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不動産売買の「仮契約」と「本契約」

住宅など不動産の売買にあたり、ときどきみられるのが「仮契約」と「本契約」といった勘違いです。いったい何が間違っているのでしょうか。あなたはきちんと理解できていますか?(2017年改訂版、初出:2016年2月)

執筆者:平野 雅之


一般の方からの不動産取引に関するご相談で、ときどき目につくのが「仮契約」あるいは「本契約」という表現です。その場合、たいていは手付金を支払ったときが「仮契約」で、残代金を支払って物件の引き渡しを受けたときが「本契約」として認識されているようですが……。

しかし、一部の例外的なもの(停止条件付き契約など)を除いて、売買契約書に署名押印をしたときに売買契約が成立し、「成立したこと」を前提として手付金が授受されるのであり、特殊な事情がないかぎり(売買において)「仮契約」というものはありません。

あえていうなら、手付金を支払ったときが「本契約」そのものであり、残代金を支払って物件の引き渡しを受ける「決済」は、売主と買主がお互いに「契約を履行する行為」となります。

契約書と印鑑

売買契約書に署名押印をすれば、原則として後戻りはできない

したがって、最初の売買契約締結のときが法律行為として最も大きな分岐点であり、手付金を支払った後は原則として後戻りできないのです。

ところが、たいていは買主の意識が最も高揚しているのがこの売買契約締結の時点でしょう。

一連の段取りのなかでいちばん重要なポイントでありながら、見落としなどによるミスが起きやすい状態のことも少なくありません。

相談事例をみると、「まだ手付金を支払っただけの “仮契約” なのに、契約をやめようとしたら相手が応じてくれない」とか、「契約を断ろうとしたら、手付金を没収すると脅された」のようなケースもあります。売主からみれば「被害妄想」のようにも映るでしょう。

売買契約を解除するときには「手付金を放棄する」などといった契約条項が、必ず記載されているはずなのですが……。

住宅ローン特約など、白紙解除を定めた契約条項が適用される場合を除き、買主が一方的に契約を解除しようとすれば、手付金の放棄や違約金の支払いを求められることは、売買契約書のなかにお互いの「合意事項」として盛り込まれているのです。

また、「仮契約をしましたが、◯◯の問題があります。このまま本契約に進んでもよいのでしょうか」のような質問をいただくこともあります。

「仮契約だからいつでも取り消せる」などと誤った認識のままで、安易に契約を進めることは絶対に避けてください。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年12月公開の「不動産百考 vol.18」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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