住宅にかぎらず、不動産の契約に「契約書」はつきものです。売買であれ賃貸であれ、非常に重要な書類であることに変わりはありません。しかし、売買契約書への押印については、売主は実印を求められるものの、買主は一般的に認印でもよいこととされています。

ところが、この「認印でもよい」ということを誤解して、売買契約書を軽視してしまう買主もいるようです。

何らかの契約トラブルに巻き込まれた人からの相談メールなどを拝見すると、「認印でいいと言われたから “仮契約” だと思った」とか「実印じゃないから拘束力はないはずだ」などと考えている人が少なくありません。

売買契約書のイメージ

契約の効力に印鑑の種類は関係ない

けれども、民法では売主と買主の口頭の合意だけで売買契約は成立するものです。

しかし、それだけではトラブルの多発が避けられないため、高額な取引となりがちな不動産の売買では、契約書を交わした段階で(それと通常は手付金のやり取りをして)契約の成立とみなすことになっているのです。

売買契約書はお互いの合意内容を書面化したものです。実際には、事前に説明がなかったとか、あらかじめ合意していなかったとか、いろいろと問題が生じるケースもありますが、売主と買主が署名押印をした時点からは「お互いに合意したもの」として取り扱われます。

つまり、契約書を交わすことによってお互いの義務や権利、法的な拘束力も生まれるのです。

それは実印と認印のどちらであっても変わりません。日本的な発想では印鑑の種類にこだわることもあるのでしょうが、たとえば外国では印鑑などなくて本人のサインが正式なものとされることを考えれば、「認印だから効力がない」などと思ってはいけないことが分かるでしょう。

認印だからといって、売買契約書や契約行為を軽視してはいけません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2008年3月公開の「不動産百考 vol.21」をもとに再構成したものです)


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