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グランピングは日本に根づくか-星のや富士レポート(3ページ目)

2015年秋開業したグランピングリゾート「星のや富士」の体験レポート。春になり、アウトドアでの「ダッチオーブンディナー」も解禁され、キャンプのトップシーズンに向けギアが入った。2016年は東京やバリでの開業など話題の多い星野リゾートだが、意外にも今一番面白いのは「富士」かもしれない。誰もに受けるとは限らないはずの森の中でのグランピング体験は、他で簡単に真似できないオンリーワンのリゾートだ。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

ダッチオーブンディナー

星のや富士のディナーは、屋内のグリルダイニングが基本。シェフが中央に設えられたグリルで焼いてくれる自慢の肉料理がメインディッシュだ。

 

加えて、春から秋にかけ、一日4組(8名)まで、屋外のクラウドテラスの特設「クラウドキッチン」で「ダッチオーブンディナー」をいただくことができる。タープの下、クロスの張られたテーブルが置かれた完全な自然の中のアウトドアディナーだ。多少の雨や風なら問題ない(荒天の場合は屋内に変更)。ただ、多少足元が冷えたり、夏ならライトの周りには小さな虫も訪ねてきたりするかもしれない。しかし、アウトドアで、スパークリングワインを傾けながらいただく本格的なディナーは、なかなか他でできない体験だ。

 

ディナーはダッチオーブンを使って調理する。夕方、重いダッチオーブンや食材を背負ったスタッフがメイン棟と何往復もしていた。特別な席を用意する裏では、たいへんな準備と作業が行われている。

 
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「ダッチオーブンディナー」で使う食材

コースは、甘いオニオンスープから始まる6品。メインはオマール海老のグリルと骨付き仔羊の煮込み。テーブルの脇のストーブでシェフが調理してくれるが、仕上げのフランベには私たちも参加する。料理に合うワインもひと通り用意され、シェフとの楽しい会話や木々のざわめきもディナーに演出を加えてくれる。

まだ夕陽の残光が空を染める18時から始まるダッチオーブンディナーも、デザートの頃には完全に闇に包まれ、木々の頂の合間では星が瞬いているだろう。20時半にクラウドテラスで始まる「森の音楽会」がディナー終了の合図だ。

 

ディナーの後には、焚き火を囲み「焚き火BAR」が開店。夜の森は冷えるので、リュックサックからダウンブランケットを取り出そう。しばし、ロックグラスを片手に、ゆらめく炎をサカナに一日を回顧し、明日の予定を語り合うのがいい。

午前中には、河口湖での「湖上カヌー」(2人乗りのカナディアンカヌー)や「山麓乗馬」、「樹海ネイチャーツアー」等のエリア外のアクティビティ(前日18時までに予約)と、クラウドテラスでの「森の珈琲店」や「森の空中ストレッチ」、「森の石窯ピザづくり」といったプログラムが用意されている。

 
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河口湖で早朝カヌー

気づけば、午後5~6時間はクラウドテラスにいたことになる。キャビンまでの帰りは、ヘッドライトを点けて。足下に気をつけながら部屋に戻ろう。

 

旅には大きく2つの種類がある。1つは「誰かを楽しませに行く旅」。平均的に皆が楽しめればといという最大公約数的な旅もこれに含まれる。もう1つは「自分が楽しみに行く旅」。こちらは、1人旅か2人旅になることが多い。グランピングの場合、後者が似合っている。そのため、星のや富士では1人旅も歓迎してくれる。

 

星のや富士は、アウトドアの気分を楽しみたいと思った時に時々訪ねる「自分(自分たち)が楽しむための究極のオンリーワン・リゾート」と言えるだろう。

 


星のや富士
http://hoshinoyafuji.com/
〒401-0305 山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
宿泊予約(9:00~20:00) TEL:0570-073-066
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