キャンプとホテルの要素が合体
久しぶりに「楽しめる宿」に出会い、心地よい時間を過ごすことができた。この宿が目指すものと私の感性がぴたっとはまったからだろう。星のや富士をはじめ、星野リゾートの各宿に関するレポートは、雑誌やWebで数々アップされているので「今さら」なのだが、私なりに思いを記しておきたい。
「キャンピングは魅力的だが、テントに泊まってまではしたくない。リゾートホテルは魅力的だが、都会と同じようなレストランやバーでは面白くない。アウトドアのムードを体験しつつ、快適な客室で泊まる」というわがままを叶えてくれるのがグランピングだ。2016年、全国でいくつかグランピングリゾートができる。今後、あちこちで増えていくことだろう。
世の中を変えるアイデアは、既存の2つのモノを組み合わせて創造する。「キャンプ」と「ホテル」という全く違うテーマで成り立つグランピングだが、見ている限り相当運営に手間とコストがかかる。きっちりとしたホテルも要るので、今後星のや富士がデファクトになるとすれば、品質も相当求められるようになるため、そう簡単に真似はできない。そういう希少性と非代替性を確保した意味においても、星野リゾートの戦略に抜かりはない気がした。
私もそう。この面白い遊び場に誰と来るか。意外にそこが問題なのだ。
大人の遊び場
チェックインは、河口湖畔道路から一本入った路地にあるレセプションで。車で来た場合はここが駐車場となる。ナビで検索されないうちは住所を入力するか、富士河口湖町にある大石小学校の裏手を目指そう。チェックインと同時に受け取るのがリュックサック。壁に見本がかかっているので、好きなものを選ぶ。「キャンプに行くんだ」という気分がすこし増幅する。中に入っているのは、双眼鏡、ヘッドランプ、ダウンブランケット、持ち帰りできるステンレスボトルとエリアマップ。ちょっとした大人の遊び心が詰まっている。ヒールのある靴を履いてきたのなら、持ってきたスニーカーにここで履き替えていこう。
エリア外への送迎ポイントである「待合」の小屋を過ぎ、打ちっぱなしコンクリートの客室が幾何学的に並ぶ「キャビン」を横目に見ながら、ジープは「フロント」のあるメイン棟に到着。シックな木造のメイン棟には、右にフロントデスク。左にグリルダイニングがある。
バードコールの付いたルームキーをフロントで受け取ったら、メイン棟から屋外へ。若木が植えられた敷地内の階段を下り、宿泊するキャビンへと案内してくれる。
……と、メイン棟からキャビンへと向かうこの瞬間が、グランピングを楽しめるかどうかの分岐点だ。