皮膚・爪・髪の病気

治りにくい傷・治りやすい傷ってあるの?

転んだ、やけどした、包丁で指を切ってしまった、などさまざまな理由で傷ができます。傷の治療の基本は、清潔な状態を保ち、傷を覆って保護してあげることですが、傷の種類によって治り方や適切な治療が変わってきます。今回は皮膚科に行く前に役に立つTipsを紹介していきます。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

治りにくい傷・治りやすい傷ってあるの?

傷の治りには、主に傷の深さ・範囲・感染の有無が大きく影響します。

■傷の深さ
傷は浅いほど治りやすく、深いほど治るのに時間がかかるのが原則です。浅ければカサブタができてから皮膚が表面に張るまで1週間以内のことも多いですが、深ければ 2週間はかかります。

■傷の範囲
傷の周囲から皮膚が再生していきますので、範囲が広いほど、傷全体を皮膚で覆うのには時間がかかります。

■感染の有無
傷の表面の感染の有無も、傷の治りを大きく左右します。表面がジュクジュクして黄色くなっている場合や、傷の周囲が赤く腫れて痛みがある場合には、感染が起こっているサインです。この場合は細菌を殺すために抗菌薬を使わなければ治りません。私自身、学生の頃に脚に大きな傷を負ったのですが、2週間以上経っても治る気配がないので皮膚科を受診して飲み薬の抗菌薬をもらったところ、すぐに治ったという経験があります。

傷の感染

傷が治らない時は細菌感染が原因のことも。傷がジュクジュクしていたり、周りが腫れていたりする場合には、皮膚科を受診しましょう。


また、上記以外のもうひとつ大事な要素として、傷を負った人が健康かどうかが挙げられます。糖尿病があると血流が悪くなり、傷の治りが著しく阻害されます。糖尿病では脚の感覚が悪くなるため、気づかずに傷を負ってしまい、さらに血流が悪いために傷の治りが悪く、小さい傷でもすぐに拡大します。年単位で治療しても結局治らないという場合もあります。

傷の治りをよくするためにできることは?

どんな傷でも適切な方法で、なるべく早く治してあげることが重要です。傷の治りが遅れるほど、その後の傷痕(瘢痕、はんこんと呼びます)が目立つようになります。傷が浅く、早く治れば少し黒ずみを残す程度で治りますが、傷が深く、治りが遅いと引きつれたような独特の見た目になります。

傷を治す上で大事なのは、傷をしっかり洗うことです。転んだときの擦り傷のように傷が汚い場合には特に意識してください。流水でしっかり流し、石鹸を泡立てて、ガーゼか手で洗ってあげましょう。傷は洗わずにそのままにしておくのがいいと勘違いして、ガーゼで保護するだけにしているケースがありますが、感染してしまい、治りが遅れることで傷痕も目立つようになってしまいます。

実際の診療においても、傷を毎日洗うように指導するだけで治りが早くなることは何度も経験しました。表面を清潔に保ち、かつ表面に付着する皮膚が死んだ組織(壊死組織、えしそしきと呼びます)を取り除いてあげることが傷の治りには非常に重要なのです。

傷の治療方法は?

適切なぬり薬を選択して、ガーゼで保護するのが一番の基本です。この場合、傷は石鹸を泡立てて手かガーゼで軽くこすり、シャワーで毎日流してあげましょう。ぬり薬は、通常は傷の表面を保護し、湿潤な環境を保ってあげるワセリンのような一般的なもので大丈夫です。感染の可能性が高い場合には抗菌薬の入った軟膏を使います。

抗菌薬の飲み薬については、傷が汚くて感染のリスクが高い場合の予防、傷の表面のジュクジュクや周りの腫れがあって感染が明らかな場合には使いますが、すべての傷に使うわけではありません。感染のリスクが疑われる場合や傷の治りが悪い場合には、皮膚科を受診するようにして下さい。

ガーゼと軟膏による従来からの治療に加えて、最近の医療現場では「創傷被覆材(そうしょうひふくざい)」という傷の表面を覆うための専用の治療材が使われています。市販のキズパワーパッドがこれにあたり、こちらは浅いキレイな傷に使うと傷痕がきれいに治ります。

例えば、ヤケドの後の傷で、表面がキレイで浅い場合には向いています。一方、転倒による擦り傷など、傷が汚く感染のリスクがある場合には向いていません。傷を覆って閉じてしまうと、細菌が増えて感染のリスクが上がってしまうからです。この場合には毎日洗浄して軟膏を塗りガーゼを交換する、従来の治療法にしましょう。


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