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猫は貴重な研究パートナー? 猫にも多い2型糖尿病

家族の一員としても愛されている猫の中には、2型糖尿病の発症率が普通のイエネコの4倍も高い血統があります。室内で飼い主と同じ環境で生活し、運動不足や肥満を共有しながら仲良く(?)2型糖尿病になる猫は、貴重な研究パートナーでもあります。意外にも似ている猫と人間の2型糖尿病についてご紹介します。

執筆者:河合 勝幸

バーミーズ

人気のあるバーミーズ。本文参照。ネコは肉食だけで全ての栄養素を得ることができます。ペット用のドライフードは実は高糖質なのです。太り気味のネコ君には低糖質食(ウェットフード)をよろしく!

バーミーズ キャット(Burmese cat、ビルマ猫)はミャンマー(旧ビルマ)にルーツがある東洋種。飼い主との愛情の交流がこまやかで、体がほっそりとしてしなやかな、世界中で人気の高いネコです。

ところが、英国とオーストラリア、ニュージーランドの3ヵ国で、2型糖尿病の発症率が普通のイエネコの4倍も高くなる血統があることでも知られています。

これらの特定の血統では50匹に1匹の割り合いで2型糖尿病が現われるのです。特に血が濃い系統では子孫の10匹に1匹という報告もあります。一般のネコの2型糖尿病は200匹に1匹と考えられていますから研究者の関心を集めています。どうやら膵島に問題があるのではなく、インスリン抵抗性が強く出る遺伝子があるようです。

インスリン抵抗性」というとまるで病気の遺伝みたいですが、本来は真の肉食動物であるイエネコにとって、この体質は野生では必要なものであったに違いありません。獲物がない時は蓄えてある脂肪をエネルギー源にして、その時に血糖値を維持するためにインスリン抵抗性が役に立つのです。ネコが人と暮すようになって、まだ4,000年しかたっていません。バーミーズにはその面影がわずかに残っているのでしょう。もちろん、2型糖尿病ですから予防もできますし、発症を遅らせることも、治療することも可能です。

ヒトもネコも同じ? 遺伝と環境に影響を受ける2型糖尿病

2型糖尿病の遺伝性はバーミーズでも明らかですが、環境要因はバーミーズも普通のイエネコも同じように影響されます。例えば中年以上(6歳プラスα)の年齢、肥満、雄(オス)、去勢した雄、特定の薬物治療を受けた経験、運動不足、室内飼いのネコである、等の条件が重なると2型糖尿病のリスクが高くなります。

雄ネコ(去勢したネコも含む)が雌ネコよりも糖尿病になりやすいのには2つの事柄が挙げられています。まず第1に、雄ネコはやせていても雌ネコよりもインスリン感受性が37%も低いという研究があります。太るとこの差がもっと大きくなります。興味深いことに、太ると血中の基礎インスリン濃度が上昇するのは雄ネコだけです。つまりインスリン抵抗性が高くなって─筋肉細胞がインスリンに反応しにくくなって─血液中のブドウ糖(最高のエネルギー源)を筋肉ではなく脂肪細胞に蓄えるように代謝ルートが変わるのです。かの有名なニール(Neel 1962)の倹約遺伝子仮説(thrifty gene hypothesis)のサンプルのようなことが起きます。

第2に雄ネコは食餌にフリーアクセスをさせると雌ネコよりも必ず太ります。体重もより重く、脂肪太りなのです。都会のマンション暮しで運動不足、しかも食べ放題となればメタボから2型糖尿病にまっしぐらに突進です。

ヒトの2型糖尿病とネコの自然発症の糖尿病を比べてみると……

ヒトの2型とネコの糖尿病はとてもよく似ています。ヒトの2型発症は中年以上ですが、ネコも同様に中年(6歳以上)から始まり、ピークは9~13歳です。ネコの平均寿命は15歳位ですから全く同じようなもの。生活習慣による肥満が関与するのも同じで、ベータ細胞の喪失がネコで~50%、ヒトでは40~60%、膵島アミロイド症がネコでは>80%、ヒトでは>90%もあり、ネコもヒトも糖尿病末梢神経障害や糖尿病網膜症の合併症を起こします。

2型糖尿病の病因の一つでもあるインスリン抵抗性が肥満で憎悪し、減量で改善することがネコでもヒトと同様に確認されています。

イヌは自己免疫疾患が多く、糖尿病も1型糖尿病ですが、ネコはもともと自己免疫疾患が少なく、ネコの糖尿病のほとんどは2型糖尿病とみなされています。発症病理がヒトの2型と共通しているからです。

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