傷病手当金には長い歴史がある
傷病手当金は、会社員が業務外での病気やケガで働けなくなり、事業主から十分に報酬をもらえなくなったときに支給されます。傷病手当金のくわしい支給要件、給付額などについては、以前の記事( http://allabout.co.jp/gm/gc/448080/ )、もしくは協会けんぽのウェブサイト( https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139 )をご参照ください。
傷病手当金の歴史は古く、1927年に健康保険が作られた際に(国民皆保険ではなく一部の企業のみが対象でした)かかった医療費を支払ってくれる「療養の給付」と共に導入されました。
当初、支給期間は最長180日とされ、労災保険制度が未整備であったため、労災による休業も対象範囲となっていました。1977年には、給付期間が180日間から1年6ヵ月間に延長され、2006年には健康保険法一部改正により、その第45条で「標準報酬日額の6割」とされていた傷病手当金の支給額が「標準報酬日額の3分の2」とされました。
その支給額の計算方法が2016年4月から変わります。
2016年4月から計算方法が変わる
2016年3月現在の制度では、病気やケガで仕事を休んだ直近の月の標準報酬日額をもとに計算されています。この4月からは、下の図のように変更されます。傷病手当金 給付額の計算方法
このように、支給日開始以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額で計算されることになります。
支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たないときは?
その支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次の2つのうち少ない方の額で計算されることになります。・支給開始日の月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
・28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)
なぜ変更されるのか
この計算方法の変更は、傷病手当金の不正受給を防ぐためと言われています。現行制度の場合、休んだ直近の月の標準報酬月額をもとに給付額が計算されますので、その月だけ給与を上げれば、高額の傷病手当金を受け取ることができます。会社と従業員が結託して、直近の月だけ高い給与を支払い、高額な給付を受ける不正が行われていることもあるようです。傷病手当金は、病気やケガで休業せざるを得なくなった人とその家族を支える大切なセーフティーネットです。不正受給で健康保険の財源が圧迫され、支給額が減ってしまうようなことはあってはなりません。
この4月からの計算方法の変更は、直近1年間で給与が大きく変動したといった場合を除いて、ほとんどの方には影響はないでしょう。