京王線・幡ヶ谷駅周辺はニューカレータウンを形成している
最近、幡ヶ谷・初台・笹塚の地域には数多くのカレー店が存在しており、カレータウン化していることをご存知だろうか? 新宿の最寄りの街であり、電車でもすぐ、甲州街道や首都高速にも近いという利便性。気軽に立ち寄れる店やボリューム満点の店、ネパール人やインド人が経営する料理店など、カレー店だけでも様々なスタイルが存在し、エリア住民やカレー好きの人達が通っている。カレーマニアの中でも話題の「青い鳥」
そんなカレーマニア達の間で最近話題になったのが、幡ヶ谷の新店「青い鳥」だ。青いきれいな鳥が飛んできて、住み着いたような錯覚がする、そんな居心地のよい店である。評判の「重ね煮カレー」を食べに来たものの、メインの前にまずは最初にアラカルトの「砂肝重ね煮マサラ炒め」と「シブヤビール」を注文してみる。少し辛味がきいたカレーマサラに砂肝が絡み合っていて、砂肝の食感にピリ辛は実に良く合う。
シブヤビールはグレープフルーツとホップが混ざり合い、酸味のきいたマカ入りの元気が出るビールだ。宇田川町界隈の裏渋谷で流行っており、スパイス料理に合うことを知っていたので、ここで飲めたのは嬉しかった。
シェフ澤田千絵さんが作る「重ね煮カレー」
シェフの澤田千絵さんが「重ね煮」という料理法でカレー作りをしていることに関心があり、どんなカレーなのか食べるのが楽しみであった。そもそも重ね煮とは、陰性の野菜から陽性の野菜を順番に重ねて水を一切使わずに煮詰め、野菜の水分のみで弱火でじっくり煮詰める調理法のことをいう。重ね煮は、素材の性質をはかる尺度として中国の思想に端を発した「陰陽論」に基づいており、根菜類は下に向かって伸びる求心力で成長し、身体を引き締め温める「陽性」、葉菜類(ようさいるい)は上に向かって伸びる遠心力で成長し、体をゆるめ冷やす「陰性」の性質があると考えられている。
葉菜類を下に、根菜類を上に重ね、これに火で温めることで、上に向かおうとする力と、下に向かおうとする力が互いに影響し合って、素材の持つ本来の甘味や旨味を引き出すことができるという。根っこや皮やアクさえも旨みに変えてくれ、鍋の中で自然界のバランスと調和のエネルギーが働き、それを食べることで、野菜本来のパワーを丸ごといただけるというわけだ。
また、この方法だと、砂糖も化学調味料も不要で、最小限の調味料で驚くほど美味しいカレーが作れることもよい点だ。キノコ類のしめじや椎茸、玉ねぎ、人参とスパイスなどが重ね煮されることによって、複雑な旨みもよく出ていたし、スパイスの香りも美味しく感じられ、新しい料理法のカレーだと思いました。
酸味のきいたココナッツチキンカレー
スリランカのココナッツチキンカレーには酸味がきいていないものもあるが、青い鳥のココナッツチキンカレーは、酸味とスモーキーな香りを重視して作られている。これはシェフの澤田さんの好みによって、こういう味に落ち着いているとのこと。季節によって違う食材を使い分け、そのときどきで素材の味を引き出しながら酸味との兼ね合いを工夫をしているそう。胡椒の辛味と酸味のきいた冬瓜ココナッツカレー
この日は大きな無農薬の冬瓜が入荷したので、冬瓜の味を生かして、ココナッツチキンカレーとはまた違った酸味使いのカレーを作ってみたとのことで、さっそくいただく。胡椒の辛味でパンチのあるカレーに仕上げられていて、アクセントとしても優れているカレーであった。3種類の惣菜とカレーとのペアリング
手前左から……■水菜、トマト、人参、玉ねぎ、白菜のサラダ
ココナッツと生野菜のサラダは、レモンのすっきりとした味わいに甘みのあるココナッツが相まって、食べやすくて病みつきになるほど。
■ビーツ入りココナッツふりかけ
ビーツでココナッツをピンク色にしたビジュアルが面白い。このふりかけをカレーにかけて混ぜてひと口食べると濃厚さが増し、シャキシャキとしたココナッツの食感が食べる楽しさを与えてくれる。ご飯にかけて食べると、ピンク色が映えて目にも楽しい味わい。
■キャベツのスパイス炒め
スリランカ料理で使用されるハガツオの加工品「モルディブフィッシュ」が使用されている。カツオ節に似ている旨味とスパイスを合わせた味わいがクセになる。こちらもカレーに混ぜて食べてもいいし、ご飯と一緒に食べるのもいい。とりあえず両方試すことをオススメ。
最終的にはパパドも割って散らして、食感も楽しみながら全部を混ぜて食べるとパーフェクト!!最初は好みで、最後には全てを混ぜ合わせる南インドのミールスの食べ方で、どこのお店でもインド人はそのように食べている。これが最良の食べ方で、インドの手食の醍醐味なのだと思う。いろいろな味、香りをぶつけて、好みの味を自分で発見するのである。最良の融合を発見できたら、まさに青い鳥が貴方と一緒に鳴きながら喜ぶことだろう。
溶け合う味噌!カレー味噌煮込みうどん
シメには、「カレー味噌煮込みうどん」がオススメである。実は学生時代から、いつかカレーの味噌煮込みうどんを作りたいなあと考えていたので、ついに今回食べることができて、長年の夢が叶ったわけである。オーナーの実家近くに味噌煮込みうどんの製麺所がありよく食べていたため、いつかこのうどんを使った「重ね煮カレー味噌煮込みうどん」を誕生させようと思っていたとのこと。
味噌味に辛味のあるスパイシーさが合わさって作られ、うどんにカレー味噌が絡み合う。トッピングには多量のカスリメティが振りかけてある。カスリメティはメープルシロップのような甘い香りがする。麺もスープもトッピングも全てを一度にじゅるじゅるっと啜ると脳天にスパイスカレー味噌の香りが立ちのぼり、思わず姿勢を正しくして、無我夢中で食べ続けてしまう。
カレー以外のアラカルト料理にも重ね煮を使用したメニューがあり、野菜の旨みとスパイスがギュッと詰まった味わいを満喫できた。今回、青い鳥のカレーを食べて、個人的に今後、重ね煮の調理法を取り入れて、ラッサム(南インドのスープ)に根菜類や葉菜類、スパイスやハーブを使用して薬膳スープを作ってみたいなと思った。
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Curry&Spice 青い鳥
住所:東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目47-12 2F
営業時間:火曜日~土曜日 11:30~14:30 17:30~22:00
日曜日 11:30~15:30
定休日:月曜