アウトドアという制約
私は、好きなウォーキングシューズを履いて出かけたこともあり、アップダウンの多いエリア内を歩き回るのが楽しみのひとつだった。ただ、中には正直に「階段が多いな」と思う方もいると思う。でも、そう思ったその瞬間、アウトドアでの滞在が少し億劫になってしまう。グランピングリゾートでは、階段を行ったり来たりでダイエット!くらいに思えてちょうどよい。そのために、事前にそうした情報をいかに知っておくかが重要になる。ついでを言えば、山の天気は変わりやすく、毎日のように雨の時間がやってくるかもしれない。富士山だって見える日の方が少ない。山はそんなものだ。でも、木々が雨に濡れると景色がキレイになり写真も美しく撮れる。ガス(霧)が舞うと幻想的になる。
アウトドアの経験が多少ある方ならわかると思うのだが、ふだんアウトドアには馴染みのないまま訪れると、ちょっとした上り下り、雨、虫、寒暖の差、焚き火の煙、トイレへの遠さなどが、内心、旅の快適さを邪魔するものに思えてしまう。いつも旅先では晴れていないと嫌だとしたら、アウトドアはなかなか厳しい。顔で笑っていても、心から楽しめないとリピーターにはならない。
ただ、どうしても常時アウトドアにいることには抵抗がある方のことを心配してしまう。もし一緒に行きたい人がいたら、「雨の中の階段の上り下りは大丈夫か」訊いてからにしよう。「ただし、そこは幻想的な森の中のオンリーワンのリゾート」だということも解説して。どちらが重要と思えるか、で判断が分かれるだろう。
そして皆、いざグランピングに来たら「遊び心」にスイッチを入れよう。
富士山を狙い撃つスコープに泊まる
宿泊棟である「キャビン」は40室。1室1室がスコープに見立てられた客室の重い扉を開けると、すぐにベッドルーム。玄関や前室はなく、靴は部屋の中に入れておく。テントに泊まる時と同じ感覚を想起させる演出だ。スコープの先のレンズにあたる大きな窓の向こうには、河口湖と富士山。運よく晴れた日には、富士の凛々しい雄姿を正面に眺めることができるだろう。窓の向こうは、デイベッド(冬はこたつ)が設えられた屋外のテラスリビング。前日18時までに頼んでおけば、ルームサービスの朝食として「モーニングBOX」をここに運んでくれる。グリルダイニングでの焼きたてオムレツも捨てがたいが、プライベートなアウトドア空間での朝食もなかなかのおすすめだ。
夜は、夜風にあたりながら、24時間オーダー可能のルームサービスの寝酒と軽食で夜長を愉しむのもいい。「インルームダイニング」というコンセプトのテラスリビングはキャビンで一番のユニークポイントだ。
一点、大人向けのテラスリビングは手すりをあえて高くしていない。小さな子どもを連れていくなら、遊ばせる時は気をつけたい。
森の中のクラウドテラス
キャビンで一息ついた後、リゾート滞在のメインである「クラウドテラス」に出かけよう。雲のテラスと名づけられ、重層的に造られた森の中のウッドデッキテラスへは、キャビンからメイン棟を通り抜け、アウトドアの階段を登ること約5分。ランドスケープデザインで設計された階段はジグザグと進み、あまり距離を感じさせないようにできている。リュックを背負い、息が上がらないよう、心拍数100程度に整え、ゆっくりと登ろう。クラウドテラスの頂上には、薪ストーブを囲んだ「ライブラリーカフェ」があり、アウトドアに馴染む本と無料のソフトドリンクが常備されている。トイレもここにある。テラスにはデッキチェアやテーブルがいくつも置かれている。
15~17時の間は、テラスに「スイーツBBQ」が用意されるので、焼きワッフルをセルフサービスで。マシュマロはスティックに刺してテラスの焚き火で炙り、キャンプ定番の焼きマシュマロに。セルフのカフェは全て無料だ。
星野リゾートでは社員が考案したアクティビティが充実しているが、富士でも様々なアウトドアメニューが用意されている。午後のひと時におすすめなのが、「山麓の燻製づくり」。クラウドテラスに準備される燻製器やテーブルのスモークポットを使い、燻製のツマミを作るプログラムだ。
ウッドチップはウォールナッツとHAKUSHU(白州)。ガスコンロに置いたポットにお好みのチップを入れ、煙が出始めたところで豆腐、味噌、塩、サーモン、ナッツを入れて燻す。燻製器ではクラウドマスターがジビエのソーセージを燻してくれる。ほのかに燻臭がついた燻製が並んだところで、ウイスキーの登場。もちろん、ここは白州をストレートで。
そして、春から秋にかけて、グランピングならではのディナーをこのクラウドテラスで味わえる。