 

2016年度の年金額の改定について

年金額の改定は、法律上規定されており、改定の方法は新規裁定者(68歳到達年度前の新規裁定者)と既裁定者(68歳到達年度以後の既裁定者)に分けられています。原則として、新規裁定者は、現役世代の賃金水準に連動する仕組みとなっていて、既裁定者は、購買力を維持する観点から物価変動率により改定することとされています。ただし、給付と負担の長期的な均衡を保つなどの観点などから、賃金水準の変動よりも物価水準の変動が大きい場合には、既裁定者も賃金水準の変動率で改定されることになっています。

ここで1年前を思いだしてみましょう。昨年度の年金額を決めるとき、その改定に用いた賃金の変動率は+2.3%、物価の変動率は+2.7%でしたので、新規裁定者・既裁定者ともに賃金水準の変動率に基づいて改定されました。それでは、今年度の年金額はどのようにして決まったのでしょうか。

2016度の新規裁定者の改定率となる賃金水準の変動率は、マイナスとなり、▲0.2%でした。一方、既裁定者の改定率となる物価変動率は+0.8%でした。賃金水準の変動よりも物価水準の変動が大きいので、本来であれば、新規既裁定者、既裁定者ともに賃金水準の変動率で改定されるということになりますが、賃金水準の変動率はマイナスです。この場合、物価水準の変動率はプラスとなっているので、あえてマイナスのスライドはさせず、既裁定者、新規裁定者ともにスライドなしとされ、年金額は据え置きとなります。つまり年金額の改定はしないということです。
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マクロ経済スライドはどうなるの?

マクロ経済スライドは、2004年改正で導入された保険料上限を固定することと連動して、そのときの社会情勢に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整するために導入された仕組みです。少子高齢化への対応として、現役世代の将来の給付水準を確保することにつながります。具体的には、賃金水準や物価水準の変動をそのまま年金額に反映するのではなく、保険料を負担する現役世代の人口の減少と給付を受ける高齢者の平均余命の伸びを勘案した率で調整します。

マクロ経済スライドが実際に初めて発動された昨年度については、賃金水準の変動率がプラスだったので、そこからマクロ経済スライドの調整率(▲0.9%)を反映して年金額が決定されました。

2016年度についても、マクロ経済スライドの調整率は▲0.7%となる予定でしたが、前述のとおり、年金額が据え置きとなったため、マクロ経済スライドの発動(スライド調整率)も見送ら
れました。これはマクロ経済スライドを発動すると年金額の改定がマイナスになってしまうからです。現在の受給者世代の給付を考慮した措置となっています。しかしながら、このことは、同時に現役世代の将来の給付水準を確保する取組みがまた足踏みしてしまったことを意味するともいえるでしょう。
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