抗生物質やレーザーとは違う! 新しい殺菌システム
虫歯で使うのは青色。光殺菌療法では赤色に光る(写真はイメージ)
これらを普通の消毒薬で殺菌しようとすると、薬剤が触れた関係のない部分にまで薬の効果が働いてしまいます。消毒効果の高い薬を使うと、細菌だけでなく健康な組織にもダメージを与えてしまうことがあるのです。今海外で行われている「光殺菌療法」は、専用の薬剤と、光をあてる照射器の2つをセットで使用し、細菌のみを選択的に殺菌できる治療法です。
光殺菌療法で使用する薬剤は、組織や細菌につけただけでは消毒効果はありません。薬剤に含まれる染色剤が細菌のみに働きかけ、光が照射された時に初めて反応が起こり、活性酸素が発生して細菌を破壊するというシステムです。細菌が原因で起こる歯ぐきや顎の骨などを溶かす原因物質なども破壊することができるため、歯ぐきや骨が減少するのを止める効果もあります。これらの反応は細菌のみに起こり、健康な組織などは影響を受けません。
歯周ポケット内に残っている細菌を炎症が起きないレベルの量になるようコントロールしたり、増えすぎた細菌を少しでも減少させたりすることに役立ちます。さらにインプラント周囲炎やメンテナンス時に利用することもできます。歯周病の場合には歯石取りなどを行った後の歯ぐきに利用するとより良い効果が発揮されるようです。
これまでのレーザー治療や抗生物質を利用した治療と違ったアプローチで細菌を死滅させる画期的なシステムと言えそうです。
光殺菌療法のメリット・デメリット
それではこの最新の治療法のメリット、デメリットはなんでしょうか?■メリット
・副作用がない
消毒薬や抗生物質ではなく、光からのエネルギー利用するため、副作用がないと言われています。
・連用しても耐性菌が作られない
抗生物質ではないため、効果が発揮されるのは瞬時で、時間がかかりません。そして、たとえ繰り返しの使用になったとしても、耐性菌が作られる心配がありません。さらに抗生物質による耐性菌も破壊することができます。
・簡単で痛みが出にくい
歯周ポケットに薬剤を入れて1分程度の光をあてるだけなので、簡単で刺激が最小限ですみます。
・歯周病だけでなく虫歯などの細菌にも効果がある
難治性の根の治療や、インプラント周囲炎、大きな虫歯の治療時など、口の中の細菌が原因する部分にはほとんど使えます。
・余分なダメージを与えない
同じ光でも高出力のレーザーのような高エネルギーは発生しないため、歯ぐきや歯の内部の神経などの温度上昇が起こらないため、健康な部分には、ダメージを与えません。
■デメリット
・薬剤が触れないと効果がない
抗生物質のように血液中に溶け込んで全身くまなく細菌をやっつけるような働きはありません。細菌に薬剤が触れなければ、光を当てても何も起こません。
・光が届かないと効果がない
薬剤は光が届いて初めて活性化して細菌を破壊します。そのため必要な場所に必要なだけ光が届くように専用のチップが用意されています。
・保険適応ではない
最先端の治療のため、保険が適応されません。
通常の治療のオプションとして使うのがベスト?
例えば歯周病であれば、毎日のしっかりしたブラッシングと機械的な歯石の除去。虫歯治療であれば、虫歯に感染した部分を機械的に取り除くことが治療の基本になります。光殺菌療法はこれらの基本治療にプラスして利用するスタンスになると思います。特に有効だと思われるのは、難治性の歯周病やインプラントの周囲炎など、取り除くことが困難な細菌コントロールです。どうしても機械的に取り除くことができない歯周病菌などの影響で、ときどき腫れたりすることはよくあります。この時、腫れと同時に顎の骨も溶かされるスピードが増加してしまうため、短時間で細菌量を減少させることは骨が溶けることを減らす効果が期待できます。
現在は、機材や薬剤を海外から輸入して使用しなくてはならない治療法ですが、概ね1本あたり1000~5000円程度で治療を受けることができるようです。保険が適用されない新しい治療の割には、それほど高額ではない治療費ともいえますので、歯周病で悩まれている方は検討してみるのもよいかもしれません。